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しおりを挟む[頼人と志野]
部屋へ戻ると、まだ志野はベッドの中で眠っていた
無防備なその寝顔を見ていると凄く幸せな気持ちになる
志野は新卒で入社してきた
決して女々しい訳じゃなく、女より綺麗な男が入って来たな、という印象しか初めは持っていなかった
座学の新人研修が終わり、次は実際に先輩マネージャーに付いて学ぶ時、永倉から志野の指導を任された
正直面倒だった
けど志野は凄く真面目で、一度教えた事は次の日には全て覚えてきて、龍さんでさえ驚いていた
凄く優秀で、期待の新人ではあったけど、営業は厳しいかもしれないと思わせる事があった
俺と立川さんが居ない間に、度々プロデューサーやスポンサーから接待の強要ともとれる行動を受けていた事が発覚した
「いいじゃん。君が接待してくれるなら、君の事務所の子を優先的に使ってあげるからさ」
「お断りします。」
「そんな事言って良いの?君の所なんて簡単に潰せちゃうんだよ?」
たまたま早く戻ってきた俺に耳を疑う言葉が聞こえた
陰から覗き見ると、龍さんが現在撮影中のCMのスポンサーが志野を脅迫していた
すぐに出て行き、志野を背中に庇う
「これはこれは、うちの事務所を潰すですか。大きく出たものですね。」
スポンサーを睨み付ければ「いや……あの…」と口ごもる
「こいつが無理に貴方を接待しないと仕事が貰えないなら、貴社からの仕事なんて要りませんよ。
というか……本日のCM契約もそちらの債務不履行で契約破棄ですね。契約内容はしっかりお読みになった方がよろしいんじゃないですか?」
ハッキリそう言ってやれば、スポンサーも志野も息を飲む
うちの事務所は創立時色々とあったから、こういった強要などに対して契約書に明記してある
「損害賠償などの件は改めてこちらの弁護士から書面を送りますので。」
「ちょっ…!ちょっと待ってください!私が何をしたって言うんです?そんな証拠もないこと言わないで頂きたい!」
焦ったスポンサーは声が大きくなる
元々デカかった声が更にデカくなった事で、周りに居たスタッフ達が様子を伺いに近づいてきており、他のスタッフに呼ばれたのか、龍さんと監督もやって来た
「志野、ボイスレコーダーを出せ」
志野は直ぐにポケットに入っていたボイスレコーダーを取り出し大音量で再生する
先程の志野とスポンサーのやり取りが流れた
「うちの事務所ね、立ち上げた時に色々な所から圧力をかけられたり、こちらに不利な要求をされたりしていたので、新人には常にボイスレコーダーを持たせてるんですよ。」
「そんな……」
スポンサーは顔色を変え目を泳がせる
「頼、志野。帰るぞ。」
龍さんはスポンサーを睨み付けこちらに声をかけてくる
「はいはい。ほら志野行くぞ。」
志野の手を握ると微かに震えていた
結局スポンサーだった会社から謝罪があったものの、龍さんがその会社とは仕事をしないとキッパリ断ってしまった事で、現場に居たスタッフから話が漏れスポンサーの会社はマスコミの餌食になった
ざまぁ
それからだろうか、少しずつ志野が俺に頼るようになった
信用してくれてるのを感じて、嬉しく思ったもんだ
そして1年が経ち、新入社員が一人立ちする時期にまた問題が起こった
事務員の女が、皆の前で志野を同性愛者だと暴露した
志野の顔色は女からの暴言が酷くなる度に青ざめていて、気づいたら志野を庇っていた
女をやり込めた後、永倉やその場に居た他のマネージャー、SABランクの俳優達と直ぐに会議をした
志野はその外見からも、仕事ができ気配りも出来ることから、俳優達にも人気がある
マネージャー1年目は基本EFランクを受け持つが、そのランクの中には、志野を尊敬とは違う眼差しを向けている奴が居ることを、俺達は気付いていた
志野は気づいているのか、いないのか分からないが、相手にもしていない
「志野の仕事ぶりなら、響。お前のマネージャーにしたらどうだ。俺もそろそろ社長業に力を入れんといけないし。」
永倉の提案に、響は頷いた
「そうだな。今現在、俺の仕事は営業が必用ないし、仕事を受けるか受けないかは永が今まで通り選別しつつ、志野が補佐すれば永も時間が空く。良いんじゃないか?」
オファーだけで2年先のスケジュールまで埋まっている響がそう言えば反対する者など居ない
志野はその言葉に、どう反応して良いのか分からずオドオドしていた
それから、志野は響の専属になった
それでもたまに俺を頼ってくれて、可愛いなって思うことが増えていた
志野からも、俺が好きだって態度が見てとれる
多分本人的には無意識なんだろうけど、俺と話す時は顔を赤くし、口角が上がる
普段は自衛のためか、愛想が良いとは言えない顔をしているけど、逆にそれが自分は志野にとって特別なのだと気づかされた
そして運命の日
EFランクのマネージャーと俳優が、仕出しの弁当を食べ食中毒になった
軽傷なので2~3日で復帰するが、どうしても外せない会社の営業があるとの事で、手の空いていた志野を連れ営業へ行った
その帰り道、志野の元彼が復縁を求めて来たのだ
俺の中で、既に志野は俺のモノ…
つい婚約者だなんて言って、その後は志野を囲い混み最短の準備期間で結婚まで持ち込んだ
「ん………頼?」
過去を回想していたら志野が目を覚ました
「おはよう志野。体調は?」
頭を撫でると志野は顔を赤らめ「平気です」と答えた
「なぁ、志野」
「何ですか?」
「俺さ、志野の事が好きだよ。愛してる。今まで恥ずかしくて言葉にできなかったけどさ…」
「ど……どうしたんですか…?」
突然の告白に、志野は困惑気味だ
「俺一度もちゃんと伝えてなかっただろ?言葉にしなくても伝わってると思ってたんだ、俺の気持ち。けどそうじゃなかった。」
「…頼……」
「俺は確かに元々異性愛者だし、今もそうだ。志野以外の男を恋愛対象には見れない。けど、女に対しても恋愛対象として見れなくなったんだよな。」
「え?」
「志野を好きになってさ、志野以外に心を引かれなくなった。仕事場で女に言い寄られても、つい志野と比べて、志野以上の奴は居ないなって改めて思うんだよ」
「そんな…ことは……」
「志野はさ、俺が勢いと責任で結婚したと思ってるだろ?違うんだよ。
志野の元彼が現れた時、既に俺はお前を愛してた。
だからあの時すげームカついて自分が婚約者だって言って、他の奴に志野が奪われないよう急いで結婚した。」
「えぇっ!?」
「志野の性別が男とか女とか関係なく、俺は志野という存在を愛してるんだ。だから俺その事捨てないでほしい…死ぬまでそばに居て。」
「や……でも………」
「ずっと不安にさせててごめん。これからは恥ずかしがったりせずに、ちゃんと気持ちを伝えていくから。」
ジッと志野を見つめると、志野はポロポロと泣き出した
泣いてる姿も可愛いな…
「本当……?ぼ…僕の事………」
「愛してる」
「僕も…愛してるの……ずっと…好きだった……」
「すげぇ嬉しい。
もしまた不安になったら我慢せず言って。俺は志野以外好きになれないから。ちゃんと不安なんて吹き飛ばしてやる。」
「ん…ありがとう……」
泣きながら微笑む志野が可愛すぎて思わず抱き締める
「あー…可愛いなぁ……可愛すぎて、すぐに手だしちゃうんだよなー…」
そうこぼせば志野が見上げてくる
「…いつも激しくて長いのって……」
「気持ちが抑えきれず、爆発してました。」
「何それ」
クスクス笑う志野に限界突破
口を塞いで、志野に乗り上げる
「ちょ……もう無理だよ…?」
「1回だけ」
チュッ…チュッ…と許しを乞うように顔にキスを贈る
「んっ……でも……響達が……」
「他の男の話?………意地悪されたい?
あの2人は出掛けたから……ね?」
服の中に手を入れ、志野の感じる所を撫で上げる
「あっ……」
「愛してるよ。」
志野が俺の首におずおずと腕を回した
それをお許しが出たと解釈し、結局1回じゃ終われなくて、貴重な休みを志野とベッドの上で過ごした
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