【完結】ただのADだった僕が俳優になった話

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 僕と響さんはジャックさん達の撮影を見学することにした


 第三者が入ったことで、ドラマにも前作の映画でも触れられなかった、日本警察の闇の部分にもスポットを当てられている

 今回の映画の見所は、日本警察の現状を浮き彫りにした部分でもある

 上に指示された事に疑問を持っても、組織で動くとそれが正しいと感じてしまう

 本当にそれが正しいのか…と、向き合う事で真実が見えてくる

 次のシーンは、日本警察の闇に触れる大切な部分になる



『シーンNo 370、アクション』

 カンッーーーーーー

「日本の警察の皆さん、先ほど彼が言っていた事は事実ですか?」

 ジニーは日本警察を集め、部下達に現場を任せ署へ戻ってきた

「…確かに、物的証拠は何もありませんでした。しかしアイツは死体の側にいた。時には手や顔に返り血が付着していた。それが何度もです。」

 今回日本警察はいつものメンバーの他に、この男、警察官僚も同行している

「任意同行にも応じない。我々は事件の最重要人物として彼を追った。
 殺された者達は皆、人から恨まれる人物でした。
 我々の捜査で、殺しを依頼した者と、実行犯が居ることを突き止めた。
 殺しを依頼した者は、掲示板に殺したい人物、報酬額を書き込めば、スイス銀行の口座番号が自身の携帯にメッセージで送られて来て、金を振り込めば実行してもらえたと言っていました。」

「…なるほど。スイス銀行ならば秘匿性が高い。掲示板に返信を書かなかったのは発信元を隠すため。勿論メッセージの発信元も辿れなかったんだろう?」

 ジニーは興味深げに尋ねる

「そうです。」

「で、何度も現場で鉢合わせした彼を犯人と決めつけた、と。」

 ジニーの言葉に警察官僚は苦い顔をする

「それで?彼は君達が自分を殺そうとしていると言っていたが、どう言うことだい?」

 冷たい視線を向けられ警察官僚は口ごもる


「あの……高田さんから、上からの指示で『華月』を生きて捕まえる事が最優先だが、これ以上犠牲者を出さないために生死は問わないと……」

 そう答えたのは、暗殺事件を初めから捜査していた刑事だ

「君達はその指示に疑問を持たなかったのかい?」

「それは……確かに私達の仕事は犯人を逮捕することです。犯人を殺してでも…と言うのは最初反対しました。
 ですが、犯人は状況的に『華月』しかありえない。犠牲者を増やさないためには仕方がないと思いました。」

「ふぅん?そして彼に発砲したと。」

「ですが、奴も何処からか拳銃を手に入れ、我々に捕まった『咲夜』を奪還しに発砲しました!『咲夜』は隙をついて逃げ出そうとしたから…!」
 
「だから発砲し、『咲夜』に重症を負わせたと?
何の容疑で逮捕したんだい?『華月』と共に行動してたから…まさか、それだけの理由で逮捕してないだろうね?日本の警察はそんな理由で、任意同行ではなく逮捕をするのかい?

そもそも、その状況だけど…例えば、『華月』が真犯人に誘き出されて現場に居た所に君達が来ていたのだとしたら?」

 日本警察達はジニーの言葉に固まる

「血が付いていたのも、素人によくある事だ。
 気が動転して死体に触れてしまったり、血を踏んで転けてしまったりね。
 現場に居たから犯人、血を付けていたから犯人。それは軽率だ。我々は連邦警察と日本の警察としての違いはあるが、どちらも法に則って捜査をし、物的証拠を揃え犯人を逮捕するのが責務ではないだろうか?
 君達がしているのは、法を無視し状況証拠のみで犯人に仕立て上げ、逮捕できないならば、市民のためだと理由を作り、殺そうとする。
 それのどこが警察の仕事だと言うのかな。
 殺されそうになれば、誰でも逃げるか反撃するんじゃないかい?
殺されかけた挙げ句、罪を捏造され恋人を捕らえられれば、殺されるかもしれないと、助けに行くのは人として分からなくもない。
 連邦警察としては、彼を逮捕するのではなく、むしろ君達を逮捕する必要性を感じるよ。」

 ジニーの言葉に返す言葉もない

「捜査協力には感謝する。しかし、先程の現場を見るに殺したのはあの場に居たもう一人の男だろう。彼を誘き出すため『華月』と名乗り犯行に及んだと思われる。
 男と『華月』の関係は組織がどうのと言っていたから、何かしらの関係は有るのだろうが、君達にはすでに関係の無いことだ。」

「……それは、もう協力する必要は無いと言いたいんですか?」

「そうだ。君達が捜査と言って『華月』達を殺そうとするのならば、我々は君達を拘束する。
 このまま君達がこの国で、その"捜査"を続けるのならば、国同士の問題に発展することを頭に入れておいて欲しい。
 ここは日本ではない。我々には我々の法があって、それを犯すことは何人たりとも許される事ではない。」

 ジニーにピシャリと言われ高田は悔しそうに拳を握りしめた



『カーット!!』


 カットがかかり、チェックが入る

「ヒビキ、カナタ、私のハツオンヘンジャナカッタ?」

 ジャックが僕達の所へ駆け寄ってくる

「凄く上手だよ!聞き取りやすいし、感情もこもってて引き込まれちゃった!」

「ヨカッタ~…シリアスなシーンデ、ハツオンガヘンダト、イワカンガアルカラサァ…」

「違和感なく見ていられたよ。おかげで日本人俳優も良い表情をしてた」

 響さんにも誉められてジャックさんは嬉しそうだ

 監督からokが出て、僕と響さん、志野さん、頼さん、ジャックさん、ルーシーさんの6人でご飯を食べに行く事になった

 今から日本警察のみの外の撮影が夕方まであって、僕達は夜から外で撮影予定なのでそれまでの空き時間、ジャックさんとルーシーさんがこの周りを案内してくれるらしい

 ルーシーさんの旦那さんは仕事があるそうだ


 モントリオールのプラトーエリアへ連れて行ってもらった
 なんでもギリシャ・イタリア・ユダヤ人街など様々な人種や文化が混ざりあったエリアらしい

 そこで有名な飲食店へ行き、スモークミートサンドとプーティンを食べた

 初めて食べたけど、スモークミートサンドはお肉が大きくてライ麦パンで挟んでるけど、挟みきれてなかった

 プーティンはフライドポテトにソースとチーズが掛かってて、おつまみみたいで、つい手が止まらなくなっていた

 食べ終わったら、周辺を案内してもらいながら散策して、スタジオへ戻った

 夜になってから、街での撮影を行った

 日本から来た観光客達からサインを求められたり、響さんは他国の人達からもサインを求められたり勝手に写真を撮られたりと、本人とガードするスタッフさん達は大変そうだった

 改めて響さんって世界で活躍してるんだなぁと思った




 撮影は順調に進みカナダに来て1カ月半

 今日はこっちに来て初めての2連休!

 前日は案の定抱き潰された僕は、志野さん達に声が聞こえなかったかな…と気まずかったけど、彼らは彼らでイチャイチャしてたようで、昼に起きてきたのは頼さんだけだった

「なぁ彼方…ちょっと相談があるんだけど」

 ベッドから起き上がれない志野さんを甲斐甲斐しくお世話していた頼さんがリビングに顔を出したと思ったら、第一声がこれである


「頼さんが僕に相談……?え、何か怖い…」

 隣で聞いてた響さんも驚いている

「失礼な奴だな…いや…相談ってぇーのは志野の事なんだよ」

「志野さん??」

 余計に謎である

「アイツさ、俺が仕方なく結婚したって思ってるみたいなんだよ」

「「え?」」

「俺達が結婚したのはその場の勢いも…確かにあった」

「あったのかよ」

 響さんが直ぐ突っ込む

「けど、好きでもない奴に結婚しようなんていわねぇだろ?」

「相手にとっては、状況によるんじゃない?志野なら、状況によってはその場凌ぎの言葉って思うだろうな。」

「例えば?」

 僕が聞くと響さんは少し考えた

「志野がその場凌ぎって考えるなら……例えば、志野が誰かに同性愛者であることに対して嫌みを言われてる所に、頼が来て『俺は志野なら結婚できる』的なことを言ったとか。」

 確かに、志野さんは僕に同性愛者って知られた時オドオドしてたなぁ
 今まで色々言われてきたのは想像に難くない

「後は…志野に言い寄る奴が居て、志野が冷たくあしらったら逆上して『お前と結婚したいと思う奴なんてこの世にいねー!』的なことを言われてるのを頼が聞いて『俺が結婚する』的なことを言ったとか。」

「なるほど。」

 何も言わない頼さんを見ると、ズーンって効果音が似合う程に落ち込んでる

「え…まさか……頼さん図星?」


「え?」

 例えを出した響さんですら嘘だろ?って顔で頼さんを見ている


「……両方」

 ポソリと呟かれた言葉

「「え?」」


「両方だよ、両方!!」

 頭を掻きむしりながら頼さんは叫んだ

 話を聞けば、まだ志野さんが入社したての頃に話は巻き戻る

 俳優じゃないのに綺麗な男が入社してきた

 新人ながらも、いつも一生懸命で仕事もできる志野さんは先輩マネージャーや俳優達に可愛がられていた

 しかし、それに嫉妬した事務員の女性が志野さんの粗探しを始めて、同性愛者だと突き止め皆の前で暴露したあげく「本当に気持ち悪い」とか「男漁りのために入社した」とか騒いだらしい

 頼さんが「男にしか恋愛感情が抱けない人間がここで働いてる理由が、男を漁るためだけなら、君も男漁りの為に入社したってことだな。」とその女子社員を問い詰めた

 女子社員は自分を同類にするなと抗議してきたけど、頼さんは容赦がなかった

「同性愛者と異性愛者の違いなんて、どちらの性別に惹かれるかなだけだ。
 志野は男に惹かれる、お前も男に惹かれる。
 同じじゃないか。男に惹かれる奴がここで働く理由が男漁りなら、お前も一緒ってことになる。」

 ピシャリと頼さんに言われた女子社員は、それでも同性愛者と一緒にするなと騒いだらしい

「あぁ。一緒にするのは失礼だったな。志野は男漁りなんてする暇も無いくらい人一倍仕事をしている。お前と一緒だなんて志野に失礼だ。」

 頼さんがそう言うと周りの人達が賛同し、味方の居ない女子社員はその場を逃げだし、次の日には自主退職したそうだ

 そこから志野さんと頼さんの仲は縮まった

 頼さんは異性愛者であったけど、志野さんの魅力を知る度に惚れていき、志野さんの態度から両思いだと確信していた、そんな矢先に事件が起きる

 志野さんの元彼が突然現れて復縁を申し込んで来たのだ


 たまたま、営業へ行った帰りに声をかけられたらしい

 元彼は頼さんが隣に居るのにも関わらず、復縁を求めて来て、あっさりと志野さんからフラれた

 まさかフラれると思ってなかった元彼は逆ギレして、志野さんへ暴言を吐き続けた

 志野さんは冷たい表情でただ聞いていただけで、それさえも癪に障ったのか志野さんを殴ろうとした

 頼さんが志野さんを庇って一発殴られてから、やり返して地面に沈めたらしい

「俺がこいつの婚約者だ。結婚式に呼んでやるからせいぜい悔しがれ。」

 と捨て台詞を吐いてその場を後にした

 そこから、頼さんは志野さんへの怒濤の囲い混みを決行

 有無を言わせず両家の親へ挨拶に行き、頼さんの親に「男同士なんて子供ができないじゃないか」と反対されても、「志野以外に、息子が一切反応しなくなったから、無理矢理女と結婚しても孫は産まれないぞ」と爆弾を落とし、孫が欲しかった親は、それなら仕方ないと了承した、というか、せざるえなかった。

 結婚式までたった3カ月、入籍と同時に結婚式を行ったそうだ

 結婚式の時に、志野さんからは元彼の事は気にしなくて良いと言われ、結婚は止めようと言われたそうだが、頼さんは頑なに「結婚する。俺の嫁はお前だけだ」と言って、譲らなかったそうだ

 そして今に至る
 
 結婚して3年

 頼さん曰く、2人で居るとよそよそしかったり、頼さんから触れる度に嬉しそうな顔をする癖に、直ぐ申し訳なさそうな顔をするらしい


「お前馬鹿だろ」

「志野さん可哀想…」

 僕達の言葉に頼さんは首をかしげている

「まずさ、志野に『愛してる』って気持ちが全く伝わってない。言葉にしてないだろ?」

「うっ……そんな恥ずかしい事言えねぇよ」

「頼さんは元々異性愛者だったんでしょ?そりゃ志野さんからしたら、自分が恋愛対象として好かれてるなんて思ってないですよ」

「いやいや!セックスしてんだぞ!?分かるだろ!」

「ただの性欲処理だと思ってんじゃないか?志野からすれば、好きな相手に抱かれてるわけだから嫌は無いんだろうけど…」

「……性欲処理……」

 ショックを受ける頼さんに僕は追い討ちをかける

「けど納得しました。僕が事務所に入った時、頼さん他国に長期で旅行に行ってたじゃないですか。
 新婚だって聞いてたのに、志野さんが頼さんの長期旅行に文句言わなかったのって、無理に結婚したと思ってたからなんですね。
 なんならそのまま離婚するかもとか思ってたのかなぁ…」


「え………?」

 頼さんの顔色が段々青ざめていく

「志野の事だから、頼が浮気しても何も言わないだろうな。他に女の影でもチラつこうものなら、志野から離婚を切り出しそうだ」

 響さんも追い討ちをかけていく

「…離婚?……志野から………」

 頼さんの顔色は青色から土気色へと変わっている


「いいか、頼。志野が理解するまで、ちゃんと自分の気持ちを言葉で伝えろ。恥ずかしいとか理由つけんな。勿論身体で分からせるのもダメだ。志野は理解しないからな。」

 頼さんは響さんの言葉に深く頷いた



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