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第39話 世界が、手を放した日
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第39話 世界が、手を放した日
その年の終わり、各国の年次会合は、驚くほど短時間で終わった。
議題は少ない。
決断も少ない。
修正も、ほとんどない。
「……特に、緊急案件はありません」 「例年なら、三倍はあったはずだが」 「今年は、ありませんでした」
会議室に、戸惑いと安堵が同時に広がる。
問題が解決されたわけではない。
争いの芽が消えたわけでもない。
ただ――
無理に掴もうとする手が、減った。
それだけだ。
一方、温泉郷。
「……今年も、終わりですね」
リヴォルタ・レーレは、年越しの準備が始まった町を眺めていた。
飾りは控えめ。
行事も簡素。
騒がしくしない。
期待を膨らませない。
それが、この町の流儀になっていた。
昼、境界の外から一通の報告が届く。
「各国、
“彼女に関する対策班”を正式に解散したそうです」 「……対策、ですか」 「ええ。
何もしない、という方針が、
もはや対策ですらなくなった、と」
トレイル・ブレイザーは、静かに頷いた。
「ようやくだな」 「彼女を“管理対象”として見る必要が、なくなった」 「人として、ただ存在するものになった」
それは、
最も穏やかな勝利だった。
夕方。
リヴォルタは、川沿いを歩いていた。
「……今年は、よく温泉に入りました」
自分に向けた、どうでもいい感想。
来年も、たぶん同じだろう。
それで、十分だ。
夜。
露天風呂。
湯気の向こうに、冬の星が瞬く。
「……今年、何かしましたっけ」
少し考えて、首を振る。
「……してませんね」
満足そうな声。
その瞬間、
本国では、
“聖女制度の完全終了”が、
正式に記録された。
代替案も、後継もない。
必要なくなったからだ。
世界は、ついに手を放した。
誰かに背負わせることを。
誰かに期待することを。
誰かを中心に据えることを。
そして、その中心にいた彼女は、
最後まで何も知らない。
だが、それでいい。
なぜなら――
世界が、彼女を手放したからこそ、
彼女もまた、世界から自由になれたのだから。
年の終わり。
鐘が鳴る。
派手ではない。
だが、穏やかだ。
明日も、
変わらない日常が続く。
それが、
世界が選んだ、
最終形だった。
その年の終わり、各国の年次会合は、驚くほど短時間で終わった。
議題は少ない。
決断も少ない。
修正も、ほとんどない。
「……特に、緊急案件はありません」 「例年なら、三倍はあったはずだが」 「今年は、ありませんでした」
会議室に、戸惑いと安堵が同時に広がる。
問題が解決されたわけではない。
争いの芽が消えたわけでもない。
ただ――
無理に掴もうとする手が、減った。
それだけだ。
一方、温泉郷。
「……今年も、終わりですね」
リヴォルタ・レーレは、年越しの準備が始まった町を眺めていた。
飾りは控えめ。
行事も簡素。
騒がしくしない。
期待を膨らませない。
それが、この町の流儀になっていた。
昼、境界の外から一通の報告が届く。
「各国、
“彼女に関する対策班”を正式に解散したそうです」 「……対策、ですか」 「ええ。
何もしない、という方針が、
もはや対策ですらなくなった、と」
トレイル・ブレイザーは、静かに頷いた。
「ようやくだな」 「彼女を“管理対象”として見る必要が、なくなった」 「人として、ただ存在するものになった」
それは、
最も穏やかな勝利だった。
夕方。
リヴォルタは、川沿いを歩いていた。
「……今年は、よく温泉に入りました」
自分に向けた、どうでもいい感想。
来年も、たぶん同じだろう。
それで、十分だ。
夜。
露天風呂。
湯気の向こうに、冬の星が瞬く。
「……今年、何かしましたっけ」
少し考えて、首を振る。
「……してませんね」
満足そうな声。
その瞬間、
本国では、
“聖女制度の完全終了”が、
正式に記録された。
代替案も、後継もない。
必要なくなったからだ。
世界は、ついに手を放した。
誰かに背負わせることを。
誰かに期待することを。
誰かを中心に据えることを。
そして、その中心にいた彼女は、
最後まで何も知らない。
だが、それでいい。
なぜなら――
世界が、彼女を手放したからこそ、
彼女もまた、世界から自由になれたのだから。
年の終わり。
鐘が鳴る。
派手ではない。
だが、穏やかだ。
明日も、
変わらない日常が続く。
それが、
世界が選んだ、
最終形だった。
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