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病院のバスターミナルから駅に行くバスに乗った。十五分ほどで駅に着く。そのまま駅ビルの本屋に寄った。
「あった!」
一昨日出た新刊だ。あ、違うやつも新刊が出てる。こっちも買って帰ろう。
「あの、すいません。」
すぐ隣に立っている男の人に呼び止められた。
マンガに夢中で気づかなかった。
声の方を見ると167cmの僕より20cmは背が高い男の人だった。かなりのイケメンで知らない人だ。
「はい。」
邪魔だったのかな?マンガが欲しかった?
「もし良かったらお茶でも飲みませんか?」
‥‥‥。
「え?」
「可愛いオメガだな、と思って。どうですか?」
可愛い?僕が?っていうかナンパ?
「僕ですか?」
「はい。ダメ?」
「あ、ご、ごめんなさい。用事があって。」
驚いて逃げてしまった。マンガも置きっ放しだ。
生まれて初めてナンパされた。たぶんあの人はアルファだ。
うわーーっ!びっくりした。
まだドキドキしている。トイレに逃げ込んで深呼吸した。
トイレに誰か入って来たので端によけた。
「あ、君。さっき本屋に居たよね?」
「え?僕ですか?」
「そう。声かけようと思ったら居なくなっちゃって。良かった。連絡先教えて?」
え?え?またナンパ?さっきの人とは違うタイプだ。この人の方がチャラそうだ。でもアルファだと分かる。フェロモンをぷんぷん振り撒いている。
「ご、ごめんなさい。」
また走って逃げた。後ろから何か言っている声が聞こえるけど無視して走った。
「今日は何だったんだ。」
バスに乗って自宅に向かう。
結局マンガは買わなかった。というか買えなかった。あの後二人にナンパされた。
薬が抜けたから?
嬉しさよりも怖さのほうが強い。
今までモテたことなんて全くなかったからネックガードも付けていない。
家に古いやつがあったな。帰ったらつけようか。
うーん、でも急にネックガードなんか着けたら変に思われるかな。
自意識過剰とか…。
真紘の首に着いているおしゃれなネックガードを思い出した。トシくんからのプレゼントだ。
カップルは大体アルファがネックガードをプレゼントする。そんな相手がいない僕は自分で買うしかない。
ピロン。スマホが鳴った。
マナーモードにするのを忘れた。慌ててマナーモードに変える。
『今日退院?』
真紘からだ。
『うん。』
『おめでとう!退院祝いしよー!』
そうだ、真紘に頼もう。僕のフェロモンが変わったのかトシくんに聞いてみたい。自分では全くわからないし、病院のスタッフもみんなベータだった。
ウチの家族もみんなベータだ。おばあちゃんだけオメガだけどオメガには分からないと思う。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
いつものファミレスで真紘と待ち合わせをしている。
電話で退院後に四人にナンパされた話をした。
フェロモンが変わったかどうか見てもらうのにトシくんも連れてきてくれるみたいだ。
「由紀!お待たせ。」
真紘とトシくんだ。真紘が僕の前に座った。トシくんは‥‥。僕を凝視している。
「あ、あの。僕変ですか?何か変わりました?」
トシくんはハッと我に帰って真紘の隣に座った。
「うん。すごい変わった。まずフェロモンが違う。オメガの優しいフェロモンだ。後、顔というか見た目も。今までは何て言うか霧がかかっているみたいで顔がよく分からなかった。ぼんやりしてるというか。今ははっきり分かる。めちゃくちゃ可愛い。」
真紘がムスっとした。トシくんは慌てて真紘の方が可愛いし俺のタイプだ、と言って機嫌をとっている。
「真紘は?真紘から見てどう?」
真紘がじーっと見つめている。
「うーん、分かんない。アルファにしか分かんないじゃない?僕は昔から由紀は可愛いと思ってたよ。」
「え?そーなの?」
「うん。いつも言ってたじゃん。」
そう言われてみれば言ってたかもしれない。でも冗談だと思ってた。今でも信じられない。鏡の中の僕は何も変わってないから。
「つーか、その薬。ヤバかったんだね?」
「うん。腎臓の機能なんて、同じ歳の人の半分くらいになってた。今はほとんど戻ったけど。」
トシくんがじっと僕を見てる。いつもは目も合わせず挨拶もしないで真紘を連れて行ってしまうのに。
「あのさ、由紀くん。俺の友達で紹介したい人がいるんだけどどう?」
え?紹介?
真紘が隣でいいじゃん!と言っている。
「でも、僕ですよ?俊之さんがその人に怒られちゃうかも。」
「そんなことないよ。まぁ、怒られてもいいし。会うだけ会ってみて。」
真紘とトシくんであっという間に紹介する日を決めてしまった。
トシくんの顔を潰さないと良いんだけど‥。
僕はメニューを見ながら憂鬱な気分になった。
「あった!」
一昨日出た新刊だ。あ、違うやつも新刊が出てる。こっちも買って帰ろう。
「あの、すいません。」
すぐ隣に立っている男の人に呼び止められた。
マンガに夢中で気づかなかった。
声の方を見ると167cmの僕より20cmは背が高い男の人だった。かなりのイケメンで知らない人だ。
「はい。」
邪魔だったのかな?マンガが欲しかった?
「もし良かったらお茶でも飲みませんか?」
‥‥‥。
「え?」
「可愛いオメガだな、と思って。どうですか?」
可愛い?僕が?っていうかナンパ?
「僕ですか?」
「はい。ダメ?」
「あ、ご、ごめんなさい。用事があって。」
驚いて逃げてしまった。マンガも置きっ放しだ。
生まれて初めてナンパされた。たぶんあの人はアルファだ。
うわーーっ!びっくりした。
まだドキドキしている。トイレに逃げ込んで深呼吸した。
トイレに誰か入って来たので端によけた。
「あ、君。さっき本屋に居たよね?」
「え?僕ですか?」
「そう。声かけようと思ったら居なくなっちゃって。良かった。連絡先教えて?」
え?え?またナンパ?さっきの人とは違うタイプだ。この人の方がチャラそうだ。でもアルファだと分かる。フェロモンをぷんぷん振り撒いている。
「ご、ごめんなさい。」
また走って逃げた。後ろから何か言っている声が聞こえるけど無視して走った。
「今日は何だったんだ。」
バスに乗って自宅に向かう。
結局マンガは買わなかった。というか買えなかった。あの後二人にナンパされた。
薬が抜けたから?
嬉しさよりも怖さのほうが強い。
今までモテたことなんて全くなかったからネックガードも付けていない。
家に古いやつがあったな。帰ったらつけようか。
うーん、でも急にネックガードなんか着けたら変に思われるかな。
自意識過剰とか…。
真紘の首に着いているおしゃれなネックガードを思い出した。トシくんからのプレゼントだ。
カップルは大体アルファがネックガードをプレゼントする。そんな相手がいない僕は自分で買うしかない。
ピロン。スマホが鳴った。
マナーモードにするのを忘れた。慌ててマナーモードに変える。
『今日退院?』
真紘からだ。
『うん。』
『おめでとう!退院祝いしよー!』
そうだ、真紘に頼もう。僕のフェロモンが変わったのかトシくんに聞いてみたい。自分では全くわからないし、病院のスタッフもみんなベータだった。
ウチの家族もみんなベータだ。おばあちゃんだけオメガだけどオメガには分からないと思う。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
いつものファミレスで真紘と待ち合わせをしている。
電話で退院後に四人にナンパされた話をした。
フェロモンが変わったかどうか見てもらうのにトシくんも連れてきてくれるみたいだ。
「由紀!お待たせ。」
真紘とトシくんだ。真紘が僕の前に座った。トシくんは‥‥。僕を凝視している。
「あ、あの。僕変ですか?何か変わりました?」
トシくんはハッと我に帰って真紘の隣に座った。
「うん。すごい変わった。まずフェロモンが違う。オメガの優しいフェロモンだ。後、顔というか見た目も。今までは何て言うか霧がかかっているみたいで顔がよく分からなかった。ぼんやりしてるというか。今ははっきり分かる。めちゃくちゃ可愛い。」
真紘がムスっとした。トシくんは慌てて真紘の方が可愛いし俺のタイプだ、と言って機嫌をとっている。
「真紘は?真紘から見てどう?」
真紘がじーっと見つめている。
「うーん、分かんない。アルファにしか分かんないじゃない?僕は昔から由紀は可愛いと思ってたよ。」
「え?そーなの?」
「うん。いつも言ってたじゃん。」
そう言われてみれば言ってたかもしれない。でも冗談だと思ってた。今でも信じられない。鏡の中の僕は何も変わってないから。
「つーか、その薬。ヤバかったんだね?」
「うん。腎臓の機能なんて、同じ歳の人の半分くらいになってた。今はほとんど戻ったけど。」
トシくんがじっと僕を見てる。いつもは目も合わせず挨拶もしないで真紘を連れて行ってしまうのに。
「あのさ、由紀くん。俺の友達で紹介したい人がいるんだけどどう?」
え?紹介?
真紘が隣でいいじゃん!と言っている。
「でも、僕ですよ?俊之さんがその人に怒られちゃうかも。」
「そんなことないよ。まぁ、怒られてもいいし。会うだけ会ってみて。」
真紘とトシくんであっという間に紹介する日を決めてしまった。
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僕はメニューを見ながら憂鬱な気分になった。
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