『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA

文字の大きさ
5 / 257

第五話 ホテルよりネカフェの方が安い

しおりを挟む
「スライム倒してきた」

 合計107個、小指の爪程しかない大きさのスライムの魔石を袋に詰め、カウンターに乗せる。
 スライムのは濁った灰色だが、より強い敵に成程鮮やかに、各属性の色を宿す様になり高価だ。
 とはいえスライムの魔石も沢山拾えて使えば消滅する電池みたいな扱いで、一個20円で買い取ってもらえる。

 ダンジョンが生まれて三十年ほど、魔導力学の発展は目覚ましいもので、既に電力であった半分は魔力で補われていた。

「あら……一人で頑張ったの?」
「頑張った」

 最初に小学生扱いしてきた女、園崎さんが目を丸くする。
 昨日までは何度もスライムをカリバーでしばいて漸く討伐、一時間で数匹狩れればいい程度だった。
 当然カウンターの彼女もそれを知っていて、私の成長速度に驚いているようだ。

 ふふん、まあ余裕だったね。
 2140円、今までのなかでもぶっちぎりの稼ぎだ、これなら今日もネットカフェに泊まることが出来る。
 この前筋肉に貰ったお金と、自分で稼いだお金でなんとかネットカフェに泊まっていたが、すっからかんだったので助かった。

 レベルが上がるほどスライムを倒す速度も、散策する速度も上がっているので、明日はもっと稼げるだろう。
 だが今日はここで直行するわけではなく、やらなくてはいけない調べ物があった。



「うー……!」

 勉強は苦手だ。

 文字を読み進めるたびガンガンと痛む眉間を抑え、しかめっ面でページを捲る。
 読んでいるのはここら一帯に存在するダンジョン、そのボスや適正ランクについてだ。
 協会には探索者を支援するため図書室があり、こういった本が充実してその上無料で読むことが出来る。

 ダンジョンは大まかにGからAまでランクが割り振られているが、その実同ランク内でも適正レベルは上下、Aの上位となればレベル50万超えの探索者でも歯が立たない。
 まあ私がいる花咲ダンジョンは雑魚オブ雑魚なので、適正ランクは1から10らしいが。
 そう、10が適正ランクの上限……つまり今の私と同じだ。

 でもこれ、多分パーティ組んだ時の話だよね……?

 ボスの部屋に入ると、なんと閉じ込められて倒すか死ぬまで扉が開かないらしい。
 俊敏と耐久が高い代わり攻撃力が低く、攻撃スキルもない私。もし攻撃がまともに通らなければ、体力が尽きて死ぬまで全力のシャトルランをする羽目になる。

「どうした、本なんて抱えて唸って」
「あ、筋肉。花咲のボス、入っても大丈夫なのかって」

 突然筋肉が現れ、私の手元を覗いてきた。
 筋肉はここのトップだと聞いたが、もしかしたら暇なのかもしれない。
 
 レベル10になったのでボスに挑戦するか迷っている、素直にそう伝えると彼は肩の筋肉をぴくぴくとさせ、『鑑定』していいかと尋ねてきた。
 『鑑定』はスキルや称号以外のステータスを無許可で見ることが出来る、無言で他人を鑑定するのはマナー違反だ。
 きっと私の話が本当か疑っているのだろう、勿論ここはおっけー、彼は頷き『鑑定』を行い、私の話が本当だったと驚き喜んだ。

「凄いじゃないか! たった一日でここまで上げるなんて、滅多に出来る努力じゃないぞ」
「ねえ筋肉」
「ん?」

 筋肉は良い奴だ、もし筋肉に『スキル累乗』や『経験値上昇』の話をしたら、色んな相談に乗ってくれるだろうか。
 私は頭も悪いし、一人だといつか致命的な失敗をしてしまうかもしれない。
 ふと、弱気な自分が覗いてしまって、慌ててそれを掻き消す。

 他人は信じないって決めた。
 筋肉は良い奴かもしれないけど、良い奴が約束を守ってくれるとは限らない。
 それに筋肉は協会の人間で、たった一人の、しかも孤独で住所不定な人間の平穏なんかより、組織全体の利益を求めるのは当然の事。
 二つのスキルは私がもっと強く、誰かに何かされても跳ね除けられるくらい強くなってから、その時に相談しよう。

 誤魔化す様に口角を引っ張り上げ笑う。

「ボス、倒せるかな」
「おぉう……無理やり作った笑顔がなかなか下手くそだな。っと、ちょっとその本貸してみろ」

 私の笑顔に引きつつ手を伸ばす筋肉。
 本をペラペラと捲り何度か頷くと

「まあ、行けるだろう。鈍器スキルは持ってるのか?」
「持ってない、でもSPは10ある」
「そうか、今後も打撃武器を使うなら取っておけ。ここのボスはスウォーム・ウォールだからな」

 その太い指が差す写真は、いくつものスライムが重なって茶色くなっている壁。
 表面は硬く、中はスライムが詰まっているらしい。
 刃物だとうまくダメージを与えられないが、打撃などで壁を壊し、中身を引きずり出せば後は普通のスライムと変わらない。

 本にはここまで詳しい戦い方が載っておらず、特徴だけ軽く羅列されているだけだった。
 筋肉は筋トレではなく、モンスターにも造詣が深いようだ。
 すごい。

「筋肉ありがとう!」
「気にすんな、お前は放っておくと直ぐに死にそうだからな」

 直ぐに死にそうというか、もう一回死んでいる。
 すくっと立ち上がり、彼は仕事があるからもう行くと告げ、背中を向けた。

 が、扉の前でくるりとこちらを向き

「無理に笑顔作るより、最後の方が似合ってたぞ」

 ハゲ頭を光らせて、立ち去ってしまった。
 笑顔……?

 良く分からない、筋肉は時々頭がおかしくなる。
 ぐにーっと両頬を人差し指で押し、彼が最後に言った言葉の意味を暫く考える羽目になった。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

処理中です...