異世界転生公爵令嬢は、オタク知識で世界を救う。

ふわふわ

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急転直下 婚約発表と国内大混乱

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 王宮の謁見室。
 重厚な柱と赤い絨毯に囲まれた空間に、沈痛な空気が漂っていた。

 国王アルフレッド三世は玉座に座り、眉間を深く押さえ、ため息をつく。
 目の前には、呼び出されたばかりの公爵令嬢――いや、今や国の救済者として名を馳せる聖女エリアナの姿がある。

「……エリアナ嬢よ。隣国との緊張が高まっておる。このままでは……戦になるやもしれん」

 その言葉に、重臣たちの間からざわめきが起こる。
 戦――それは王国にとって最も避けるべき選択肢だった。
 ここ数年、医学革命・農業革命・下水道革命と立て続けに成果を挙げたエリアナによって国はようやく病と飢えから解放されつつある。だが戦争が始まれば、すべてが水泡に帰す。

「陛下……なぜ、そんなことに?」
「隣国が領土の境界線を主張しはじめておる。外交の場も硬直し、もはや剣を交えるしか……」

 国王は言葉を濁す。その視線は、どこか助けを求めるようにエリアナを見据えていた。

「そなたの知恵で、何か……新兵器でも戦術でもよい。国を守る手立てを考えてくれぬか」

 エリアナの脳裏には、即座に物騒なイメージが走った。
 ――火薬兵器。大砲。飛行船による爆撃。挙げ句の果てには細菌兵器。
 現代知識の断片が次々と浮かび、背筋に冷たい汗が流れる。

「だめ……そんなもの……考えられなくはないですが……考えちゃいけません!」

 彼女は思わず叫んだ。重臣たちが目を丸くする。

「な、なんと?」
「戦争のためのものなど、作りたくありません。……考えてしまいましたけど!」

 国王はますます困惑した顔でエリアナを見つめる。

「では……どうするのだ」

 沈黙。
 エリアナは両の手をぎゅっと握りしめ、そして意を決したように告げた。

「……私が、隣国の王子と婚約します」

「ほ? ……???」

 謁見室の空気が凍りついた。

「政略結婚は、こんな時のためにあるのでは?」
「ま、待て! そなたのような人材を失うわけには……」
「だからこそです!」

 エリアナはきっぱりと言い切る。

「私は隣国にとっても利用価値のある人材でしょう。ならば、講和の道具として――平和を保つための人質として役立ちます」

「は、はぁ……?」

 国王の表情は完全に追いついていなかった。
 そこへ追い打ちをかけるように、彼女はさらに告げる。

「隣国の王子は確か……五歳でしたね」
「う、うむ。まだ幼子のはずだが……」
「はい。しょたは萌えです。ばっちこいです」

「…………は?」

 国王は口をぱくぱくとさせ、玉座からずり落ちそうになった。
 重臣たちがどよめき、侍従がうっかり咳をして笑いをこらえる。

 ――こうして、エリアナの突拍子もない宣言は瞬く間に国内に広まった。



「エリアナ様が……五歳と婚約!?」
 王都の街角は大騒ぎだった。

 貴族たちは眉をひそめ、庶民は目を丸くし、街の酒場では冗談とも真実ともつかぬ噂が飛び交う。

「いやいや、いくらなんでも……」
「でも、聖女様のことだから何か考えがあるのだろう」
「ショタコンだと? いやまさか……」

 揶揄と困惑が渦巻く一方、エリアナを信じる声も少なくなかった。



 その頃、王太子フィリップは宮殿の自室で机を叩きつけていた。

「くそっ……! 僕はエリアナを手放して……そして彼女は、五歳の子供と婚約だと!? 僕は……五歳にも負けたのか……!」

 侍従は慌てて距離をとる。

 さらに追い討ちをかけるように、扉の隙間から顔を出したセレスティアが冷笑を浮かべた。

「まあ、フィリップ様。あの女、ついにロリコンからショタコンに路線変更ですの? お笑い草ですわ」

 フィリップはぎり、と歯を食いしばる。
 その言葉が慰めにはならないことを、セレスティアだけが分かっていなかった。



 一方、エリアナの研究室。
 机いっぱいに積まれた書物と設計図の山を前に、エリアナは決意を新たにしていた。

「……隣国での活動計画も立てなきゃ。医学書、農学書、工学書……全部必要ね」
 ノートにびっしりと書き込みながら、彼女はふと思い出す。

「そういえば……昔やった『ショタ育成シミュレーションゲーム』。あれが役立つかもしれない……」

 自分の口から出た言葉に、思わず赤面した。

「な、何を言ってるのよ私! でも……王子様を立派に育てる使命感。そう、それだけは確かにある!」



 その頃、彼女を想う三人の男性――アレクサンダー、ルカス、ディミトリは、それぞれ複雑な心境にあった。

「五歳の王子……か。まあ、さすがに僕の敵ではないだろうな」(アレクサンダー)
「でも、将来的には……いつか立派に成長して、エリアナを……」(ルカス)
「ふむ。結局、エリアナの幸せが最優先だが……これは実に厄介な事態だ」(ディミトリ)

 三人は揃ってため息をつき、だがそれでも彼女を支える決意だけは変わらなかった。



 こうして――。
 エリアナの突飛な「ショタ婚約」宣言は、国を揺るがす波乱の幕開けとなったのだった。


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