『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA

文字の大きさ
206 / 257

第二百六話

しおりを挟む
 恐ろしい勢いで吹き飛び、力なく地面に倒れ伏す金髪の少女。

 気道ごと押さえつけられていた琉希。
 新鮮な空気を求め喘ぎ、焦点の合わない視界で叫び、必死に手を伸ばす。

「けほ……フォリ……ちゃ……!」
「言っただろう、殺しはせんと。生きてるよ」

 琉希の振るった腕から連続して光が飛び出し、地に伏せピクリともしないフォリアの身体へ溶け込んでいく。
 回復魔法が拡散せず彼女の身体に取り込まれていくあたり、敵の言葉を信じるのもしゃくではあるが、どうやら確かにフォリアは生きていることは間違いがなかった。

 己にも魔法を投げ、震える膝へ無理やり力を籠め、目の前に立つ少女の皮を被った怪物へ意味もない戦闘態勢を示す琉希。

「貴女の目的は何ですか!」
「またそれか、二度同じ問答を繰り返す趣味はない。それより他人に質問をするなら、ちょっとくらいはこちらの質問に答えたらどうなんだ? ん? 貴様らの技術と乖離したその魔力、どうやって手に入れた?」
「……魔力とは、一体何のことを指しているかにもよりますね」

 先ほどから気になっていたが、目の前に立つ彼女は殺意がない。
 それは絶対的な力の差からいつでも捻り潰すことが出来るという余裕の表れか、それとも別の目的があるのか。
 それは先ほど吹き飛ばされた彼女からしても把握できることだ。

 支援に特化している琉希には岩などを操る物理攻撃しか持ちえず、それが通用しない相手には元よりフォリアが居なければ勝ち目などない。
 今琉希に出来ることは、出来るだけ情報を引き出すことのみ。

「勘が悪いのか? それとも分かっていてすっとぼけているのか? レベルだよレベル、貴様らのレベルは私の創り上げた・・・・・・・システムから反している」
「それですよ! さっきから! その口調、まるで貴女の言い振りは……」

 その先を口にするのは躊躇われた。

 そんな言葉、今どき小学生だって口にしない。
 続く言葉は恐ろしく幼稚であり壮大、それを躊躇いなく口にするような人間は間違いなく奇人変人の烙 印を押されるだろう。
 あり得ない。

 深い嘆息が森に響く。

「……まあいいか、これくらいなら。そうだ、貴様の考えている通り……」

 しかし琉希の予想は裏切られる。

「ダンジョンシステムの基礎・・は私が構築した。いわば生みの親、創造主というわけだな」

 これが事実なのだと、彼女はとんでもない虚言を、さも当然というかのように眉一つ動かさず言い切ってのけた。


「そ、そんな大法螺……騙されません……」


「貴様を騙して私に何か利点でもあるのか? 聞かれたから教えてやったのに、どうしてそう素直に人の言葉を受け取らないのか、私には理解に苦しむね」

 ぺちぺちとフォリアから奪い取ったカリバーを手で弄び、不思議そうに首を捻る少女。


「そんなことはどうでもいい。それより貴様らの力についてだよ」
「――っ!?」

 瞬間、確かに距離を取っていたはずの距離がゼロにまで縮まる。

 フォリアほどしかない身長、琉希を仰ぎ見る様な体勢、端正な顔立ちはともすれば可愛らしいと顔がほころぶものだろう。
 しかしこの鼻と鼻が触れ合うような近さで、琉希は恐怖以外に覚えるものはなかった。

 一体何が彼女の気を引いたのかは分からない。
 しかしこの知的欲求に突き動かされたであろう怪物を、酷く刺激してしまった自分の何かを強く呪った。

「確かめさせてもらうぞ、身体の隅々までな」

 金を纏った少女の瞳が見開かれる。

 抵抗は出来なかった。
 いや、暴れようと手足を動かそうとするも、手足の先に発生した魔法陣からまるで見えない糸でも飛び出しているかのような抵抗があり、激しく暴れる度に酷い虚脱感に襲われてしまう。

 腕や足などの衣類を剥かれ、小さな手で確かめる様に触られる。
 なぞり、握り、時には爪先で引っかかれた。生殺与奪の一切を赤の他人に委ね、なすがままにされることの恐怖は一言では表すことが出来ない。

 まだ目的すら果たしていないというのに。

「――っ!」

 最後、コートの上から滲む血に意識が向いた少女。
 人差し指で軽くなぞり、それがまだ乾ききっておらず、今しがた流れたばかりであることに気付いた彼女は、軽く鼻を鳴らしてボタンを外していった。

「やはり……」

 ポツリと漏れる言葉。

 そして胸の谷間に輝く、黒い結晶・・へ軽く爪を立てると、同時に伝わってきた鋭い痛みで顔を歪める琉希の顔をじっと眺め、予想通りの物があったとばかりに頷いた。

 サイズは丁度親指の爪ほどだろうか。
 突けば痛みが身体に伝わり、性質からしても一見大きな瘡蓋に見える奇妙な塊。
 事実、琉希とフォリアはそれら・・・を、よく分からないがただの瘡蓋として扱っていた。

「まだ魔力の蓄積が浅い、出来たのはごく最近だな」
「な、にを……はなして……くだ……」
「まあ知らんだろうな。私はそもそも、これが出ないように創ったのだから」

 質問とその返答は全て少女の中で完結していた。
 琉希の疑問は彼女にとってわざわざ答える価値のない物であり、一切の説明もないまま事だけが進んでいく。

「だが貴様は幸運だ、発症・・する前に私と出会えたのだからな。五体投地してその僥倖を噛み締めていいぞ」

 そして琉希の胸元へ手を当てたまま少女は、尊大な笑みを浮かべ無数の魔法陣を展開した。

 輝きに飲み込まれる二人。
 琉希の呻き、叫び、苦痛に喘ぐ声が木々の間へ響き渡った。
.
.
.


 強烈な煌きが収まった後、少女の手には黒々とした魔石・・が一つ握られ、琉希の身体は地面へゆっくりと崩れ落ちた。

 なにもかもが抜き取られた脱力感。
 激痛と何が起こっているのかすら理解できない絶望に精神は酷く摩耗し、焦点の合わない視界が目の前に立つ少女の裸足だけを映している。
 絶叫に焼け付いた喉はもはやまともに声を上げることすら難しい。ただ、掠れた虫の息だけがむなしく零れるだけであった。

「終わったぞ」

 しかしその苦痛を味合わせた少女は顔色一つ変えずに宙を浮かび、手元でいつの間にか握っていた魔石を弄び、なにかぶつぶつと独り言を呟くのみ。
 しかし観察でも終わったのか、それをワンピースのポケットへ仕舞い込むと、おもむろに周囲を見回しては一点へ視線を定めた。

「次はあっちだな」

 その先に居たのはフォリア。
 傷が多少はふさがったのだろう、しかし痛みから素早い行動も出来ず、ゆっくりと立ち上がる為に震える彼女。

「――っ、いかせ……な……っ、『覇天……!?」

 沸き上がる激情。
 せめて逃げる一瞬だけでも稼ごうと、不透明な思考の中使い慣れた物を投げようと腕を振るう琉希。

 だが、地に崩れ落ちた彼女が背後の虚空から取り出した巨岩は、まるで支えることが出来なかったかのように一直線に落ち、使用者であるはずな彼女の両足を叩き潰した。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

処理中です...