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ふぅー、ドキドキする。トシくんの友達ってどんな人だろう。同じ大学だって言ってたな。
いつものファミレスじゃなくておしゃれなカフェで待ち合わせだ。挙動不審にならないようにメニューを手に取って眺めた。
「由紀!」
「真紘。」
真紘が手を振ってこっちに歩いてきた。その後ろにトシくんと背の高い男の人がいるのが見えた。
僕の隣に由紀が座った。前の席にその人とトシくんが座った。
そっと前に座った男の人を見た。僕をじっと見ている。
「あっ!この間の‥‥。」
あの人だ。お見合いの人。名前は、えっと‥‥。
「知り合い?」
真紘が驚いて僕を見る。トシくんもその男の人もびっくりしている。
「俺のこと知ってるの?おかしいな、こんな可愛いオメガ、一目見たら忘れるはずないのに。」
可愛いオメガって。ウソだろ。
「あ、あの二週間前のお見合いで。」
「え?あのお見合いの子?嘘!」
すごく驚いている。あのお見合いは薬が抜ける前だったからだ。
「いえ、本当です。」
「ごめん。えっと名前は?何だっけ?ごめん。」
「僕も憶えてないので謝らないで下さい。」
「え?あ、そっか。」
目の前の男の人は酷く残念そうに肩を落とした。
「とりあえず自己紹介しようか。」
トシくんが間に入ってくれた。
彼は高岡祐一さんT大学の三年生だ。あとはプロフィールに書いたあった通りでお父さんは大きな会社を経営している。卒業したらその会社に就職するらしい。
僕も一通り自己紹介をした。祐一さんはにこにこしながら聞いている。
「由紀、あの薬のこと話したら?」
「うん。」
祐一さんにあの薬の話をした。お見合いで会った時はまだ薬を飲んでいたので嫌な印象を与えてしまった。この間入院して薬の影響は消えたので少し違う感じがするのかもしれないと言った。
「そっか。大変だったね。確かに全く別人のようだ。」
三人のリードで口下手な僕も楽しく話をすることが出来た。
祐一さんと連絡先を交換して別れた。
家に帰ってからも祐一さんは頻回にメッセージをくれた。来週デートに誘われた。でもちょうどお見合いを申し込んでしまっていたので断った。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「良い感じだったじゃーん!」
月曜日に学校で真紘に言われた。
良い感じかぁ。デートに誘われたけどお見合いがあるから断ったと言うと驚かれた。
「え?あの高岡の息子だよ?お見合いよりそっちでしょ?」
「そうなの?よく分からないんだ。」
「何が?」
「急に手のひら返したみたいな感じが。」
僕はあの紹介の後、ずっと考えていたことを真紘に言った。
アルファたちはずっと冷たかった。でもそれは薬のせいだったのかもしれない。薬が抜けて可愛く見えたとしても僕自身は何も変わっていない。結局、僕の何が良いんだろう。顔?見た目?フェロモン?僕自身は?僕の中身なんてどうでも良いってこと?
あの手のひらを返したような扱いがとても悲しい。モテたいと思ったこともあったけど今は虚しいだけだ。今までだって僕は僕なのに。
「そっか。確かにそうだな。良いよ。祐一さん、断りなよ。トシくんに言っておく。」
「うん、ごめんな。何か僕、すごい拗れてるよね?」
「うーん、いや、正論だよ。何でも思い通りになると思っているアルファの悪いところだ。」
真紘がすぐにトシくんにメッセージを送った。トシくんから断ってもらった。
今週のお見合い、どうなるのかな?
真紘は委員会で残りなので一人で帰る。ぼーっと歩いていると声をかけられた。
「由紀くん。」
驚いて顔を上げた。祐一さんだ。車から降りて僕の方に歩いてくる。
気まずいな。朝、お断りの連絡をしてもらったばかりだ。
「こんにちは…。」
「ごめん。急に来て。俊之に聞いて、居ても立っても居られなくて。」
「すいません。」
軽く頭を下げた。
「いや、謝るのは俺の方だ。お見合いの時、感じ悪かった。それを今更口説いても。確かに嫌だよね。」
「いえ、薬のせいですから。仕方ないです。」
そう、薬のせいなのだ。祐一さんのせいじゃない。
「あの、一度だけチャンスをくれないか?」
「チャンスですか?」
「うん。」
いつものファミレスじゃなくておしゃれなカフェで待ち合わせだ。挙動不審にならないようにメニューを手に取って眺めた。
「由紀!」
「真紘。」
真紘が手を振ってこっちに歩いてきた。その後ろにトシくんと背の高い男の人がいるのが見えた。
僕の隣に由紀が座った。前の席にその人とトシくんが座った。
そっと前に座った男の人を見た。僕をじっと見ている。
「あっ!この間の‥‥。」
あの人だ。お見合いの人。名前は、えっと‥‥。
「知り合い?」
真紘が驚いて僕を見る。トシくんもその男の人もびっくりしている。
「俺のこと知ってるの?おかしいな、こんな可愛いオメガ、一目見たら忘れるはずないのに。」
可愛いオメガって。ウソだろ。
「あ、あの二週間前のお見合いで。」
「え?あのお見合いの子?嘘!」
すごく驚いている。あのお見合いは薬が抜ける前だったからだ。
「いえ、本当です。」
「ごめん。えっと名前は?何だっけ?ごめん。」
「僕も憶えてないので謝らないで下さい。」
「え?あ、そっか。」
目の前の男の人は酷く残念そうに肩を落とした。
「とりあえず自己紹介しようか。」
トシくんが間に入ってくれた。
彼は高岡祐一さんT大学の三年生だ。あとはプロフィールに書いたあった通りでお父さんは大きな会社を経営している。卒業したらその会社に就職するらしい。
僕も一通り自己紹介をした。祐一さんはにこにこしながら聞いている。
「由紀、あの薬のこと話したら?」
「うん。」
祐一さんにあの薬の話をした。お見合いで会った時はまだ薬を飲んでいたので嫌な印象を与えてしまった。この間入院して薬の影響は消えたので少し違う感じがするのかもしれないと言った。
「そっか。大変だったね。確かに全く別人のようだ。」
三人のリードで口下手な僕も楽しく話をすることが出来た。
祐一さんと連絡先を交換して別れた。
家に帰ってからも祐一さんは頻回にメッセージをくれた。来週デートに誘われた。でもちょうどお見合いを申し込んでしまっていたので断った。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「良い感じだったじゃーん!」
月曜日に学校で真紘に言われた。
良い感じかぁ。デートに誘われたけどお見合いがあるから断ったと言うと驚かれた。
「え?あの高岡の息子だよ?お見合いよりそっちでしょ?」
「そうなの?よく分からないんだ。」
「何が?」
「急に手のひら返したみたいな感じが。」
僕はあの紹介の後、ずっと考えていたことを真紘に言った。
アルファたちはずっと冷たかった。でもそれは薬のせいだったのかもしれない。薬が抜けて可愛く見えたとしても僕自身は何も変わっていない。結局、僕の何が良いんだろう。顔?見た目?フェロモン?僕自身は?僕の中身なんてどうでも良いってこと?
あの手のひらを返したような扱いがとても悲しい。モテたいと思ったこともあったけど今は虚しいだけだ。今までだって僕は僕なのに。
「そっか。確かにそうだな。良いよ。祐一さん、断りなよ。トシくんに言っておく。」
「うん、ごめんな。何か僕、すごい拗れてるよね?」
「うーん、いや、正論だよ。何でも思い通りになると思っているアルファの悪いところだ。」
真紘がすぐにトシくんにメッセージを送った。トシくんから断ってもらった。
今週のお見合い、どうなるのかな?
真紘は委員会で残りなので一人で帰る。ぼーっと歩いていると声をかけられた。
「由紀くん。」
驚いて顔を上げた。祐一さんだ。車から降りて僕の方に歩いてくる。
気まずいな。朝、お断りの連絡をしてもらったばかりだ。
「こんにちは…。」
「ごめん。急に来て。俊之に聞いて、居ても立っても居られなくて。」
「すいません。」
軽く頭を下げた。
「いや、謝るのは俺の方だ。お見合いの時、感じ悪かった。それを今更口説いても。確かに嫌だよね。」
「いえ、薬のせいですから。仕方ないです。」
そう、薬のせいなのだ。祐一さんのせいじゃない。
「あの、一度だけチャンスをくれないか?」
「チャンスですか?」
「うん。」
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