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プロポーズ
しおりを挟む最近響さんが何か思い悩んでいる顔をしている
どうしたのか尋ねても、「んー…台詞の事でね」と言って詳しくは話してくれない
心配だけど、無理に聞き出すのもなぁ…と思っていると、響さんから次の2連休に一泊しに行かないかと誘われた
僕に合わせて休みを貰ったらしく、響さんの気分転換になるならと思い「是非」と答えた
響さんに連れられて来たのは、東京から少し離れた県だった
ドーム型のグランピング施設だ
ドームの周りに庭があって、人の背よりも高い緑の壁に囲われている
その庭でバーベキューができるらしい
ドームの中は半球部分にキッチン、リビング、お風呂、トイレ、洗面所があって、壁で仕切られた反対側には大きなベッドがドンと置かれている
ベッド側の半球は全面ガラス貼りなのか、外が見渡せる
天井部分もガラス貼りなので、夜になったらベッドに寝転がって星を見ることができるらしい
ちゃんとカーテンも付いていて、ボタン1つでカーテンを閉めることが出来るんだとか
昼は近くの川でカヌーで遊べて、馬にも乗れるらしい
近くにふれあい動物園もあるそうだ
ドームは個々に結構離れているので、人の気配を感じない、非日常を味わえるのが売りなんだとか
バーベキューをする時は、時間を言っておけば庭に全部用意してくれるコースにしたらしい
このコースだと食べ終わった後も、そのまま放置してOKなんだって
それに食材は事前に食べたいものをリクエストしておくと用意してくれて、わざわざ持っていかなくて良いんだって
きっとVIP仕様のコースに違いない
平日のこの日、カヌーは人が居なくて貸し切り状態だった為凄く楽しめた
ついでに川遊びなんかもした
夕方バーベキューの時間になってドームに戻って来ると、庭のテラスに準備されていた
食材は僕の好きな魚介類がふんだんに準備されていて、他にはお肉や葉物野菜、バターコーンやウインナーがあった
食べきれるかな?と思ってたら、残ったら朝ごはんで使うから気にしなくて良いと言ってもらえた
火の通りにくい物から網に乗せ焼いて、二人で少しだけお酒を飲みながら沢山食べた
食べ終わったら火を消して、周りの電気も消した
すると空いっぱいに満天の星が煌めいていて、手を伸ばせば届くんじゃないかと錯覚するほど綺麗だった
寝る前に二人でお風呂に入った
お風呂でも沢山イチャイチャして、のぼせる前に上がってリビングでまったりした
突然どこからかオルゴールの音が鳴り出した
「え?オルゴール??」
僕がキョロキョロしていると、響さんが指差した
「ベッドルームから聞こえるよ」
その言葉に、恐る恐るベッドルームに向かう
ここに来た時、オルゴールの音がするものなんてあったっけ?
中を覗くと、ベッドの上に花弁が散っていて、真ん中に可愛いテディベアが鎮座している
どうやらあのテディベアから音が鳴ってるようだ
ベッドへ上がり、テディベアを手に取るとテディベアが封筒を両手で持っている
ちょっとドキドキしながら、封筒の中身を取り出し開ける
『彼方へ
人生で初めて手紙を書きます。
読みにくかったらごめん。
彼方の事を知って4年、実際に出会って3年。
俺たちは長いようで短い時間に沢山の事を経験し乗り越えて来たと思う。
彼方を残してアメリカへ行った時、彼方がしっかり者だと分かっていながらも毎日心配で、勉強のためにと言い訳して毎日連絡してた。
彼方が行方不明だと連絡を受けた時の絶望感は言葉に表せない程だった。
見つけ出せた時、二度と側を離れたくないって思った。
自分の自宅に住まわせて、一緒に眠った日、腕の中に彼方が居ることでやっと安心できた。
きっと初めて会った時には、俺は彼方に恋していたんだと思う。
ADとして、どんな仕事にも前向きに取り組んで、努力を惜しまない。そのくせどこか達観した眼差しで周りを見ていた。
その眼差しにも性格にも惹かれてやまなかった。
彼方と恋人になれて本当に毎日が幸せで、この世界に入ってよかったと心から思う。
この世界に入ったから彼方と出会えた。
この世界に入らなければ、きっと彼方に好いてもらえるような人間には、なれなかったと思う。
俺を愛してくれてありがとう。
彼方に愛されて、俺は誰よりも幸せな男だと思ってる。
けど、欲深いけど、もっと幸せになりたいんだ。
そのために、彼方のこの先の人生を俺にくれないか?
自分の子供を持つことができなくなるけれど、どうか俺を選んで欲しい。
死ぬその時まで、俺だけを選び続けてほしいんだ。
愛してるよ、彼方。
俺と結婚してほしい。
響』
ポタ…ポタ…手紙が濡れていく
この感情をどう表現して良いか分からない
嬉しい
幸せ
愛してる
ずっと一緒に居たい
大好き
寂しい
会いたい
急いでベッドから降りて、響さんの居るリビングへ走る
響さんが優しい顔をして両手を広げてくれたから、思いっきり抱きついた
ボロボロ泣きながらギューッと抱き締める
「彼方、俺と結婚してくれる?」
耳元で囁かれて、何度も縦に首を振る
「僕も……結婚したい!響さん、愛してる!!」
きっと最後はもう叫んでた
響さんはぐいっと僕を抱き上げて、クルクル回り始めた
「俺も愛してるよ。ありがとう!」
クルクルしながらベッドまで運ばれて、丁寧に寝かされた
天井以外カーテンを閉めて電気を消す
星と月の光でうっすらと部屋が照らされた
「ねぇ、彼方……明日婚姻届出しに行っても良い?」
覆い被さってきた響さんは凄く幸せそうな顔をしている
「ん~…今日手加減してくれるなら良いよ。婚姻届を出しに行くのに、腰が痛いのはちょっとね」
ふふっと笑って答えると、響さんはふにゃっと笑って「りょーかい」と言って甘い甘いキスをくれた
響さんから初めて貰った手紙は僕の宝物
沢山愛し合った次の日、事務所に報告に行き、いつの間にか用意されていた婚姻届を記入して区役所に提出した
役所の人にバレないよう、また僕は女装をし響さんは危険人物に変装した
役所の担当者は、響さんにビクビクしながら、凄いスピードで処理してくれた
他の手続きは、二人で行くとその内バレるかもしれないので、後日代理で委任状を持った志野さんと頼さんが行ってくれる事になっている
たまたまだが、結婚記念日が『11月22日 良い夫夫の日』で幸先が良いねと笑いあった
因みに、響さんが悩んでいた台詞の事だけど、ドラマの台詞で「結婚しよう」って言わなきゃいけなかったらしい
けど、いくらドラマの台詞であっても、その言葉は僕に先に言いたくて、いつプロポーズしようか悩んでたみたい
響さんって変な所でこだわりがあるんだよね
そんなところも大好きなんだけど
後日、その台詞は結局相手の女優さんの台詞に変更されたらしい
響さんが出演してるのは、男っぽい女性と、女々しい男性のラブコメドラマなんだ
観ててメチャクチャ笑えるから、できるだけリアタイしてるんだよね
女々しい男性が男らしい一面を初めて見せるシーンだったんだけど、男らしい一面要らなくない?ってなったんだって
ドラマの話だけど、それを聞いてちょっと可哀想になったよね
プロポーズくらい格好つけさせてやってくれよって
まぁ、おかげで響さんは上機嫌だったよ
台詞でも、他の人にプロポーズはしたくなかったみたい
そんな僕達は今日もラブラブです
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