言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹

文字の大きさ
38 / 78
成り立てほやほや王女殿下の初外交

04 喧嘩を買いに行きましょう

しおりを挟む


 エンドキサン王国に到着して一週間。

 私は完全に疲労困憊していた。特に精神的にね。

 あ~疲れた~~マジ、疲れたわ。なんで、あんなにお茶会やパーティーが好きなのよ、貴族って奴は。まぁ、自分も貴族、それも王女だけどね……成り立てホヤホヤだけど。普段使わない表情筋を使い巻くってたら、口を開けるのも痛くなったわ。

 お父様はお父様で、大勢の方からの訪問の申し出に辟易してるみたい。他国にしてみたら、格好の機会だもん、しょうがないよね。早急に開くべき会議はどこにいったよ。到着して、三日後にそれらしき会議が開かれたけど、一時間も掛からなかったわよ。それ以後は、述べた通り。お父様、内心、後悔してるの見え見え。国王陛下になったのだから頑張ってね。それは私にも言えるわね。ブーメランだったわ。でもまぁ、本当に大変なのは、面会希望の方々を捌く従者たちだけどね。

 さてと……現状はここまでとして、ダラキューロ様が言っていた付け入る隙きってやつだけど、今の所は、私に対して、直接何も仕掛けて来ないわ。ちょっと残念だけど、裏では動いている気配を感じてるのよね。

 それに関しては、お父様子飼の暗部とダラキューロ様子飼の暗部が調べてくれている。うちの暗部も優秀だけど、負けず劣らず、ダラキューロ様の暗部も優秀なの。じゃなければ、大国に向かって、付け入る隙きがあるとは言わないでしょ。ほんと、スカウトしてよかったわ。即決した私、褒めたい。

「ミネリア様、失礼します」

 考えごとをしていたら、侍女のジュリアが私の頬に手を伸ばしてきた。

 反応する前に、頬を乱暴に揉まれた。

「痛っ!! ジュリア、痛い!!」

「少し我慢してくださいませ。これで、口を開けるのがマシになりますから」

 相変わらず表情を変えることなく、淡々とジュリアは言った。

 揉まれること数分。

「どうですか、ミネリア王女殿下? 少しはマシになりましたでしょう」

 ジュリアにそう言われて、口を開け締めしてみたら、かなりどころか、全然痛くない。

「凄い!! 全然痛くないわ!!」

 感動だわ、感動。なら、体のマッサージもして貰えばよかった。なんで、今までして貰えなかったのよ。ク~~。

「それは、聖獣様に訊いてください」

 ジュリアは私の膝の上に座る子狼に視線を向ける。

「イシリス様に?」

 私もつられて膝に座る子狼を見た。子狼はビクッと体を震わす。何か言ったな。

「婚姻関係も結んでいないのに、自分より先に、その体に直接触れるのは許さないと仰りましたので、控えておりました」

 想像できるわ。じゅうぶん、あり得るもの。ラリーお兄様でさえ、私に直接触れるのを躊躇していた時もあったからね。

 にっこりと微笑んだ私を見て、子狼は身を竦ませた。完全に目が泳いでるわ。狼でも泳ぐのね。

「筋肉痛に苦しんでいたのを傍で見ていたイシリス様がね……これは、話し合わなければいけませんね、じっくりと。……それで、そのことを今話した理由は?」

 イシリス様との話し合いは後からできるからね。

「これから、口を動かさなければならないと思いまして」

 その言葉の意味を知り、私はニヤリと笑う。

「ジュリアはリアスをいたく気に入ったようね。珍しい」

「彼女は仕事熱心で、責任感があります。人を色眼鏡で見たりはしない。高く評価しておかしいでしょうか?」

 本当はそれだけじゃないでしょ。ダラキューロ様との話しを間近で聞いていた一人だものね。あの時、その体から漏れ出た殺気は相当だったわよ。

「そうね、リアスは優秀だもの。当然ですわね。さてと、お馬鹿さんにお説教をしに行かねばなりませんね。やっと、お揃いになられたみたいだし。ジュリア、場所はもちろん把握しているのでしょ。案内しなさい。出てきたのなら、容赦はしないわ」

 直接私に仕掛けては来ないけど、取り巻きと、自分付きの侍女に色々させていることに気付いていた。

 その標的が、リアスだってことも知っている。

 王国の元婚約者。たったそれだけの理由でね。

 本当なら、早々に手を打ちたかった。だけど、侍女間だけなら、尻尾を切られたら終わりだもの。次からは、慎重に人を変えて仕掛けてくるわ。より悪質になったら困るから、皆と相談して、ここはグッと我慢することにしたの。

 多少なりとも、反発があるのは、リアスもわかっていたはず。私もね。でも、かすかに、血の匂いを滲ませたのは明らかにやり過ぎよ。それも見えないところにね。悪質だし陰険だわ。性格出てる~。ジュリアを傍に置いていたから、それ以上、酷いことはされてないけど。さすがに、我慢の限界が来ていたのよね。リアスはもうベルケイド王国の民だもの。

 揃ってくれたことに心から感謝するわ。ベルケイド王国側が、反対に付け入る隙きを与えることにならなくてすみそうだもの。

「畏まりました」

 ジュリアは軽く頭を下げる。

「では、行きましょうか。お馬鹿さんたちの喧嘩を買いに」

「お説教では?」

「お説教ですむと思います?」

 ベルケイド王国の民に手を出したことを後悔させてあげるわ。今日はそのための一石よ。

「愚問でしたね」

 ジュリアも中々いい性格してるのよね。私もそうだけど。



しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

その発言、後悔しないで下さいね?

風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。 一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。 結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。 一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。 「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が! でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません! 「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」 ※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。 ※クズがいますので、ご注意下さい。 ※ざまぁは過度なものではありません。

それは私の仕事ではありません

mios
恋愛
手伝ってほしい?嫌ですけど。自分の仕事ぐらい自分でしてください。

婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。 だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。 理由は簡単だった。 「君は役に立ちすぎた」から。 すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、 “静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。 そこで待っていたのは―― 期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。 前に出なくていい。 誰かのために壊れなくていい。 何もしなくても、ここにいていい。 「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」 婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、 何者にもならなくていいヒロインの再生と、 放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。 これは、 “役に立たなくなった”令嬢が、 ようやく自分として生き始める物語。

私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです

風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。 婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。 そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!? え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!? ※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。 ※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」 婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。 婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。 ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/01  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2022/02/15  小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位 2022/02/12  完結 2021/11/30  小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位 2021/11/29  アルファポリス HOT2位 2021/12/03  カクヨム 恋愛(週間)6位

【完】瓶底メガネの聖女様

らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。 傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。 実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。 そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。

えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~

村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。 だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。 私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。 ……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。 しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。 えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた? いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?

処理中です...