スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~

空松蓮司

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第51話 ラッキーガール

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 令和くの一を殲滅した後、僕はまずレーダーに映るそれぞれのチームに狙撃を仕掛けた。
 狙撃は防がれる。構わない。目的は撃破ではなく誘導。これで、3チームは僕を見逃すことはできない。精密射撃のできる狙撃手を捨て置いてはいられない。

 彼女たちもわかっているはずだ……神灰ツバサという天才が残っていることを。
 彼女との戦いの前に余計な存在はできる限り今の内に削りたいはずだ。無論、それは僕も同じ。ツバサさんとやり合う前に邪魔は全て排除しておきたい。

(僕という餌に、獣達は寄ってくる)

 3チームが集う前に、僕は回収していたスモークグレネードをばら撒き、工場内を白煙で満たし始めた。
 それぞれのチームが僕を囲い、白煙が工場内に満ちた頃、レーダー撃ちでまた3チームを刺激する。すると、3チームは中に突入もしくは中を伺う。

「な、なんなのですか! これは!?」

 僕の狙いは乱戦。
 
(狙いは僕とは言え、この終盤で他チームを無視することはできない。自然と他チームへの動向に意識は割かれ、単独の僕への注意は散漫になる。さらにこの白煙で敵の処理能力に負担を掛ける)

 ついでに煙で僕への視線を切り、僕の緊張を0にする。

 この状況を前に、彼女たちが取れる選択肢は大きく2つ。『逃走』か『突撃』だ。

(乱戦を避けようとして逃げるなら背中を撃つだけ。突っ込んでくるのなら食わせ合いつつ1人1人刈り取るだけだ。ま、狙撃手の僕から距離を取るような真似、普通ならしないと思うけど)

 窓を割って突入してきたチームは乱戦を避けるために外に出た。一方で東西それぞれの出入り口から入ってきた2チームは白煙に構わず、中央の僕に向かって火力を集中させる。レーダー撃ちだ。

 だが、中央の僕を狙えば必然と逆側の出入り口に弾丸は伸びていく。通常レーダーでは体勢までは読めないから、うつ伏せになればまず弾は当たらない。向かってくる僅かな弾は残り数枚のシールドピースで対応できる。ほとんどの弾は空振りし、それぞれの出入り口にいるチームに伸びていく。

(流れ弾が対角線の敵チームに当たったら儲けもの。そんな感じの弾道だね。どっちも)

 アイコンがそれぞれ1つずつ、出入り口にいたチームから消えた。僕は崩れた両チームにそれぞれ3発ずつG-AGEを発砲。東側の1チームはそれで全滅、西側の1チームは1人撃破。残った1人はアサルトライフルとバレットピースの一斉射撃で削り切る。

(ごちゃついた戦場でG-AGEに対応するのは難しいよね)

 6人撃破。残り3。

「……逃がしはしない」

 窓から逃げたチームは工場から離れていく。
 時同じくして、7回目のエリア縮小範囲が表示される。

「とことん運のない……」

 最後のセーフティエリアとして指定されたのは――樹海。逃げたチームはそのまま樹海に向かう動きだ。
 僕はスラスターで加速し、手早く外に出て、またスラスターで飛んで工場の屋根の上に行き、スナイパーライフルのスコープで先ほどのチームのアイコンを追う。

 そのチームは恐らくここへ来るまでに乗ってきたであろうジープを使って移動を始めた。僕は車体側面のガソリンタンクに狙いを澄ませる。

「夏だしね。花火を見たいな……!」

――発砲。

 ガソリンタンクにレーザー弾が突き刺さり、起爆。3人の内2人はその爆発で散り、残った1人は下半身を失った状態でもがく。
 僕は最後の1人の後頭部をライフルで撃ち抜く。


「寸分狂いなし」

 12人全員撃破――
 造船所は完全にクリアした。

 このランクマッチ、残ったスペースガールは2人。
 間違いなく、僕とツバサさんだ。

 最終決戦地は樹海。そこで、1対1で、決着はつく。

 僕はバイクを拾い、樹海へ向かう。
 舗装された道から草原へ、草原から樹海周辺の丘に行く。スラスターを使って丘を登り、大岩に身を隠す。

(なんて大胆な人だ……)

 ツバサさんは浅瀬の湖の中心に仁王立ちし、僕の方を向いていた。造船所から来た場合、まずここへ来るのは必然。だからこっちに注目しているんだと思う。さすがにレーダーには触れてないはずだ。

 ツバサさんの背面側まで回ることもできるが、時間がない。ここから狙撃しよう。

(どうせ僕の位置がわかったところで、ツバサさんに遠距離は無いから……)

 僕は堂々と丘の上に立ち、狙撃を始める。
 正面からの狙撃。当然のようにツバサさんは反応し、大盾アイギスでガードする。
 2発目からは避け始めた。無駄に盾の耐久値を減らす真似はしないか。

(距離約1200m。アサルトライフルの射程外……それなら)

 僕は狙撃を続ける。撃ってすぐにまた撃つを繰り返す。
 狙いはツバサさんではない、アイギスだ。ツバサさんのアイギスは弾を避けきれず、被弾する。

(脳波武装は死角にあるものほど、自身から遠いものほどコントロールが重くなる。ツバサさんから見えづらく、遠い盾を狙えば当たる。しかし死角とはいえ、背後のアイギスはダメだ。ツバサさんは背面への警戒が強く、真後ろのアイギスにはかなり気を張っている。狙うのは斜め後ろのアイギス――)

 さらに狙撃がアイギスに命中する。
 対策は簡単だ。すぐにツバサさんは僕の攻撃に対応するだろう。

「うん。そうするよね」

 ツバサさんは盾を自身の視野の範囲、正面に集め、さらにギリギリまで自分に近づける。

(盾をデータ化させないのはENの節約をするためかな)

 武装は出し入れするだけでENを消費するからね。

(アイギスは脳波武装の中でもかなり重いタイプのはず。5枚全てに自身と同じだけの反射神経を持たせるのは不可能だ。最高精度で操れるのは精々3枚が限界。残りの神経の薄い2枚を狙えばいい。薄い2枚は観察すればわかる。重いモノを持ってプルプル震える腕のように、僅かに振動している盾――)

 僕は僅か、ほんの僅かの揺らぎを見せた盾を狙い、狙撃を繰り返す。狙撃は盾に連続で命中する。

「崩れろ」

 アイギスの1枚を狙撃で破壊することに成功。残り4枚。

「それにしても……」

 今更だけど、なんであんな目立つところにいるのだろうか。この展開を黙って続けることも不可解だ。

(なにか、嫌な予感が……)

 そこで僕は気づく、森から火が上がっていることに。

「しまった……!」

 湖を囲っている木々が次々と燃え盛る。

(火炎瓶、もしくは盾のレーザー弾で森を燃やしたんだ! 火炎の壁を作るために……!!)

 これまで僕の狙撃を黙って受けていたのは火炎が広がるまでの時間稼ぎ。盾を消さなかったのは僕を狙撃に集中させるためか!

(だけどまだ、エリア縮小でこの僕がいる丘が選ばれる可能性だってある)

 僕のいる丘、ツバサさんのいる湖、あるいは森。どこが最終エリアに選ばれてもおかしくない。丘や森が選ばれればこの火炎の壁は逆にツバサさんを苦しめる結果になる。

(自分自身が炎の檻に囚われる可能性がある……なのに)

 それなのに、ツバサさんは口元を笑わせている。

「……自分が神に選ばれないはずがないと、そう確信している顔ですね……」

 7回目のエリア縮小が終わり、次のエリア縮小範囲が表示される。
 僕の丘はセーフティエリアから外れ、湖と、それを囲う燃え盛る森林がセーフティエリアに選ばれた。

 自身の幸運を勘定に入れた策、とても真似はできないな。

「いいね。熱くなってきた……!」

 この祭りのトリに相応しい獲物だ。
 前言撤回。フィナーレをあなたのような強者と踊れる今日の僕は、幸運ラッキーだ。
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