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成り立てほやほや王女殿下の初外交
08 魔鷹
しおりを挟む二日後ーー。
予想していた通り、エンドキサン王国は国境を一部封鎖を命じたみたい。ベルケイド王国に一部接しているところをね。
早い早い。
さすが、大国と言われてるだけはあるわね。お金持ち~。だって、こんな離れた駐屯基地に、数多くいる伝令の中で最高ランクの魔鷹を飛ばしてるんだもの。普通、魔鷹は有事でしか飛ばさないわよ。国境を護っている兵士は、ベルケイド王国と自国が戦争をするって勘違いしてもおかしくないわね。
それはさておき、私たちも、もちろんエンドキサン王国を倣って国境を封鎖したわよ。エンドキサン王国が封鎖したら、封鎖するように通達ずみだから。
兵士たちの間で一気に高まる緊張感。
それで、エンドキサン王国側は知ったみたいね。私たちがもうすでに、ベルケイド王国に戻って来てたってことに。
国境を封鎖した意味ないわよね~。ご苦労様でした。お疲れ様です。でも、必要ないからって簡単に解けないよね~。大国としてのプライドが邪魔して。いるかな、そのプライド。
今頃、エンドキサン国王は、内心軽く見ていた小国に手玉に取られて、悔しがってるでしょうね。聖獣様がいなければ、何もない田舎小国だって馬鹿にしてたでしょうから。
ほんと、愚か。
そんな風に見られることは、誰よりも、私やお父様、ラリーお兄様が身に沁みしてわかっていたのよ。実際、陰口叩かれていたからね。
だから、家族全員でイシリス様に頼らなくても成り立つように頑張った。
聖騎士の育成にも力を入れた。ポーションなどの薬品向上のために、研究所と薬草専門の畑をつくった。食料も輸入に頼ることなく、自国で民全員が賄えるようにした。魔法具の作製も材料も、自国で行えるようにした。時間は掛かったけど、どうにかできるようになったの。
だから、軽く見られても全然平気。困らない。
上辺だけみて、選択を間違えたのは貴方たち。エンドキサン王国側責任よ。
それ以前に、他国の侍女を了承を得ずに勝手に使い、虐めたのは論外。決して許される問題じゃないわ。国家間の火種になる案件よ。リアスじゃなくてもね。それを、自国の第一王女にしっかりと教育していなかった、貴方たちの責任よね。
そして、傍に共に行動していた腰巾着たちも、第一王女に進言することなく一緒に笑っていた。自分の子供をきちんと教育できなかったのは、国王陛下たちと同じね。
「……あら? 魔鷹だわ」
大空を優雅に格好良く飛ぶ姿を見て、私は呟く。
「我が国のものではありませんね……あの国印はエンドキサン王国のものです」
魔鷹の首元に付けられてる首輪を見て、ジュリアは答えた。
「……よく見えるわね。私には国印が点でしか見えませんわ」
私もまだまだですね。ラリーお兄様やお父様なら、ジュリアのようにはっきりと見えるんでしょうね。もっと鍛えないと。
いつもならここで、イシリス様が「ミネリアは鍛えなくていいよ。俺が護るから」とか、甘い台詞を吐いてくるのだけど、今回はそれは無し。
例の話し合いの結果、半径三メートル圏内に、一週間入らないように決まったから。なので、今は離れた場所でク~ンと鳴いてるわ。といって、分霊体の子狼ちゃんを付けるのも嫌で、ジレンマに陥っているみたいね。しっかり反省してくださいね、イシリス様。
「……どうかしましたか? リアス」
不思議そうな表情をしているので訊いてみた。
「いえ、普通、首輪でさえ見えないはずなのに……」
「ああ、魔鷹の首輪のことですね。魔力を強化しただけですよ、目に」
そう答えると、リアスはすっごく驚いていた。
そんなに驚くことじゃないんだけどな、ここでは。
「そうなのですか!?」
「ええ。魔物の討伐を生業にしている者なら、大概できますよ。できないと、まず生き残れませんから。ハンターの実技試験になってるほどですよ」
これでも、私はハンター資格を有してるからね、ちゃんとその実技試験は受けたわ。
「初めて聞きました」
「その実技試験は、ベルケイド王国特有らしいですよ。他では聞いたことはありませんから」
「そうなのですね」
はにかんだような、リアスの笑み。ごちそうさまです。
「ミネリア王女殿下、リアスと和むのはいいですが、そろそろ、執務室に向かった方がいいと思いますよ」
少し呆れながら、ジュリアが口を挟んできた。
「そうね……」
空を見上げながら、私は頷いた。
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