【完結】ただのADだった僕が俳優になった話

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別れの時

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「俺達…もうサヨナラだ………」

そう言って、泣き顔を見られないように背を向けた

君はきっとその場に佇んで俺が見えなくなるまで、ずっとずっと見つめているんだろう

でも俺は振り返ったりはしない

お互いのために、この選択が一番良いんだ

俺は数ヵ月後には君を置いて逝く

俺の側にいれば、君も疲弊してしまう

もう俺の事は忘れてくれ

これ以上君が傷つかなくてすむように

君が知っている俺はきっと居なくなってしまうから

だから…どうかアイツと幸せになってくれ

アイツなら必ず君を幸せにしてくれるから

愛していたよ













病院独特の匂いに目を覚ます

「…俺……病院?」

ゆっくりと起き上がり周囲を見渡す

点滴スタンドに吊るされた点滴袋が見え、やはり病院だと理解する

「え…俺………何で?」

慌ててナースコールを探し長押しする

「は?……何?どういうこと?」

訳がわからない

なぜ俺が病院なんかにいるんだ? 

「高宮さん、目を覚まされたんですね。気分が悪いとかないですか?」

看護師が部屋に入ってきて話しかけてくる

高宮…?

「高宮さん?」

「あの…高宮って…俺の事ですか?」

俺の言葉に看護師さんの笑顔が消え焦った顔になる

「貴方は高宮凛さんといいます。自分のことで覚えている事はありますか?」

そう聞かれて考える

誕生日、年齢、自分の顔、目覚める前に何していたのか…
何も覚えていない

「俺…何も覚えてない……」

「そうだったんですね、まずは先生に診てもらいましょう。その後、病院が把握している高宮さんの情報をお話しますから。」

「…わかりました。」

看護師さんは病室を出ていった

掛け布団を退け、足や体に怪我がないか確認してみるが特に怪我をしている感じはない

どこか痛いとか、感覚がないとかもない

コンコンーーーー

ノックの音がして白衣を着た医者と先程の看護師が入ってきた

「高宮さん、記憶がないとお聞きしました。まず看護師がバイタルチェックをします。その後私の質問に答えてください。」

俺が頷くと、看護師さんから体温計を渡され脇に挟むと、逆の腕は血圧を測られる

体温計が鳴って、看護師さんが取り出して確認したら指に酸素濃度を測る機械をつけられた

医者も一緒に確認していたらしく「問題ないな」と頷いている

「では質問するね。名前が思い出せなかったと聞いたが生年月日はわかる?」

「いえ、自分のことは何一つ。起きるまで何をしていたかさえ覚えてません。」


「ここが何処だかはわかる?」

「病室ですよね…何でここに居るかわからないんですが…」

「うん、じゃあ今日は何月何日かわかるかな?」

「今日は…」

ふと頭に流れてくる川と河川敷の景色
周りの山は紅葉が始まっていた

河川敷には他にも人が居て…誰だっけ……

ズキッと頭に痛みが走る

思い出そうとするとズキズキと痛みが酷くなって、頭を抱えて唸り声を上げた

「高宮君、落ち着いて。思い出さなくていいから。」

医者に背中を撫でられ徐々に落ち着いた

「日にちはわからないんだね?」

「わからない…んだと思うって言うか…」

「ん?」

「河川敷と川と紅葉の風景が頭に浮かんできて…他にも誰か居たと思うんですけど…思い出そうとしたら頭が痛くなって……」

「そうだったのか。話してくれてありがとう。」

医者は微笑むと、俺の記憶喪失は解離性健忘の一種だと言われた

今の季節は秋

きっと先程の映像は俺が最後に見た景色だったのかもしれない

解離性健忘は強いストレスやショックによって記憶の一部を失うらしい
でも俺は何も覚えてない
一部どころか全部だ

医者と看護師さんから、病院がわかっている情報を教えてもらった

名前は高宮凛、年齢は20歳、記憶が徐々に無くなってると診察に来て、診察中に倒れたらしい
家族は2ヶ月前に死んで、その頃から少しずつ記憶を失っていると俺が言っていたそうだ

脳に外傷がないか検査し、検査結果を話している時に俺は倒れこの状況らしい

親戚とかと連絡を取りたいから、スマホの中身を見て良いか聞かれた

理由としては、家族が死んだことによって解離性健忘が始まったなら、何が引き金か確定してない今は、過去のことに触れるのはあまり良くないと言われた

指紋認証でロックが解除できるタイプでよかった

パスワードをリセットし医者に預けた

親族と連絡が取れるまで、様子を見るため入院することになった






数日たったが、未だに親族とは連絡がとれていないらしい

理由は、スマホに親族らしい人の登録がなかったそうだ

だから、俺が頻繁に連絡していた人に病院から連絡をして、俺の事を聞いてくれるって言ってた

事件性がある訳じゃないから、警察に任せる訳にもいかず、だからといって今のまま家に返す訳にもいかないみたいだった

一週間後、俺と頻繁に連絡していたと言う人物と会うことになった

医者からは昨日、俺がなぜ記憶を失ったのか説明があった
俺は幼いときから両親に虐待を受けていたらしい
高校1年の時に知り合ったその男は、俺が虐待を受けていることに気づき、いろいろ助けてくれてたらしい
養護施設に入るのを拒否した俺を、一人暮らししている家に泊めたりしてくれてたみたいだ
警察に相談しようと何度も言ってくれたみたいだけど、俺が拒否してたんだって
虐待され続けてる人には、自分を虐待する相手を庇うところがあるみたいだ

俺の両親が死んでから、少しずつ俺の様子が変になっていくのを感じ心配していた矢先、別れの言葉を残して俺が消えたんだって

姿を消して2週間、病院からの連絡で慌てて病院に来て話をしてくれたそうだ

残念ながら、その話を聞いても何も思い出せなかった


コンコンーーーー

「高宮さん、ご友人が来られましたよ」

いよいよ対面だ

医者と看護師さんが連れてきたのは背の高いイケメンだった

何となく懐かしい感じがするその男は、俺の前に来ると視線を合わせるよう屈んだ

「凛……」

震える手で俺の頬に触れた

「生きててよかった…」

今にも泣きそうな顔をしてそんなことを言う

なぜかわからないが、俺も泣きそうだ

胸が痛くて、こいつを悲しませた事に罪悪感を感じる

「…ご…ごめん、俺…何も覚えてないんだ…でも、心配かけて、悪かった…」

震える声で何とか紡いだ言葉

男はついに泣き出し、俺をぎゅっと抱き締めた

「凛は悪くない…もっと早く、凛の様子がおかしいって気づいてたら…ごめん、一人にしてごめん。」

なぜかわからないが俺も泣いていた

記憶がないのに

知らない男なのに

心が、こいつが大切だって言ってる

「凛、記憶が戻るまで俺と暮らそう」

「え?……いや…記憶が戻るまでって、いつ記憶が戻るかわからないし、戻るかさえわかんないし…」

「凛が嫌になったら別々に住めばいい…けど今はお願いだ…心配でたまらないんだ…俺を側に居させて……」

まるですがり付くように抱き締められていてはNOとは言いにくい

「迷惑じゃないなら……」

俺はそう答えていた











『ウヒョー!!来た来た来た来た!!』
『ちょっ!マジで!?嬉しすぎんだけど!』
『ヤバいヤバい!早く本編見たい!来週まで待つの!?無理だよー!!』
『キャスティング神!リアタイしなきゃ!残業なんてしないぜ!』

月曜ドラマ《記憶》のエピソード0の放送が終わった直後から、SNSではこのドラマについて大量の呟きが流れた

「もし彼方が記憶を失うってわかってたら、凛みたいに俺の前から消える?」

後ろから僕を抱き締めている響の声は不安げだ

「んー…僕は響に記憶が徐々に無くなってる事を伝えるし、記憶を全て失っても大丈夫なように準備しとくかな」

響の方に顔を向け、響の頭を撫でる

「準備って?」

「動画を残しとく。僕の旦那さんは響で、僕の唯一無二の愛する人だって。記憶をなくしたからって、響を傷つけたら僕自身でも許さないって。」

「彼方…」

「ふふふっ……まだ役の気持ちを引きずってるみたいだね?」

体勢を変えて、響の膝に乗り上げ向かい合う
響の顔に沢山キスを贈ると少し安心した顔をする

「最初からスゲー辛かったから…次の台本読んだ?俺発狂しそうだったよ…」

そうだろうな…すでに4話撮り終えて、明日から5話目の撮影が開始される

凛の前に幼馴染みの女の子が現れて、響が演じる龍と僕が演じる凛の間に入ってくる
その女の子は凛の事が好きで、凛が寝落ちしているのを見てついキスをしようとする
そこに龍が現れて…って話だ

キスはしないけど、響からすればガルガル響降臨案件だ

現在月曜9時からのドラマに僕は主演で出演している
今日は初回放送前の、30分だけのミニドラマが放送された
今回のこのドラマは、キャストの発表が行われず、当日見た人が初めて誰が出ているのかわかる

《記憶》の大まかなストーリーは、主人公凛は幼い頃から虐待を受けていた
それは両親が殺された日まで続いた
両親が死んだことで解放された凛だったが、長年の極度のストレスから、両親の死をトリガーに徐々に記憶を失っていった
理由はわからないが、このままでは全て忘れてしまうと思った凛は、響演じる龍に別れを告げ姿を消した

龍の好きな人が幼馴染みの莉奈だと思っていた凛は、2人が幸せになることを祈っていたが、見届ける勇気がなかったのだ

だが龍の好きな人は他に居た
記憶を無くした凛は日々龍の優しさに触れ、龍に惹かれていく

果たして凛の記憶は戻るのか、龍の好きな人は誰なのか、今後記憶は戻るのか…てな感じのストーリーだ

「これからも響にとって辛いシーンが多そうだね…」

「うん…彼方の『凛』だから余計辛いんだと思う。本当に彼方に忘れられた気になっちゃって…役に入り込んじゃうのも問題だな」

響は自嘲気味に笑った

「それが俳優叶響なんだから良いんだよ」

僕は響の顔を上げさせ目元にキスをする

「僕の響に戻すのは僕の特権なんだから」

チュッ…チュッ…と顔の至るところにキスをしていく

「彼方…」

響のスイッチを押したようだ

ソファーに押し倒されて、響が上に跨がってくる

「響…『凛』じゃなく僕を愛して。」

響の首に腕を回せば、激しいキスをされる


「ん………っ……あっ……」

くちゅ…と粘りけのある水音が出る

服の裾から響の手が入ってきて僕の体を撫で上げる

指が乳首にかすれ、ピクッと体が跳ねた

「もう可愛く主張してるね?」

クスッと笑い、触って欲しいと主張する乳首に刺激を与え始めた響は、器用に片手で僕の上の服を脱がせた

耳や首を舌でなぶる

「……やぁ………そこ……だめ…………」

「気持ち良いね?」

またクスリと笑って、次は乳首を舌で愛撫し始めた

舐めて、舌でグリグリして、時たま甘噛みされる

「ひゃッ………アッ………ん…っ…」

片方終わればもう片方も愛撫され、その間ずっと片手は僕の体をまさぐっていた

けど下半身には一切触れてくれない

「響……」

足をモジモジさせておねだりするも、「ん?」と優しく微笑まれただけだった

分かってるくせに…意地悪だ

「下も……下も触ってよ………」

もぞもぞしながらズボンを脱ごうとしていたらその手を止められた

「続きはベッドの上でね?」

軽々と抱き上げられ、寝室に連れていかれた


この日、何度も何度も抱かれた


「やぁ…もっ……むり……………」

「だぁめ…………あー………気持ち良い……」

パンパンと肌がぶつかる音とグチャグチャ、グチュグチュと粘りけのある音が部屋に響く

「あぁッ………ぁ………んッ……ら…めぇ……あ……奥……ヤッ………」


「奥?」


僕の最奥をグリグリと容赦なく虐める

「あぁッ!!」

また中イキさせられ体が痙攣する

「またイッたね?…………そうだ、何回連続でイケるか挑戦してみよっか」

いやいや!無理だよ!もう本当に!

「彼方の好きな所いっぱい突いてあげるね」

目がギラギラしている響はニヤッと笑った



「ぁ……んぅ………あぁッ………」

馬鹿になったみたいに体の痙攣が止まらない

自分の意思ではもう体が動かせなくて、響に揺さぶられながらずっと喘いでいた

時折口移しで水を飲まされ、また責められ、イかされて、潮を吹かされて、意識が飛びそうになったら激しいピストンをされる

「………ッ……イくッ……」

グッと響のぺニスが最奥まで入り、膨らんだと思ったらビュッ…ビュッ……と射精した

ゴム越しなのにハッキリ分かるほど僕の中は敏感になってて、響がイッた刺激で僕もまたイッた

「彼方」

チュッと唇にキスをされ、どんどん深いキスにかわっていく


「む……りぃ………もぅ………」

キスの合間に必死で訴える

「もう……限界?」

「ん……げんかぃ………」

息も整わないし、体は痙攣しっぱなしだし、もう無理だ……


「しょうがないな……じゃあ今日は終わりね?また明日。」

響は僕の上から退くと、「タオルを持ってくるね」と言って風呂場へ向かった

…明日?
また明日もするって!?
いやいや!無理だよ!
撮影もあるよ!?






響は有言実行の男だ

回数は減ったものの、ドラマの撮影が終わるまで、僕は毎日響に抱かれたのだった








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