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俊之4
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由紀から電話があったときは何かの冗談だと思った。
でも泣きながら震える声に只事じゃないと察して一緒にいた祐一と桜ヶ丘病院に向かった。
救急救命センターのドアの前で茫然と立っている由紀を見た時にこれは冗談なんかじゃないと思い知らされた。
俺たちを見てポロポロ涙を流して由紀は泣いた。
泣いてパニックなっている由紀から何とか事情を聞き出せた。
祐一は由紀を心配してずっと肩を抱いたり背中をさすってやったりしている。
由紀の話から俺の知っているオメガに真紘が刺されたようだった。
ミルクティーベージュの髪にヘーゼルの瞳。そんな奴は一人しかいない。秀穂だ。秀穂・クロフォード、俺のセフレだったアメリカ人と日本人のハーフのオメガ。
何となく分かってた。秀穂が俺を好きだってこと。もちろんオメガだから可愛いとは思っていた。でも好きかと言われると分からない。『気に入っている』が一番近いかもしれない。
そもそも俺には好きとか愛しているとかよく分からなかった。
真紘に出会う前は…。
真紘と出会って、好きだとか愛してるだとか嫉妬するとかそういう感情が自分にもあったのかと知った。
だから秀穂も含めたセフレたちを精算した。…したつもりだった。
でもまさか過去の自分勝手な行動がこんな形で返ってくるなんて…。
真紘のご両親が真っ青な顔で駆け付けた。ちょうど医者が出てきて家族に話があると言われた。ご両親に頼んで婚約者という形で中に入れてもらうことが出来た。
ベッドサイドでパソコンの画面を見ながら医者が病状説明をしてくれた。命に別状はないようだ。それを聞いて身体から力が抜けた。麻酔が効いてまだ眠っている真紘。頭を撫でてその顔にキスをした。…良かった。でも俺のせいだ。もう真紘とはダメになるかもしれない。真紘にも、ご両親にも受け入れてもらえないかもしれない。そうなったら仕方ない。自業自得ってやつだ。遠くから真紘を見守ろう。
処置があるのでいったん外に出るように言われた。真紘のご両親はほっとしたようで泣いている。
廊下に出て真紘のご両親に本当のことを話した。頭を下げだからって許してもらえるとは限らない。
でも真紘の父親は予想以上に優しい言葉をかけてくれた。
その後、警察が来て話を聞かれた。包み隠さず本当のことを話した。また明日、警察に呼ばれるみたいだ。
救命救急センターのドアが開いて看護師が出てきた。
真紘が目を覚ました。ご両親と俺とでまた中に入る。
「お父さん、お母さん…。僕、どうしたの…?」
「大丈夫よ。大丈夫だから。」
真紘の母親が泣いている。
「まーくん、ケガしたんだよ。でも大丈夫だ。手術は成功したって。」
真紘の父親が頭を撫でながら言った。
真紘はご両親にまーくんと呼ばれている。俺もそう呼ぼうとしたらすごく嫌がられた。いざという時にご両親の顔が浮かぶからと言う理由だ。いざって何だ、と二人で笑ったのを思い出した。
「トシくん…?」
少し離れたところから真紘たちを見ていた俺に気付いた。
ご両親が避けてくれる。
近づいて顔を見た。まだ顔色は悪く、ぼーっとしている。涙が出てきた。
「トシくん、泣いてる?」
「うん、ごめんな。真紘、ごめん…。」
「ふふ、何で謝るんだよ。」
「ごめん…ごめん。」
何て言って良いのか分からず、ただ謝ってばかりいた。
「俊之くん、今日はもういいから…。」
真紘の父親に促されて離れた。
「明日には一般病棟に移れると思いますよ。」
様子を見にきた看護師に言われた。
真紘にまた明日来ると言って外に出た。
真紘のご両親に入院費を負担させて欲しいとお願いした。何度か断られたけど、頷いてもらった。医者からも明日外科病棟に移れると言われた。俺と真紘のご両親は看護師から入院の説明と病院の案内を簡単にしてもらう。
「この特別室Aは空いてますか?」
パンフレットの中の一般病棟の中で一番高い部屋を指差した。
看護師はパソコンで確認したあと空いていると教えてくれたのでそこを予約した。有料個室は医師の許可があれは付き添いも可能と書かれている。出来たら付き添いたい。真紘に嫌がられなければだが。付き添いどころか顔も見たくないと言われるかもしれない。
真紘のご両親に何度も頭を下げて病院を出た。
由紀と祐一は帰ったみたいだ。あの二人にも謝罪とお礼をしないと。
タクシーに乗ってぼんやり外を眺める。
真紘とはもう終わりかもしれない…。また涙が出てきた。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
朝、警察から電話があった。急いで支度をして警察署に向かう。
俺の両親に昨日あったことを話した。かなり驚いていた。母親からはもの凄く叱られた。子どもの頃以来だ。破談になるかもしれないと言うと母親に『そうでしょうね。あんなにいい子だったのに。』と冷たく言われた。
家を出る際に父親に『もっと上手くやれ。』とこそっと耳元で囁かれた。
落ち着いたら真紘のご両親に謝罪に行くと言われた。それと桜ヶ丘病院の医院長と知り合いなので話をしておいてくれるみたいだ。
警察署に着いた。
やはり秀穂が犯人だった。今朝、両親と弁護士と一緒に出頭してきた。俺は少し事情聴取を受けて帰された。
そのまま桜ヶ丘病院に向かう。まだ面会時間ではなかったが受付に声をかけるとすんなりと通された。
真紘は既に外科病棟に移っていた。重い足取りでエレベーターに乗る。八階の外科病棟のナースステーションの受付に声をかけた。
でも泣きながら震える声に只事じゃないと察して一緒にいた祐一と桜ヶ丘病院に向かった。
救急救命センターのドアの前で茫然と立っている由紀を見た時にこれは冗談なんかじゃないと思い知らされた。
俺たちを見てポロポロ涙を流して由紀は泣いた。
泣いてパニックなっている由紀から何とか事情を聞き出せた。
祐一は由紀を心配してずっと肩を抱いたり背中をさすってやったりしている。
由紀の話から俺の知っているオメガに真紘が刺されたようだった。
ミルクティーベージュの髪にヘーゼルの瞳。そんな奴は一人しかいない。秀穂だ。秀穂・クロフォード、俺のセフレだったアメリカ人と日本人のハーフのオメガ。
何となく分かってた。秀穂が俺を好きだってこと。もちろんオメガだから可愛いとは思っていた。でも好きかと言われると分からない。『気に入っている』が一番近いかもしれない。
そもそも俺には好きとか愛しているとかよく分からなかった。
真紘に出会う前は…。
真紘と出会って、好きだとか愛してるだとか嫉妬するとかそういう感情が自分にもあったのかと知った。
だから秀穂も含めたセフレたちを精算した。…したつもりだった。
でもまさか過去の自分勝手な行動がこんな形で返ってくるなんて…。
真紘のご両親が真っ青な顔で駆け付けた。ちょうど医者が出てきて家族に話があると言われた。ご両親に頼んで婚約者という形で中に入れてもらうことが出来た。
ベッドサイドでパソコンの画面を見ながら医者が病状説明をしてくれた。命に別状はないようだ。それを聞いて身体から力が抜けた。麻酔が効いてまだ眠っている真紘。頭を撫でてその顔にキスをした。…良かった。でも俺のせいだ。もう真紘とはダメになるかもしれない。真紘にも、ご両親にも受け入れてもらえないかもしれない。そうなったら仕方ない。自業自得ってやつだ。遠くから真紘を見守ろう。
処置があるのでいったん外に出るように言われた。真紘のご両親はほっとしたようで泣いている。
廊下に出て真紘のご両親に本当のことを話した。頭を下げだからって許してもらえるとは限らない。
でも真紘の父親は予想以上に優しい言葉をかけてくれた。
その後、警察が来て話を聞かれた。包み隠さず本当のことを話した。また明日、警察に呼ばれるみたいだ。
救命救急センターのドアが開いて看護師が出てきた。
真紘が目を覚ました。ご両親と俺とでまた中に入る。
「お父さん、お母さん…。僕、どうしたの…?」
「大丈夫よ。大丈夫だから。」
真紘の母親が泣いている。
「まーくん、ケガしたんだよ。でも大丈夫だ。手術は成功したって。」
真紘の父親が頭を撫でながら言った。
真紘はご両親にまーくんと呼ばれている。俺もそう呼ぼうとしたらすごく嫌がられた。いざという時にご両親の顔が浮かぶからと言う理由だ。いざって何だ、と二人で笑ったのを思い出した。
「トシくん…?」
少し離れたところから真紘たちを見ていた俺に気付いた。
ご両親が避けてくれる。
近づいて顔を見た。まだ顔色は悪く、ぼーっとしている。涙が出てきた。
「トシくん、泣いてる?」
「うん、ごめんな。真紘、ごめん…。」
「ふふ、何で謝るんだよ。」
「ごめん…ごめん。」
何て言って良いのか分からず、ただ謝ってばかりいた。
「俊之くん、今日はもういいから…。」
真紘の父親に促されて離れた。
「明日には一般病棟に移れると思いますよ。」
様子を見にきた看護師に言われた。
真紘にまた明日来ると言って外に出た。
真紘のご両親に入院費を負担させて欲しいとお願いした。何度か断られたけど、頷いてもらった。医者からも明日外科病棟に移れると言われた。俺と真紘のご両親は看護師から入院の説明と病院の案内を簡単にしてもらう。
「この特別室Aは空いてますか?」
パンフレットの中の一般病棟の中で一番高い部屋を指差した。
看護師はパソコンで確認したあと空いていると教えてくれたのでそこを予約した。有料個室は医師の許可があれは付き添いも可能と書かれている。出来たら付き添いたい。真紘に嫌がられなければだが。付き添いどころか顔も見たくないと言われるかもしれない。
真紘のご両親に何度も頭を下げて病院を出た。
由紀と祐一は帰ったみたいだ。あの二人にも謝罪とお礼をしないと。
タクシーに乗ってぼんやり外を眺める。
真紘とはもう終わりかもしれない…。また涙が出てきた。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
朝、警察から電話があった。急いで支度をして警察署に向かう。
俺の両親に昨日あったことを話した。かなり驚いていた。母親からはもの凄く叱られた。子どもの頃以来だ。破談になるかもしれないと言うと母親に『そうでしょうね。あんなにいい子だったのに。』と冷たく言われた。
家を出る際に父親に『もっと上手くやれ。』とこそっと耳元で囁かれた。
落ち着いたら真紘のご両親に謝罪に行くと言われた。それと桜ヶ丘病院の医院長と知り合いなので話をしておいてくれるみたいだ。
警察署に着いた。
やはり秀穂が犯人だった。今朝、両親と弁護士と一緒に出頭してきた。俺は少し事情聴取を受けて帰された。
そのまま桜ヶ丘病院に向かう。まだ面会時間ではなかったが受付に声をかけるとすんなりと通された。
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