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それは衝撃的な内容だった。
僕が今飲んでいる薬に重大な副作用が出る事が分かった。すぐに保護者と受診するように言われた。
重大な副作用?今のところ何も症状はない。むしろあの薬がないとヒートが辛い。
テレビ観ていた母親に電話の内容を告げた。
「え?何それ。やだ、困る。今から病院に行けば良いの?由紀、早く支度しなさい。」
母親は慌てふためいて出かける支度を始めた。僕も診察券を確認して母親の車の助手席に乗った。
「今何ともないの?やだー、電話でそう言ってくれればいいのに。頭きちゃう。由紀に何かあったらどうしよう。お父さんにも電話しとかないと。」
母は運転しながらずっと病院の文句を言っている。少しパニックになっているみたいだ。三十分ほどで病院に着いた。土曜日の午後なので外来は電気も付いておらず閑散としていた。
救急受付の人に声をかけて他の患者さんたちと一緒に待合い室で待っていた。
「中原さん、わざわざすいません。」
芦沢先生が走ってやって来た。母がすぐに立って先生に詰め寄った。
「どういう事ですか?由紀はどうなるの?何で電話で言ってくれなかったんですか?」
すごい剣幕だ。僕は母を宥めて座らせた。
「ここでは話が出来ませんから、こちらに。」
先生の後をついて二人で歩く。母はまだ興奮しているようだ。
診察室のようなところに案内されて入った。
僕が飲んでいる薬は一昨年認可されたばかりのものだ。ヒートが酷い人が飲む薬で確かに僕はヒートが楽になった。
肝心の副作用は飲み続けると腎臓の機能低下を認めるらしい。それにもう一つ、オメガのフェロモンを抑える作用もあるがアルファが不快に感じるアルファのフェロモンを出してしまう事が分かった。
アルファは元来群れることを嫌う。
自分以外のアルファは皆オメガを取り合うライバルだ。
それはフェロモンで判断している。アルファが一番嫌うのはアルファのフェロモンなのだ。無意識に敵だと判断してしまう。僕が飲んでいる薬はそのアルファのフェロモンに似たものを放出しているらしい。
「二年近く飲んでいたので一週間ほど入院が必要なんです。血液検査とかフェロモン値の測定をして身体から完全にその薬を抜かなければいけません。」
選択肢はないようだ。僕はその日のうちに入院する事になってしまった。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「マジでビビったよ。すごい良い部屋だね。治療ってどんなの?」
真紘がお見舞いに来てくれた。ベッドサイドのイスに座って話をしている。
入院、治療費は製薬会社が全額負担してくれておまけに個室に入れてもらった。
メッセージアプリで入院すると伝えたらとても驚いていた。
「ひたすら点滴してる。トイレばっか行ってるよ。」
「あはは。それで良くなってんの?」
「うん。」
入院時の血液検査で腎機能の低下を認めていた。全く症状がなかったけど先生に結果を見せてもらって納得した。
毎日点滴をして少しづつ良くなっている。
「トシくんに由紀のこと話したらすごい納得してたよ。アルファから見るとタイプはいろいろだけどオメガってみんな可愛く見えるんだって。でも由紀は何かちょっと違うって。」
「どういう事?」
「何か腹が立つっていうか、気に入らないみたい。特に僕と一緒にいて欲しくないって。それってアルファのフェロモンのせいだよ。」
「マジか‥。薬のせいだとしてもショックだね。」
「ごめん。でも薬が抜ければ大丈夫だよ。」
「だと良いんだけど。」
真紘はスマホを見てトシくんが迎えに来た、と言って帰って行った。
薬が抜ければ、か。本当かな。周りにアルファが居ないから分からないな。退院したら真紘に頼んでトシくんと会ってみようかな。腹が立たないと良いんだけど。
この間お見合いした人も腹が立ったり、気に入らないと思っていたんだ。終始嫌そうな顔してたもんな。
薬のせいとは言え、自分が否定されたみたいだ。
何だか悲しくなってベッドに潜り込んだ。
治療も無事に終わった。腎臓の機能も順調に回復して来たらしい。実感はないけど‥‥。
先生から退院許可が下りた。
一応母親に連絡しておく。
「お母さん?明日、迎えいらないから。」
「え?何で?お迎え行くよ?」
「ちょっと寄りたいところもあるし。大丈夫。」
「本当?」
いよいよ明日退院だ。お会計もないし、パジャマやタオルも病院のをレンタルしたので荷物はリュック一つだけだ。帰りに本屋に寄って昨日発売日だったマンガを買って帰ろう。
入院最終日は穏やかな気持ちで過ごした。
僕が今飲んでいる薬に重大な副作用が出る事が分かった。すぐに保護者と受診するように言われた。
重大な副作用?今のところ何も症状はない。むしろあの薬がないとヒートが辛い。
テレビ観ていた母親に電話の内容を告げた。
「え?何それ。やだ、困る。今から病院に行けば良いの?由紀、早く支度しなさい。」
母親は慌てふためいて出かける支度を始めた。僕も診察券を確認して母親の車の助手席に乗った。
「今何ともないの?やだー、電話でそう言ってくれればいいのに。頭きちゃう。由紀に何かあったらどうしよう。お父さんにも電話しとかないと。」
母は運転しながらずっと病院の文句を言っている。少しパニックになっているみたいだ。三十分ほどで病院に着いた。土曜日の午後なので外来は電気も付いておらず閑散としていた。
救急受付の人に声をかけて他の患者さんたちと一緒に待合い室で待っていた。
「中原さん、わざわざすいません。」
芦沢先生が走ってやって来た。母がすぐに立って先生に詰め寄った。
「どういう事ですか?由紀はどうなるの?何で電話で言ってくれなかったんですか?」
すごい剣幕だ。僕は母を宥めて座らせた。
「ここでは話が出来ませんから、こちらに。」
先生の後をついて二人で歩く。母はまだ興奮しているようだ。
診察室のようなところに案内されて入った。
僕が飲んでいる薬は一昨年認可されたばかりのものだ。ヒートが酷い人が飲む薬で確かに僕はヒートが楽になった。
肝心の副作用は飲み続けると腎臓の機能低下を認めるらしい。それにもう一つ、オメガのフェロモンを抑える作用もあるがアルファが不快に感じるアルファのフェロモンを出してしまう事が分かった。
アルファは元来群れることを嫌う。
自分以外のアルファは皆オメガを取り合うライバルだ。
それはフェロモンで判断している。アルファが一番嫌うのはアルファのフェロモンなのだ。無意識に敵だと判断してしまう。僕が飲んでいる薬はそのアルファのフェロモンに似たものを放出しているらしい。
「二年近く飲んでいたので一週間ほど入院が必要なんです。血液検査とかフェロモン値の測定をして身体から完全にその薬を抜かなければいけません。」
選択肢はないようだ。僕はその日のうちに入院する事になってしまった。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「マジでビビったよ。すごい良い部屋だね。治療ってどんなの?」
真紘がお見舞いに来てくれた。ベッドサイドのイスに座って話をしている。
入院、治療費は製薬会社が全額負担してくれておまけに個室に入れてもらった。
メッセージアプリで入院すると伝えたらとても驚いていた。
「ひたすら点滴してる。トイレばっか行ってるよ。」
「あはは。それで良くなってんの?」
「うん。」
入院時の血液検査で腎機能の低下を認めていた。全く症状がなかったけど先生に結果を見せてもらって納得した。
毎日点滴をして少しづつ良くなっている。
「トシくんに由紀のこと話したらすごい納得してたよ。アルファから見るとタイプはいろいろだけどオメガってみんな可愛く見えるんだって。でも由紀は何かちょっと違うって。」
「どういう事?」
「何か腹が立つっていうか、気に入らないみたい。特に僕と一緒にいて欲しくないって。それってアルファのフェロモンのせいだよ。」
「マジか‥。薬のせいだとしてもショックだね。」
「ごめん。でも薬が抜ければ大丈夫だよ。」
「だと良いんだけど。」
真紘はスマホを見てトシくんが迎えに来た、と言って帰って行った。
薬が抜ければ、か。本当かな。周りにアルファが居ないから分からないな。退院したら真紘に頼んでトシくんと会ってみようかな。腹が立たないと良いんだけど。
この間お見合いした人も腹が立ったり、気に入らないと思っていたんだ。終始嫌そうな顔してたもんな。
薬のせいとは言え、自分が否定されたみたいだ。
何だか悲しくなってベッドに潜り込んだ。
治療も無事に終わった。腎臓の機能も順調に回復して来たらしい。実感はないけど‥‥。
先生から退院許可が下りた。
一応母親に連絡しておく。
「お母さん?明日、迎えいらないから。」
「え?何で?お迎え行くよ?」
「ちょっと寄りたいところもあるし。大丈夫。」
「本当?」
いよいよ明日退院だ。お会計もないし、パジャマやタオルも病院のをレンタルしたので荷物はリュック一つだけだ。帰りに本屋に寄って昨日発売日だったマンガを買って帰ろう。
入院最終日は穏やかな気持ちで過ごした。
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