『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA

文字の大きさ
216 / 257

第二百十六話

しおりを挟む
「それ……の、何が問題なんですか……」

 どもりながらどうにか聞き返す琉希。

 はっきり言ってしまえば、彼女には思い当たる節があった。
 というよりは魔力を一気に吸い上げる方法など、フォリアのユニークスキル以外には有り得ないだろう。

 だがカナリアにそれを話していいものなのか。

 彼女の言葉に嘘はないかもしれないが、恣意的に様々な情報を隠していることも真実だ。
 現にフォリアの治療法について矛盾を突き話さなければ、彼女は『治療できない』の一点張りで話を切っていただろう。
 もしかしたらそれは単純に、治療できないと言い切ってしまうことで下手に希望を持たせず、仕方ないことなのだと琉希に諦めさせようという、彼女なりの下手くそな心遣いだったのかもしれない。

 思い悩む琉希へ苛立ったのか、机をバシバシ叩きながらカナリアが吠える。

「問題も問題、大問題だろ! 私はダンジョンシステムをそんな風につくった覚えはない! あんな動きありえんぞ!」
「貴女が創ったのは基礎の基礎。残りは進化に任せていたのなら、貴女が理解しえない挙動を起こす可能性も大いにあるはずでは?」
「ダンジョンシステムの根本にある概念は魔蝕の予防だ! こんな魔力が大量に流入するような構造、たとえ途中で出来たとしても見逃すわけないだろ!」
「う……で、でも」

 食い下がる琉希の前へ掌を突き出し、疑惑を抱いたカナリアの瞳が細くなった。

「なんか貴様怪しいな……何か知ってるだろ?」

 鋭い。
 他人の感情の機微は興味を持たず全く理解しないくせに、こういった自分の気を引く挙動には恐ろしく鋭い。

 しばし口を噤んでいた琉希であったが、カナリアは相も変わらず偉そうに椅子へふんぞり返ると、左の人差し指で机を叩きながら琉希を脅した。

「黙っててもいいがあの子を救いたいなら大人しく言うんだな」
「なっ……」
「貴様の言う治療法は発症者の魔力を上回らなければ出来ん、無理やり引っ張り出すのだから当然だ。数百倍にまで跳ね上がったあの子の魔力量は、既に全快時の私を圧倒的に上回っている。無理なものは無理だ」

 

「私の手で治療することは不可能だ、他の方法を探すしかない。それには多方面から考える必要があるし、少しでも気になることは知っておきたいのだ」

 葛藤はあった。

 フォリアのユニークスキルは強大なものだ、悪用しようと思えばいくらでも思い浮かぶほどに。
 それ故彼女にはなるべく誰にも話さないように、と言い含め、現状でも恐らく数人しか彼女の力について知らない。

 その約束を、言い含めた自分自身が破らなくてはいけないのか。
 しかも顔の知れた友人などではない、出会って数時間しか経っていない、このエルフっぽいナニカに。

 酷く悩ましい問題ではあったが、それ以上に現状は重いもので、琉希には結局話す以外に道がないというのも理解は出来ていた。

.
.
.


「ユニークスキル、か」
「……はい。すごい力だって思ってたんですけど、こんな副作用があるなんて思っていなくて。あの……ユニークスキルも貴女の創り出したダンジョンシステムなら、どうしてこんな力が……?」

 先ほどから彼女は未知であるということを主張していた。
 だがユニークスキルはユニークスキルで、やはりダンジョンシステムに関連するもののはず。

 これまで快調に説明していた、ダンジョンの製作者を名乗る彼女が、さっぱり理解していないというのも奇妙な話だ。

「ああ、それは私の作ったものでもない……というか誰かが関与して出来たものではないからな」

 その答えは単純であり、しかし同時に複雑な事情でもあった。

「魔力には様々な性質がある。全てを語るには時間が足りんが、記憶の蓄積も所詮はそのうちの一つに過ぎない。その中には一つ、人の体内で様々な波形を取るということだ」
「波形、ですか……?」
「うむ。魔法とはエネルギーを様々な形へ変化させた結果であるが、それ以外にも直接体内から放出したり、素の形で発現させる方法も存在するのだ。その場合波形の影響をもろに受ける、つまり他の誰とも異なるオンリーワンの魔法が発動する。発動と言っても体質として現れたり、様々な形がある点は一般魔法、つまりスキルとも大して変わらんがな」

 発動の過程は兎も角として、要するに『ユニークスキル』の名の通り、人それぞれに宿る固有の魔法というわけだ。 

「なるほど、それがユニークスキルなんですね」
「ああ、本来の名は固有魔法と言う。とは言え訓練なしだからな、本来ならもっと自由に扱えるものだが、基本的には暴走などの可能性も考慮し動作などをかなり制限している。詳しいことは調べなければ分からぬが、その特徴を聞く限りあの子は魔力との親和性や、それに付随する体内での操作能力が異常なほどに長けているようだな」

 そして降りる沈黙。

 彼女の思考を邪魔せぬよう琉希も黙りこくっていたが、ゆっくりとカナリアが顔を上げたことに気付くと、祈るような目線を彼女へ向けた。

「しかしふむ……あんな言い様で聞いて悪いが、あまり役に立ちそうにないぞ」

 しかし帰ってきた言葉は無慈悲。
 その知識をもってしても思いつかないという、残酷な台詞であった。

「そうですか……助ける手段が一つもないなんて……っ!」

 ――あたしのせいだ。
 あたしがあの時、無理やり母親に会いに行こうなんて誘ったから……無理にレベル上げなんてしなければ発症しなかったのに……っ!

 自分へ怒ればいいのか、現状を悲しめばいいのか。
 琉希は感情のまま顔を覆い拳を固く握りしめると、ぶち、ぶちと指に絡まった前髪が千切れる音にすら気付かなかった。

 やはり無理にでも彼女を置いていけば良かったのだ。
 そうすればこんな事にはならなかったはずなのに……!

「ん……そうだな」

 しかし自分が零した言葉に身動ぎし、目線をスッと逸らしたのを琉希は視界の端で捕らえていた。

「……何か隠してますねっ!?」
「し、しらん! 知らんったら知らん! ぜんぜん知らん! 超知らん!」

 必死に否定をしているものの、その目はあちこちへ泳ぎ、演技と言うにはもはやわざとらしさすら感じてしまうほど。
 もしかしてわざとやってるのか? 本当は話したくて仕方ないのか?

 やはりこのエルフ、まだ話していないことがあった。

 しかし知らぬ存ぜぬの一点張り。
 再び椅子から立ち上がり、彼女の元へ歩み寄る琉希に震えながらも、今回ばかりは決して話そうとしなかった。

「たっ、頼む、これだけは使えんのだ! お前があの子を救いたいのは分かる、私もいくらでも手伝おう! だがこれだけは駄目なのだっ!」
「……分かりました。そう涙目にならないでくださいよ、そこまで言う人から無理に聞き出したり、取り上げたりはしません」

 結局目の端に涙を浮かべ、絶対に無理だと言われてしまえば琉希に出来ることはなかった。

 それが何なのかは分からないが、無理やり奪うことも出来るのだろう。
 しかし彼女の叡智は捨てがたいものであり、今下手に遺恨を生み出すくらいなら、協力して新たな道を捜索したほうが良い。
 フォリア自身そんな方法で助けられても、心優しい彼女なら喜ばないだろう。

「ほ、本当か!? 殴って奪ったりしないか!?」
「しませんよ! 私を一体なんだと思ってるんですか!」
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

処理中です...