みにくいオメガの子

みこと

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学校は休んでも良いと言われたけど、出席日数も心配だし行くことにした。
真紘は病気で休んでいることになっている。
せっかく来たのに授業に身が入らない。お昼休みに祐一さんからメッセージが来た。学校が終わったら二人で真紘のお見舞いに行く。
遅くなると心配するので母にお見舞いに行くとメッセージを送った。

学校の正門の近くで祐一さんが待っていた。
僕を見つけて嬉しそうに手を振っている。

「昨日は眠れた?」

「はい。眠れないかも、と思ったけど疲れてたみたいでぐっすりでした。」

昨日は家に帰って、ご飯を少し食べてお風呂に入った。すでに夜中の一時を回っていた。
ベッドに入ると猛烈な眠気が襲ってきてすぐに眠ったみたい。
母は真紘のご両親と警察から詳しく聞いたみたいで僕には何も聞いてこなかった。



「真紘くん、外科病棟に移ったって。」

病院の正面玄関の案内図を見ながら祐一さんが言った。トシくんに聞いたのかな。
エレベーターに乗って八階の外科病棟に行く。
ナースステーションで受付をして部屋番号を教えてもらった。

ドキドキしながらドアをノックする。

「はーい。」

真紘の声だ!引き戸を開けて中に入る。

「真紘っ!」

ベッドの上に座っている思わず駆け寄った。

「真紘、良かった…。」

また涙が溢れてきた。

「由紀、ごめんな。心配かけて。」

「ううん。良かった、良かった。」

しばらく抱き合って泣いているとトシくんが部屋に入って来た。

「由紀くん、昨日はありがとう。そしてごめん。俺のせいで二人にはとんでもない迷惑をかけた。」

トシくんが僕に向かって頭を下げている。
昨日のトシくんの話を思い出した。犯人はやはりトシくんと関係があったオメガだった。最初はセフレだったけど相手のオメガがトシくんの事を好きになってしまったようだ。

「話を聞いたときはびっくりした。でもまあ、トシくんが遊んでない訳ないしね。」

真紘が目をすがめてトシくんを見た。大きな身体を小さくさせて俯いた。

「ごめん…。」

「でもそれは僕と出会う前だろ?だからまぁ、納得しきれてないけど良しとしたよ。付き合ってからも関係があったならアウトだけど。」

「それはない。絶対にない。真紘だけだ。」

真紘の所に飛んでいって抱きついている。

「由紀は大丈夫か?ショックだっただろ?」

「うん。トラウマになりそうだ。」

「本当にごめん。」

トシくんが何度も謝っている。僕にどうこう言う権利はない。真紘が良いならそれで良いんだ。

「傷はどう?」

「見る?」

「いや、いい。怖いよ。」

真紘あははと笑ってすぐに顔を顰めた。笑うと傷に響くらしい。
五センチくらいの傷が残るそうだ。トシくんは真紘が傷が気になるなら形成外科で目立たなくしてもらうと言った。保険は利かないので全額自己負担だ。もちろんトシくんが払う。

トシくんは病院に許可をもらって泊まり込んで真紘の世話をしている。この部屋は特別室で一泊八万円の個室料がかかる部屋だ。トシくんが払っている。真紘は一週間くらいで退院できるみたいだ。
本当に良かった。
あのオメガのことを聞きたかったけど今日はやめておいた。
真紘が元気で良かった。
ほっとして病院を出た。

祐一さんは終始無言だった。何かを考えているようだ。

「由紀くん。」

車に乗ってシートベルトを締めると祐一さんが口を開いた。

「はい。」

「俺は、その、俺の過去の自分は自慢できる人間じゃない。俊之と似たり寄ったりだ。特定の相手は作らなかったけど俺を恨んでいる人間がいるかもしれない。そのせいで由紀くんに何かあったら…。」

だから黙っていたのか。自分とトシくんが重なったんだ。

「過去は変えられません。もし、祐一さんに何か反省するようなことがあるなら誠意を持って対応するしかないと思います。僕も真紘と一緒です。今もやましい事があるならアウトです。」

「それはないよ。本当に。」

祐一さんは僕の手を取って口付けた。

「神に誓って由紀くんだけだ。」

今日はどこにも寄らず家に帰った。昨日の事があって疲れているし、母が心配するからだ。勉強はまた今度見てもらう。

母に真紘の様子を話したらすごくほっとしたようだ。
でも昨日と今日のことでアルファに良くない印象を持ってしまった。
祐一さんのことを言いづらくなった。





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