【完結】ただのADだった僕が俳優になった話

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Wデート

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僕達がアメリカに来て約1年

僕は毎日ネイティブな英語に触れ、段々英語が聞き取りも話すこともできるようになってきていた

音楽活動は順調で、明日はMVの撮影がある

4人ともボーカルで、パートを分けて歌っていて僕はキーボード、響はベース、ジャックはギター、ルーシーはドラムと役割分担もできている

曲作りも、僕と響が作詞担当でジャックとルーシーが作曲担当、編曲は皆で行っている

すでにアルバム4つ分ほど曲が完成していて、レコーディング待ちの状態だ

なぜこんなにも曲ができているかと言うと、僕達が全員違う分野を得意としていたからだった

僕が書く歌詞は基本的に応援歌やメッセージソングの分野が多い
響はラブソングと言われる恋の歌詞と、生死感についての歌詞が多い
ジャックはPOPS やアンセムを得意として、僕の歌詞と相性が良い
逆にルーシーはバラードを得意としていて、響の歌詞と相性が良く、作曲担当の2人は歌詞を見ると曲が湧いてくるようで1~2時間で曲をつけてくる

1日2曲作詞と作曲ができるので、これだけの曲が爆誕したのだ

僕には曲作りの才能はないから、あんなにいろんなメロディが出てくるなんてすごいと思う

順調な滑り出しとなった僕達なのだが、最近ちょっと、どうしたら良いか悩んでいることがある

それは志野さんと頼さんの事だ

ちゃんと思いが通じあった2人は、今回のアメリカでの仕事も着いてきてくれている

だが2人は僕達のマネージメントをするのではなく、アメリカにも事務所を置くことになった為、奔走している

日本の事務所は現在在籍人数が増え、S1名A15名B20名C34名D12名E7名F4名の合計93名が在籍している

それに合わせてマネージャーも増え、事務員も増え、狭くなってしまった事務所を最近移転した

細井が捕まった時の緊急特番と、その後の会見を見た役者志望の人や、他社に在籍中の俳優まで移籍したいと連絡が殺到したらしい

役者志望の人は厳しいオーディションを受けてもらって、他社に在籍中の人は自分で現在の事務所とまずは話すこと、話がついたらオーディションを受けること、こちらに所属しても新人扱いになることなど説明し、篩にかけた

結果93名の大所帯となってしまったのだ

その中には、すでに売れて有名な人まで数人いた
移籍理由は、前の事務所のやり方や考え方に疲弊していて、あの特番や会見を見てこの社長の元で役者をやりたいと思ったらしい

永倉さんみたいな社長はなかなか居ないらしい

そんなわけで、在籍している子達は日々切磋琢磨している
その努力が実ってか、ハリウッドに呼ばれる子も出てきている

アメリカで仕事をする際エージェンシーと契約するんだけど、響が契約していた大手のエージェンシーと事務所自体が契約した

うちの在籍者は売れると踏んだ大手のエージェンシーから、個人ではなく事務所との契約をしたいと言われ、響も僕も全て事務所に任せられるようになった

仕事を取ってくるのは向こうで、俳優のサポートはうちのマネージャー、問題が起これば双方の弁護士が合同で解決にあたる

そのエージェンシーから、僕もこの1年仕事のオファーが次々舞い込んで来て、頼さんが忙しくなりすぎないよう仕事を選んでくれている

そのため来年から僕もSランクになることが決まっている

そうやってS ランクに上がって来る人が増えるだろうとの事で、アメリカにも事務所を置いて、寮もビル内に作り仕事の効率化を図るらしい

それは良い

だが問題はここからだ

頼さんはワイルドな彫りの深い顔立ちで、ハーフ顔である
だが日本人ゆえに、日本人特有の気配りができてしまう
そうすると、海外ではめちゃモテる

結婚指輪もしてるし、ハッキリと意思表示しているが、アプローチしてくる人が多い

ジャック曰く、志野さんと頼さんは家以外でスキンシップをしない
日本人はそういうことをあまりしないのだろうが、海外では恋人とスキンシップをするのは普通で、歩く時に手を繋いだり肩を組んだり、愛を囁いたり、額や頬や頭や唇に軽くキスをするのも普通らしく、アプローチしてくる人には2人が不仲に見えている可能性があるのだとか

なので響と僕は、2人に僕達と同じ日に休みをとってもらい、Wデートすることにしたのだ

事前に志野さんには、何でスキンシップしないのか、それとなく聞き出した

素直に恥ずかしいのと、アメリカでは未だに同性婚は認められてなくて、人の目が気になってしまうらしい

日本でも辛い思いをして来た志野さんらしい答えだった

ならば人目を気にしなければイチャイチャできるはず!と頼さんに事情を話し協力してもらった


Wデート当日

僕と響は日本の時と同様に変装した
僕が女装して、響はジャパニーズマフィアみたいな服装だ
そして志野さんはもともと中性的で美人なので、髪の短い女性にも見えるよう、白のベレー帽にインナーはニット、黒のスキニーを穿いてもらった
アクセサリーは、耳元で揺れるピアス
ネックレスは小ぶりのダイヤがついた短めのチェーンのものにした

「志野、凄く似合ってる!可愛いし綺麗だし他のやつに見せるのが勿体ない!」

頼さんは志野さんを見てニコニコ、デレデレしている

「あ…ありがとう」

志野さんも恥ずかしそうに顔を赤くしてモジモジしてて、この姿を頼さんにアプローチしている人達に見せてやりたいと思った

早速4人でお出かけ開始

ザ・グローブでこれから着る服などをまずは購入する

頼さんが志野さんの腰に腕を回し、僕達の前を歩いている

志野さんは周囲の目が気になるのかキョロキョロしてるけど、志野さん達を見ている人からは「わぁ、アジアのモデルかしら?」とか「美男美女ね」とか言われていて、差別的な言葉は聞こえない

それに安心したのか、頼さんとのデートだからか、いつもより可愛い笑顔を振り撒いていて、頼さんが周囲にガルガルし始めていた

僕と響はもともと日本でも手を繋いだり腰を抱いたりしていたので現在もそんな感じだ
ただアメリカに来て、響から人前でも軽くキスされるのは未だに慣れない


アメリカではマネージャーの服装は日本みたいに堅苦しいスーツオンリーではないらしい
勿論スーツを着ることもあるけど、仕事場所が変われば服装もそれに合わせる

特に大手のエージェンシーやマネージャーは高級な物を身につけ仕事ができる感じを出す必要もあるらしい

日本のマネージャーの給料で、そんな高価なものを買えるのだろうか?と思っていたけど、頼さんも志野さんも高給取りだった

僕達が俳優として現場に行く時に一緒に行く時の服装と、レコーディングやMV 撮影に行く時用の服装はまた違うらしく、4人で頼さんと志野さんの服を時間をかけて選んだ

「頼、この紙袋は何ですか?」

志野さんがいつの間にか増えた荷物に首を傾げる

「これ?志野に似合いそうな服があったから、普段着用で買ったんだよ。帰ったら着て見せてね」

「あ…ありがとうございます」

嬉しそうに微笑む志野さんにチュッと軽くキスをする頼さん

志野さんの顔は真っ赤だ

頼さんは上機嫌で志野さんの肩を抱き、次の目的地へ向かっていく

僕と響もそれに続いた

時計や鞄を買い、次はご飯を食べに行った

この商業施設の隣には100店舗以上の屋台が並んでいて、他国の料理もある

久々に日本料理を食べて、デザートを食べてとお腹いっぱいになるまで食べまくった

「最近食欲旺盛だね?」

響が僕の口元を拭いながらニコニコしている

「今の現場、凄く動くからすぐお腹減るんだよね」

今の現場は日本人の監督が撮っている忍の映画だ

忍の役なので、ワイヤーアクションが多く運動量が本当にヤバい

アクロバティックな動きもあって、撮影前から訓練していた

「何で同じ映画に出てるのに、響はいつも通りなの?」

「俺は昔から鍛えてたし、ベスト体重を維持しておかないと体が重くて動きが悪くなるから、お腹が減ってもいつも通りにしてるだけだよ。」

「そうなんだ、僕も食べ過ぎない方がいいかな?」

ポコッと出たお腹を擦る

「いや、彼方は筋肉をつけた方が良いから今のままで良いよ。体質的に動いた分食べないとすぐ痩せちゃうからね」

「確かに…栄養面も考えながら食べるよ」

志野さんと頼さんも食べ終え次はどこに行こうかと4人で話していると後ろから声をかけられた

「あら!4人揃って買い物?」

頼さんの顔が歪むのを見て後ろを振り返ると、いつも頼さんにアプローチしている女性だった

彼女は映画の衣装担当の1人で、日本が凄く好きらしい
だから頼さんに言い寄っているみたいなんだけど、彼女には2歳の子供と旦那さんもいるらしい
ただ旦那さんとは、上手くいっていないみたいで、次の相手を探していると本人が言っていた

頼さんと結婚できたら日本の永住権を取得して日本で暮らしたいらしい
大好きな日本で、好みの日本人男性と再婚できれば、彼女にとっては良いことなんだろうけど、僕は正直打算的すぎて嫌いなタイプだ

僕だけじゃなく、他の皆も同じだろう
皆嫌悪感を隠しもしていない

「何か用か?」

頼さんが睨みながら問う

「特に用って訳じゃないけど、暇なら私とデートしましょ?」

頼さんの方へ歩きながらそんなことを言う

頼さんはすぐさま隣に居た志野さんを抱き寄せた

「俺達Wデート中なのが見えないの?俺には最愛の伴侶がいるって知ってるだろ。デートしたければ自分の旦那とデートしろよ。」

頼さんは大きな声で拒絶する

すると周りの人達が何事かとこちらを見始めた

「毎回仕事場でアプローチしてくるけどさ、旦那も子供も居て何でそんなことができるわけ?
俺にも愛する伴侶がいるんだから、凄く迷惑なんだよ。」

頼さんの言葉に、周りの人達の冷たい視線が彼女に突き刺さる

「で…っでも、貴方達普段はそっけなくしてるじゃない。愛してるなんて嘘でしょ?愛してるならスキンシップくらいするはずよ。」

やはりジャックの言う通りだった

「日本人は人前でスキンシップはほとんどしないんだよ。照れるのもあるけど、人前でイチャつくのは非常識って見られるからな。」

「…じゃあなぜ今は抱き寄せてるのよ?」

悔しそうな顔の彼女に、頼さんはニヤリと笑う

「お前みたいな勘違い女が居るって教えてもらったんだ。アメリカではスキンシップしてないと不仲だと思われるってね。
志野は照れ屋だから、いつも触れたいのを我慢してたけど、ここは日本じゃないしアメリカンスタイルでいこうと思ってね。」

頼さんはそう言って、志野さんの米神にチュッとキスをする

志野さんは頬を赤らめて、えへへっと照れ笑いすると、周りの人達が「可愛い~」「ちゃんと愛し合ってるじゃない」とか「日本人は奥ゆかしいと聞くもんなぁ」とかコソコソと話している


「にしても、お前子供はどうしたんだ?たまの休みくらい男漁りしてないで子供の相手してやれよ」

ごもっともである

僕達の視線に堪えきれなくなったのか、彼女は何も言わず足早に去っていった

「やっぱジャックの言った通りだったな。志野、恥ずかしいかもしれないけど、これからは俺我慢しねぇから。」

頼さんが宣言するように言う

「でも…」

「現場の人達だって、俺達が結婚してることは知ってるんだから大丈夫だよ。何か言ってきたら返り討ちにしてやるから安心しろ。」

また志野さんにキスをしてにっこり笑う頼さんは、後日アプローチしてきた人達や志野さんを攻撃した人達を返り討ちにしていた

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