言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹

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成り立てほやほや王女殿下の初仕事

06 私の我儘

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「……とはいえ、生き残った元王国の民を、このまま何もせず、生きる屍たちに食われるのは忍びないですよね」

 ポツリと呟く私を皆が見る。

「助けに行くつもりなのか?」

 イシリス様が少し怖い顔で尋ねてきた。私を心配してのことだってわかってるよ。

「心配しなくても、王都までは行きませんわ。そうですね……行って、マントの町までですね」

 マントの町はベルケイド王国から一番近い町なの。近い町っていっても、十キロは離れた場所にあるんだけどね。小さな町よ。のどかでのんびりとした。よく、イシリス様とデートしたわ。もうあの町並みが見れないのは悲しいわね。

「俺も悲しいが……」

 イシリス様は渋る。

 お兄様はまだ山の中。今すぐ戻って来るのは難しい。となると、必然的に動く人間が限られる。まぁ簡単にいうと、私しかいないんだけどね。国王であるお父様が出れるわけないし。口だけだして聖騎士や騎士に丸投げなんて、屑王族じゃああるまいしできないわ。

 そもそも、生きる屍は聖なる炎でしか浄化できない。

 昔は聖女っていう存在がいたらしいけどね。なんか色々やらかしたらしくて、創世神様が存在を否定したらしいわ。なので今はいない。

 となると、生きる屍を直接対峙するのは聖獣様と聖騎士になるわけだけど……正直、元王国のために聖騎士の数を減らしたくないし、ギリギリのラインで考えると、マントの町が限度かな。

 もちろん、私は全力で治癒にあたるわよ。そのために、学園で散々馬鹿にされて嫌がられても、ポーションを日々研究して改良してたんだから。戦力にはならなくても、私なりの戦い方はあるわ。

「行けるか?」

 お父様が厳しい表情で尋ねる。

「そこまでなら。イシリス様、私の我儘を許してはくれませんか?」

 立ち上がり頭を下げる私をイシリス様は抱き寄せ、抱き締めてくれた。

「……しょうがないな……わかった、だけど条件がある。俺の傍から離れるな。常に、傍にいろ」

 根負けしたイシリス様は、苦笑しながらも同意してくれた。後はお父様の許可が出るだけね。

「ミネリア、聖騎士を二十人付けよう。それ以上は出せない。それでもいいか?」

 お父様は難しい表情で答えてくれた。

「……聖騎士が二十人」

 ダラキューロ様が驚いた表情のまま呟く。

 王都にいる聖騎士と同等な数だからね。

 お兄様と同行している聖騎士と、ベルケイド王国を護る聖騎士の数を合わせると、有に我が王国の方が数が多いのよね。実は。当然、屑王族には内緒にしてたわよ。正直に話すわけないでしょ。絶対、よこせって言ってくるから。大事な民を使い捨てにされてたまるもんですか。

「構いませんわ。じゅうぶんです。代わりに、かなりの数のポーションを持って行きますが、よろしいでしょうか? 後、聖水も」

 魔物じゃない、生きる屍が相手だもの。用心に越したことはない。念のために呪い解除の聖水もいるわね。

「ああ、幾らでも持って行け。ポーションは元々、ミネリアが作り出したものだからな。聖水も遠慮するなよ」

 太っ腹ですわ、お父様。だから、大好き。

「ありがとうございます。では、遠慮なく持って行きますわね」

 ポーションはまた帰ったら作ればいいし、製造法は教えてあるから研究所で作ってくれる。暫くは忙しくて大変だけど。

「いつ出発する?」

「明日の早朝には、出発したいと思います」

「そうか……くれぐれも、無茶はするなよ」

 国王になっても、お父様は時折父親の顔を見せる。そういうところが、民に愛されてるのよね。もちろん、私もそういうお父様が好きだわ。

「大丈夫ですわ。引き際はわきまえてますから、心配なさらないで」

「ならいいが。ミネリア、くれぐれも情に流されるな。わかったか」

「はい」

 この時は、あまり深く考えていなかった。

 後に、私はお父様が放った言葉の意味を、身に沁みて知ることになるのだった。

 
 
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