言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹

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神罰が一回だけとは限らない

09 追い詰められるリアス様

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「なっ!? ダラキューロ様、何を言ったか理解してますの!? 殺したってーー」

 にわかには信じられない話に、私は思わず立ち上がり問いただしてしまった。

 だってそうでしょ。王族たちが屑なのは間違いないわ。ないけど……そこまでとは思わなかった。思いたくなかった。自分が楽するために他者の命を奪う。それはもう人ではないでしょ。人間の皮を被った悪魔だわ。

「……リアスは我が娘ながら、優秀で努力をおしみません。責任感も強く向上心もある。しかし、それがいけなかった。あの屑たちにとって、リアスは格好の駒になってしまったのです」

 ダラキューロ様から吐き出される言葉からは、自責の念と底知れぬ深い怒りを感じた。

「……想像したくはありませんが、仕事を押し付けるにはいい相手ですわね。婚約者ですもの」

 私は座りなおすと、ダラキューロ様を凝視し肯定した。

 でもそれが、他者の命を奪うことにどう繋がるの?

「リアスは、第一王子の仕事、果ては王妃殿下の仕事までこなしておりました。深夜まで。……わずかな睡眠時間、学園でどうどうと浮気する第一王子、心が休まる時間がない中で、唯一、リアスを癒やしてくれたのが、隠れて世話をしていた小動物たちだったそうです」

 学園は無駄に広いからね。小動物がいるのは何度か見たことあるわ。私でも心が和む。理不尽な状態に追いやられたリアス様が、癒やしを求める気持ちはとても理解できるわ。もし、その癒やしがなかったら、リアス様の心は壊れてしまっていたかもしれない。

 そこまで追い詰めた屑たち、マジ許せないわ!! 

 怒りが湧き上がる。その怒りをなんとか抑え込むために、軽く息を吐いた。少し冷静になった頭で思う。

 ダラキューロ様の言い方だと、おそらく、それだけですまなかったみたいだと。

「……さらに、なにかあったのですね」

「はい。ようやく見付けた癒やしの時間。その時間は長くは続きはしませんでした。浮気に忙しい生徒会の仕事まで押し付けられた時、リアスは第一王子に初めて意見したそうです。『これ以上はできない』と。当然です。リアスは王妃殿下と第一王子の仕事をしているのだから。しかし、拒否されると考えていなかった第一王子は怒り狂い、リアスが隠れて世話をしていた猫を娘の前で殺したそうです」

 そうダラキューロ様告げた途端、部屋の温度が一気に下がった。下げたのは、ずっと黙って話を聞いていたイシリス様だ。

 無言のまま腰を上げたイシリス様。

「お待ちください、イシリス様。短気は損ですよ。最後まで、聞こうではありませんか」

 イシリス様の腕を掴み、私は止めた。イシリス様と同様、私も怒りで乗り込みたい気持ちでいっぱいだったから。それは私だけではなく、この部屋にいる全員がそうだった。

 イシリス様がソファーに腰を下ろしてから、私はダラキューロ様に視線を戻した。

「その話を聞いたのはいつです?」

 返答次第によっては、ダラキューロ様の接し方も考えなければならない。当然でしょ。そこまで追い詰められた娘を助けない人間に、ベルケイド王国を任せるわけにはいかないから。

「あの婚約破棄騒動のすぐ後です」

「ずいぶん遅くはありませんか?」

 同じ王宮にいたのだから、知ろうと思えば知れたはず。リアス様の様子を見れば気付くでしょ。もし気付かないのなら、親失格だわ。

「ミネリア王女殿下の仰る通りです。無理を通してでも会うべきだった。自分の不甲斐なさに言葉がでません」

 ダラキュー様は両拳を振るわせながら告げた。

 それを見て私は思う。さっき感じた底知れぬ怒りは、屑たち以外に自分に対しても湧いていた怒りだったのね。

 正直、ダラキューロ様の置かれた立場では難しかったかもしれない。無理に会って、屑たちがリアス様に何かするかもしれないと怖れているうちに、時間だけが経ったってところでしょうね。リアス様は、ダラキューロ様を手元に置く人質にもなる。同時にリアス様にとっても。本当、胸糞悪い話よね。

 始めからそう言えばいいのに、言わないのは、それが言い訳だと思ってるからか……自分の不甲斐なさに気付いているならいいわ。

「そう考えていらっしゃるのなら、全て包み隠さず教えてください。まだ、あるのでしょ」

 私はダラキューロ様を見据えたまま、そう尋ねた。


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