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成り立てほやほや王女殿下の初仕事
07 絶対に死なせませんわ
しおりを挟む事前に間接的に見ていたとはいえ、教会が破壊された光景を直で見るのは、やっぱり心に来るものがあるわね。できれば見たくない光景だわ。これも皆、屑王族のせい。
とはいえ、考えてたよりは村は荒されていなかった。これよりも、もっと酷い状態を見たことがある私にとって、まだマシな状態だと思う。
「この村もですが、考えていたよりは被害は少ないですね。やっぱり、信仰心のあつさですね。……イシリス様、この分なら、早く片が付きそうですね」
イシリス様の背から下りた私は、内心ホッと胸を撫で下ろしながら呟く。
あまり表情を変えないリアス様が、心配そうな表情で見送ってくれたからね。早く帰って安心させてあげないと。
「ミネリア、ミネリアは俺のものだ。ここまで来て、あの女のことを考えるな」
面白くなさそうなイシリス様は、拗ねる。私はクスリと微笑む。
「私の一番はイシリス様ですよ。リアス様は私の二人目の親友ですわ」
あえて、大事なは付けないわよ。これ以上拗ねられたら、後が大変だからね。色々と。どんな風になんて訊かないでよ。
「本当だろうな!? 俺が一番だな!?」
「もちろんですわ」
嘘は吐かない。だって、本当だもん。
この村もそうだけど、マントの町までに点在する小さな村は、考えていたよりは魔物の被害が少なかった。
だから、生きる屍の発生も数人と数が少なかったみたい。生きる屍はイシリス様の手を借りることなく、聖騎士たちがバッタバッタと倒していく。
なので、生き残っている村人を無事保護することができた私たちは、噛まれてないか確認してから、兵士に護衛させベルケイド王国へと送った。まぁ、生き残った村人なら、結界に弾かれはしないわね。
思っていた以上に、スムーズにことが運んでいる。怖いくらいに。
当然、先に進むにつれ、兵の数が減っていくのだけど……この分なら、大丈夫そうよね。
「……だったら、いいがな」
鼻をヒクヒクとさせながら、ポツリとイシリス様が呟いた。ほぼ同時に、私の元に聖騎士が駆け寄り膝を付く。
「ミネリア王女殿下、マントに送っていた先兵が戻ってまいりました。ただ、かなりの深手を負っているので、今は聖水を飲ませ寝かしております」
「聖水を飲ませた!? 今すぐ、案内しなさい!!」
聖水を飲ませたってことは、生きる屍にやられたってことよ。先兵は潜入して確認するだけ、深入りはしないはず。その先兵がやられた!? ってことは、かなりの数の生きる屍がいるってことになる。
「畏まりました!!」
私とイシリス様は急いで、先兵が収容されていりテントに向かった。
テントの入口に十歳くらいの少年が立っていた。
「あの子は?」
「マントの町の者です。どうやら、あの少年を庇ったようです」
聖騎士は答える。
「そう……」
少年は縋るように私たちを見詰める。私は少年から視線を外すと、テントの中に入った。
ベッドに寝かされてるのは二人。一人は深手だったみたいだけど、呪いの解除もできて、ポーションにより傷も癒えていた。しかし、もう一人はーー
「……呪いの解除はできそうですか?」
生きる屍に噛まれた場所が黒くなり、腐っている。
「聖水を飲まし、掛けもしましたが、呪いを解除することは……」
このまま呪いが進めば、彼は生きる屍へと変貌する。
「退け!!」
イシリス様が鋭い声で命じた。私たちはベッドから離れる。
「一か八かだが……」
イシリス様はそう呟くと、掌に聖なる炎を纏わせる。そして、その炎を先兵の肩口に当てた。その瞬間、彼の体全体が聖なる炎に包まれる。
先兵の口から声にならない悲鳴が上がった。暴れる体をイシリス様は魔法で押さえ付ける。
「……助かりますか?」
私はイシリス様に尋ねる。
「呪いはこれで解除はできる。後は、こいつの生命力次第だな」
「わかりました。特級ポーションを用意しなさい!! 絶対に死なせませんわ。私の大事なベルケイド王国の民を、屑王族たちのせいで死なせるものですか!! どんなことをしてでも助けるわよ!!」
「「はい!!」」
私の号令により、治療師が特級ポーションを取りにテントを飛び出した。
私と聖騎士はその間、ポーションを先兵に与え続ける。聖なる炎は肉体を燃やしはしないから大丈夫。
お願い!! 死なないで!!
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