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ドラゴン
しおりを挟む「次の依頼はこれだ。」
ライルが冒険者ギルドで渡された依頼書を広げて見せてくる。その内容を見た私は、一瞬言葉を失った。
「ドラゴンの目撃情報を調査し、危険がある場合は対処せよ」
「えええええ! ドラゴン!? 無理無理無理!」
私は全力で首を振る。だってドラゴンって、あの空を飛ぶ巨大なモンスターでしょ? 普通の冒険者じゃ倒せないって聞いてるのに!
「大丈夫だ、調査だけだ。戦うわけじゃない。」
「でも調査中に襲われたらどうするの?」
「その時は逃げる。」
ライルは冷静だけど、私は全然落ち着けない。
「……報酬は?」
「金貨100枚だ。」
「行きます!」
そう、冒険者たるもの、報酬には逆らえないのだ!
私たちは依頼に記された山の奥へと向かった。その場所は「霧深き竜の谷」と呼ばれている、冒険者たちの間でも有名な場所だった。
「ねえライル、なんでこんな危ない依頼受けちゃったの?」
「お前が『報酬がいいなら行く』って言ったからだろう。」
「そ、それは……お金は大事だから!」
風呂敷をしっかり抱えながら、私は震える足を引きずって山道を進む。
「しかし、ドラゴンなんて本当にいるのかな?」
「目撃情報がある以上、可能性は高い。」
「できればいない方がいいんだけど……」
そんな話をしているうちに、谷に近づくと、空気が一気に冷たくなった。
「なんか、雰囲気が変わったね。」
「気を引き締めろ。」
ライルの言葉に頷き、私は身を潜めながら進む。
谷底に近づくと、大きな影が視界に入った。それは巨大な翼を持ち、鱗がキラキラと輝くドラゴンだった!
「うわ、本当にいる!」
私は小声で叫びながら、風呂敷を握りしめる。
「静かにしろ。気づかれるぞ。」
ライルが注意してくれるけど、あの大きさを目の当たりにすると心臓がバクバクして落ち着けない。
「どうする? どうするの? 戦うの?」
「戦うわけないだろう。ただの調査だ。」
「でも、もし襲ってきたら?」
「その時は……」
ライルが何か言おうとした瞬間、ドラゴンの大きな瞳がこちらを向いた。
「バレたーーー!」
ドラゴンと対面!
ドラゴンはゆっくりとこちらに近づいてきた。その大きさに圧倒され、私は思わず後ずさりする。
「おい、人間の子よ。何用だ?」
まさかの、ドラゴンが話しかけてきた!
「えっ、しゃ、しゃべれるの?」
「ふむ、人間にしては驚かないのだな。」
いや、めちゃくちゃ驚いてるけど、声が出ないだけだよ!
「我が名はエルドラス。この谷を住処としているドラゴンだ。」
「ど、どうも、こんにちは。リリィです……」
「ライルだ。」
ライルが平然と名乗るのを見て、私は少しだけ落ち着きを取り戻す。
「お前たちは何者だ?」
「冒険者ギルドからの依頼で、ドラゴンが危険かどうか調査に来た。」
ライルが正直に答えると、エルドラスはクスリと笑った。
「ほう、人間は私を恐れるだけでなく、調査をするようになったのか。」
エルドラスは「まあよい、少し話そう」と言って、私たちを谷底にある洞窟へと招いた。
「ここが私の住処だ。好きにくつろぐがいい。」
洞窟の中は驚くほど居心地が良く、暖炉まであった。
「なんでドラゴンがこんな人間っぽい暮らしをしてるの?」
「長い年月の中で、こうするのが楽だと気づいたのだ。」
そう言ってエルドラスが差し出したのは、なんとお茶とクッキーだった。
「ドラゴンがお茶会を開くなんて、誰が信じるの……?」
「ふむ、私の本当の姿を知る者は少ないからな。」
エルドラスとお茶を飲みながら、私たちは話を続けた。
「実は最近、人間たちが私の住処に近づくようになって困っている。」
「それで目撃情報が増えたのか。」
ライルが納得したように頷く。
「だからといって、私は何もしていない。ただ静かに暮らしたいだけだ。」
エルドラスはため息をつきながらそう言った。
「じゃあ、どうして人間がここに来るようになったの?」
「理由はわからぬ。だが、お前たちが調べるつもりなら、協力してもよい。」
エルドラスの提案を受け、私たちは谷の周辺を調べることにした。
谷を調査していると、人間の足跡を発見した。
「これは……盗賊のものか?」
「違う、これは狩人のものだな。」
どうやら最近、ドラゴンを狩ろうとする人間たちが現れたらしい。それが原因で目撃情報が増えたのだ。
「ドラゴンを狩るなんて、無謀すぎるでしょ!」
「だが、狩人たちはそれを名誉だと考えている。」
ライルが真剣な顔で答える。
「それじゃあ、私たちが狩人を止めなきゃ!」
「簡単ではないぞ。」
「大丈夫、風呂敷があるから!」
狩人たちのキャンプに潜入した私たちは、風呂敷を使って彼らの計画を台無しにした。
「これでドラゴンを狙うのは無理ね!」
「まさかこんなやつらに邪魔されるとは……!」
狩人たちは悔しそうに去っていった。
エルドラスに報告すると、彼は満足そうに頷いた。
「助かった。これでしばらくは平穏に暮らせるだろう。」
「もう人間が来ないように気をつけてね!」
「ふむ、お前たちのような冒険者がいるなら安心だ。」
こうして私たちはドラゴンを守るという大仕事を成し遂げ、ギルドに戻ることになった。
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