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マダム・マリエールの遺産
第2章 宇宙海賊のクセに探偵の真似事をするはめに 4
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買い出しも済んでタナトスへ戻った俺は、とりあえずトーマに聞いてみた。
ちなみに、さっき俺が壊したアンドロイドは、もう一度何でも屋へ入って、売ってしまった。
このくらいの労賃は貰っても文句はあるまい。
「ところでトーマ。こないだ、ちらっと思いついて、聞いてみようと思ってた事があるんだけどさ」
そんな出だしの言葉だ。
「シュタイナー博士の研究所へ、魅惑の花を運ぶ理由を、お前知ってるんじゃないのか?」
なんでそう思うかと言うと、博士の秘書用人形を作ったのがトーマなら、当然その理由を、知っていてもよさそうだと思ったのだった。
「医療用ってことは間違いないとなると……博士が病気とか? あの研究所じゃしょっちゅう怪我人が出るとか」
俺がそう言うと、トーマは頷いた。
「シュタイナー博士に使用される医療用再生液のはずです」
「やっぱり、知ってるんだな」
俺はにやりと笑って、「やっぱり病気?」と聞いた。
今度はトーマは首を横に振った。
「いいえ。確認をしたわけではありませんが、おそらく彼はクローンです」
俺は目を瞬いた。
最初、トーマの言った言葉が、何のことか分からなかった。
思考はゆっくりと彼の言葉を噛み砕き、俺の脳に伝えてくれた。
クローン?
クローンだって? それはいったい何を現す言葉だったっけ?
俺の沈黙は短かった。突然椅子から身を起こした時には、思わず「嘘だろ!」と叫んでいた。
「クローンってのは、アレだろ? 人間の細胞を増殖させて、オリジナルと全く同じコピー人間を作っちまうっていう……」
『けれどあれは、眉ツバでしょ? 過去に実験はされたけど、実現はしなかったはずでは……』
俺が思った通りの言葉を、タナトスが代わりに言ってくれた。
だが俺達の驚きをよそに、トーマは至って平常通りに言った。
「いまだに実用段階には入っていませんが、研究は続けられています。私が志織を作ったのは、作成されたクローンの身の回りの世話を含む、秘書兼ボディガードとしてですから」
「つまり志織を所有している博士は、当然クローンのはず……ってわけ?」
「クローン研究についての経緯はご存じですか」
俺は首を横に振った。
「もともとクローニングの研究は、欠損した人間の器官を補うことを目的とした、医療研究から始まったものです。
皮膚移植や臓器移植の場合、ドナーから提供されたものでは、拒否反応等が多く出て、手術の成功例が少ないですからね。
それを補おうと、人工(機械)臓器などを使う研究が進められたわけですが、当時から既にあった細胞増殖技術を、これらに生かせないかという研究も、同時にスタートしました。
ところが、当初のクローン研究は、あまり見通しの明るいものではありませんでした。
というのも、採取した細胞を増殖させると、採取した部分の細胞しか増殖しないのです。
つまり心臓の一部の細胞を使って増殖すると、心臓の一部しか出来ないのです。
……これでは、実用は不可能ですね。
心臓全部のクローンを作ろうとすると、本物の心臓を全部使わないといけないわけですから。
それで今度は、細胞のDNAを取り出して、それに基づいて細胞を増殖させていくタイプの研究が始まりました。
この時から、完全な意味での『クローン』ではなくなったわけです。
おかげで最初の方法の欠点は克服されたのですが、ですがこの方法にも、欠点は存在しました。
出来上がった細胞の寿命が極端に短いのです。
簡単に言ってしまえば、クローン培養された細胞は、自己活動をしていませんから、すぐに腐ってしまうのです。
丁度この頃、連邦正暦が始まり、研究は連邦政府に引き継がれました。
連邦でのクローン研究は、作成されたクローン臓器の寿命を、伸ばすことに費やされました」
「あれ? でも医療再生処置は、連邦が出来る前から実用されていなかったっけ?」
「はい。その場合は、皮膚細胞などはすぐに定着してくれますから。問題はクローン臓器が、単体で存在し続けることが難しいということです」
成ぁーる程。
人間の体に心臓を埋め込んだら、ちゃんとあたりまえに動いてくれるけど、心臓だけじゃあ、動こうにも動きようがないもんな。
「人間全身のクローンを作成しても、そのままではただの死体と同じなのです。細胞が活動しないのですから。クローン人間の定義というのは……」
『オリジナルの人間とまったく同じ人間、ですよね』
トーマは頷いた。
「そうです。医療用の細胞増殖技術では、出来上がるクローンは、オリジナルとまったく同じ、死体です。生きてはいないのです」
げえ。そりゃ、たまらんな。
「だからクローン人間を作るっていうのは、失敗に終わったんじゃないのか?」
「いいえ。現在のクローン作成技術は、医療用のそれとは、まったく別の理論から実践されています。つまり、人工人間と同じ作成方法によって」
俺はソーニャの方に首をねじ向けた。
「もともと人形の作成技術は、クローン作成技術から派生したものです。
クローンの場合は、オリジナルのDNAに寿命決定因子等、色々改良を加えなければいけませんから問題が多いのですが、すべてが人工DNAで構成される人形は、却って制御が簡単で、クローンよりも先に実用段階に入ってしまいました。
幸いDNAに人工的に改良を加える技術は、連邦初期の植民地やマジシャンなどの『ミュー』から採った実験データがかなり揃っているので、ただひとつの点を覗いて、クローン研究は完成された状態です」
「問題点って?」
「寿命です。作成されたクローン人間の寿命は極端に短いのです。
理由は解明されていませんが、細胞を構成する組織が、自己崩壊を起こしてしまいます。
つまり……細胞が、一つ一つバラバラになってしまうのです。
この問題はかなり改善されたのですが、それでもクローン人間の寿命は、成人するまで培養液の中で育てられた後、初めて外に出たとして、三日が限度です」
「でもそれじゃ、おかしいんじゃないか? シュタイナー博士の歳って、少なくとも三日じゃないはずだ」
「培養液の中で、一日の四分の三を過ごす生活を続ければ、三十年くらいまで伸ばせるでしょう…」
「あれ? でも志織は百年以上前に作ったんだろ? そうすると博士もそれくらい生きてるはずじゃないのか」
「いいえ。私が志織を作った時点での彼女の所有者は、シュタイナー博士ではありませんでした。彼女は何代ものクローンに仕えているのでしょう。さらに、そうやって創り出されたクローンは、オリジナルとは似ても似つかない外見をしています」
「ええ? ホントか、それ」
「顔の造形は個人が歩んできた人生に左右されます。
二人の人間がまったく同じ人生を過ごしたとしても、両者の感情や考え方、事象の受けとめ方に差があるので、同じ顔にはなりません。
クローンはDNAはオリジナルと同じでも、同じ人生を経験していませんから」
俺は驚くやら感心するやらで、ため息をついた。ところがさらにとどめを刺すように、トーマが一言付け加える。
「おそらくシュタイナー博士は、同じDNAを基に作られた、何十代目かのクローンであり、志織はずっと、そのクローンの実験データをとり続けているはずです」
『……そう言えば……。歴代の連邦から輩出された、功績を残した機械工学博士って、みんな若死になんですよね。
二十歳とか三十歳とか、学者リストに載ってる年数が五年から十五年程度で。
……あの部門は、呪われてるんじゃないかって、噂もあるくらいですけど』
お前、そんなことまで基礎データを持っているのか。
『もしかしなくても、それって皆、同一人物のクローン人間?』
「オリジナルはおそらく、宇宙開拓創世期に存在した有名な工学博士の、グランスナー博士あたりではないでしょうか。彼の冷凍細胞が、連邦に保存されているというリストを、見たことがありあます」
つ、ついていけない世界だ!
たった一人の学者が、三万年も、分野最先端を独走し続けたってか?
でもなんか、ムカついてもきた。
つまりそれじゃぁ、「シュタイナー博士」っていう人間は、存在していないのと同じってことじゃないのか? そして歴代のクローンも。
前から思ってたことだけど、トーマにしたって、ちゃんとした本物の(人工人間じゃないという意味だ)人間なのに、どうして連邦法では、人間ではなく兵器として規定されているんだろう。
確かに、戦争に用いられるというマジシャンの主な用途を考えれば、非人間的な扱いは当然かも知れない。
彼らは仕事の為に惑星ひとつ丸ごと、そこに住む一般人を含めて、無差別に殺してしまう。
戦犯扱いされれば、必ず処刑判決だ。
だが彼らを兵器と規定しておけば、たとえマジシャンの所属する国が戦争に負けても、誰も兵器に罪を問うことなんてしない。
例えば銃で人を殺してしまったとして、いったいどこの世の中に、「殺人を犯したのは人間ではなく、彼が握っていた銃だ!」という国があると思う?
殺人者は、その銃を使った人間なのだ。
だから、兵器であって人間ではないマジシャンを使って戦争をした国に、責任が問われることになる。
それは分かる。
でも、人形には普通、疑似人格がプログラムされているが、本当は自己の人格を持っているんじゃないだろうか?
だって、クローンのシュタイナー博士には、自己人格が備わっているんだろう?
この問題はどうにも難しく、頭が混乱してきた。
俺個人の意見としては、疑似人格だろうとそうでなかろうと、自分が気に入った相手なら、ダチだと思うんだが。
その方が簡単でいいじゃないか。
「きっと、マダムが俺に言いたかった事は、博士と何か関係があるんだろうな」
溜息混じりに俺が言うと、トーマが、意味ありげな目で俺を見た。
「あっ! なんだ、その目は? 言うな! 言うなよ!? それ以上言うなっ!!」
俺が慌てて遮ると、トーマはいつものポーカーフェイスで椅子から立ち上がった。なんでもない風を装ってはいるが、きっと吹き出したかったに違いない。
記憶の中の少女がにっこりと笑う。
いたずらっぽい微笑だ。出合った頃のテレーズ・フォン・マリエール。
トーマとも同じ事件で会った。だからあいつと俺の係わりもバレまくりだ。
自分の死後、よくもここまで人を翻弄してくれるもんだと、俺はあいつに愚痴を言いたい気分になった。
第2章 終
ちなみに、さっき俺が壊したアンドロイドは、もう一度何でも屋へ入って、売ってしまった。
このくらいの労賃は貰っても文句はあるまい。
「ところでトーマ。こないだ、ちらっと思いついて、聞いてみようと思ってた事があるんだけどさ」
そんな出だしの言葉だ。
「シュタイナー博士の研究所へ、魅惑の花を運ぶ理由を、お前知ってるんじゃないのか?」
なんでそう思うかと言うと、博士の秘書用人形を作ったのがトーマなら、当然その理由を、知っていてもよさそうだと思ったのだった。
「医療用ってことは間違いないとなると……博士が病気とか? あの研究所じゃしょっちゅう怪我人が出るとか」
俺がそう言うと、トーマは頷いた。
「シュタイナー博士に使用される医療用再生液のはずです」
「やっぱり、知ってるんだな」
俺はにやりと笑って、「やっぱり病気?」と聞いた。
今度はトーマは首を横に振った。
「いいえ。確認をしたわけではありませんが、おそらく彼はクローンです」
俺は目を瞬いた。
最初、トーマの言った言葉が、何のことか分からなかった。
思考はゆっくりと彼の言葉を噛み砕き、俺の脳に伝えてくれた。
クローン?
クローンだって? それはいったい何を現す言葉だったっけ?
俺の沈黙は短かった。突然椅子から身を起こした時には、思わず「嘘だろ!」と叫んでいた。
「クローンってのは、アレだろ? 人間の細胞を増殖させて、オリジナルと全く同じコピー人間を作っちまうっていう……」
『けれどあれは、眉ツバでしょ? 過去に実験はされたけど、実現はしなかったはずでは……』
俺が思った通りの言葉を、タナトスが代わりに言ってくれた。
だが俺達の驚きをよそに、トーマは至って平常通りに言った。
「いまだに実用段階には入っていませんが、研究は続けられています。私が志織を作ったのは、作成されたクローンの身の回りの世話を含む、秘書兼ボディガードとしてですから」
「つまり志織を所有している博士は、当然クローンのはず……ってわけ?」
「クローン研究についての経緯はご存じですか」
俺は首を横に振った。
「もともとクローニングの研究は、欠損した人間の器官を補うことを目的とした、医療研究から始まったものです。
皮膚移植や臓器移植の場合、ドナーから提供されたものでは、拒否反応等が多く出て、手術の成功例が少ないですからね。
それを補おうと、人工(機械)臓器などを使う研究が進められたわけですが、当時から既にあった細胞増殖技術を、これらに生かせないかという研究も、同時にスタートしました。
ところが、当初のクローン研究は、あまり見通しの明るいものではありませんでした。
というのも、採取した細胞を増殖させると、採取した部分の細胞しか増殖しないのです。
つまり心臓の一部の細胞を使って増殖すると、心臓の一部しか出来ないのです。
……これでは、実用は不可能ですね。
心臓全部のクローンを作ろうとすると、本物の心臓を全部使わないといけないわけですから。
それで今度は、細胞のDNAを取り出して、それに基づいて細胞を増殖させていくタイプの研究が始まりました。
この時から、完全な意味での『クローン』ではなくなったわけです。
おかげで最初の方法の欠点は克服されたのですが、ですがこの方法にも、欠点は存在しました。
出来上がった細胞の寿命が極端に短いのです。
簡単に言ってしまえば、クローン培養された細胞は、自己活動をしていませんから、すぐに腐ってしまうのです。
丁度この頃、連邦正暦が始まり、研究は連邦政府に引き継がれました。
連邦でのクローン研究は、作成されたクローン臓器の寿命を、伸ばすことに費やされました」
「あれ? でも医療再生処置は、連邦が出来る前から実用されていなかったっけ?」
「はい。その場合は、皮膚細胞などはすぐに定着してくれますから。問題はクローン臓器が、単体で存在し続けることが難しいということです」
成ぁーる程。
人間の体に心臓を埋め込んだら、ちゃんとあたりまえに動いてくれるけど、心臓だけじゃあ、動こうにも動きようがないもんな。
「人間全身のクローンを作成しても、そのままではただの死体と同じなのです。細胞が活動しないのですから。クローン人間の定義というのは……」
『オリジナルの人間とまったく同じ人間、ですよね』
トーマは頷いた。
「そうです。医療用の細胞増殖技術では、出来上がるクローンは、オリジナルとまったく同じ、死体です。生きてはいないのです」
げえ。そりゃ、たまらんな。
「だからクローン人間を作るっていうのは、失敗に終わったんじゃないのか?」
「いいえ。現在のクローン作成技術は、医療用のそれとは、まったく別の理論から実践されています。つまり、人工人間と同じ作成方法によって」
俺はソーニャの方に首をねじ向けた。
「もともと人形の作成技術は、クローン作成技術から派生したものです。
クローンの場合は、オリジナルのDNAに寿命決定因子等、色々改良を加えなければいけませんから問題が多いのですが、すべてが人工DNAで構成される人形は、却って制御が簡単で、クローンよりも先に実用段階に入ってしまいました。
幸いDNAに人工的に改良を加える技術は、連邦初期の植民地やマジシャンなどの『ミュー』から採った実験データがかなり揃っているので、ただひとつの点を覗いて、クローン研究は完成された状態です」
「問題点って?」
「寿命です。作成されたクローン人間の寿命は極端に短いのです。
理由は解明されていませんが、細胞を構成する組織が、自己崩壊を起こしてしまいます。
つまり……細胞が、一つ一つバラバラになってしまうのです。
この問題はかなり改善されたのですが、それでもクローン人間の寿命は、成人するまで培養液の中で育てられた後、初めて外に出たとして、三日が限度です」
「でもそれじゃ、おかしいんじゃないか? シュタイナー博士の歳って、少なくとも三日じゃないはずだ」
「培養液の中で、一日の四分の三を過ごす生活を続ければ、三十年くらいまで伸ばせるでしょう…」
「あれ? でも志織は百年以上前に作ったんだろ? そうすると博士もそれくらい生きてるはずじゃないのか」
「いいえ。私が志織を作った時点での彼女の所有者は、シュタイナー博士ではありませんでした。彼女は何代ものクローンに仕えているのでしょう。さらに、そうやって創り出されたクローンは、オリジナルとは似ても似つかない外見をしています」
「ええ? ホントか、それ」
「顔の造形は個人が歩んできた人生に左右されます。
二人の人間がまったく同じ人生を過ごしたとしても、両者の感情や考え方、事象の受けとめ方に差があるので、同じ顔にはなりません。
クローンはDNAはオリジナルと同じでも、同じ人生を経験していませんから」
俺は驚くやら感心するやらで、ため息をついた。ところがさらにとどめを刺すように、トーマが一言付け加える。
「おそらくシュタイナー博士は、同じDNAを基に作られた、何十代目かのクローンであり、志織はずっと、そのクローンの実験データをとり続けているはずです」
『……そう言えば……。歴代の連邦から輩出された、功績を残した機械工学博士って、みんな若死になんですよね。
二十歳とか三十歳とか、学者リストに載ってる年数が五年から十五年程度で。
……あの部門は、呪われてるんじゃないかって、噂もあるくらいですけど』
お前、そんなことまで基礎データを持っているのか。
『もしかしなくても、それって皆、同一人物のクローン人間?』
「オリジナルはおそらく、宇宙開拓創世期に存在した有名な工学博士の、グランスナー博士あたりではないでしょうか。彼の冷凍細胞が、連邦に保存されているというリストを、見たことがありあます」
つ、ついていけない世界だ!
たった一人の学者が、三万年も、分野最先端を独走し続けたってか?
でもなんか、ムカついてもきた。
つまりそれじゃぁ、「シュタイナー博士」っていう人間は、存在していないのと同じってことじゃないのか? そして歴代のクローンも。
前から思ってたことだけど、トーマにしたって、ちゃんとした本物の(人工人間じゃないという意味だ)人間なのに、どうして連邦法では、人間ではなく兵器として規定されているんだろう。
確かに、戦争に用いられるというマジシャンの主な用途を考えれば、非人間的な扱いは当然かも知れない。
彼らは仕事の為に惑星ひとつ丸ごと、そこに住む一般人を含めて、無差別に殺してしまう。
戦犯扱いされれば、必ず処刑判決だ。
だが彼らを兵器と規定しておけば、たとえマジシャンの所属する国が戦争に負けても、誰も兵器に罪を問うことなんてしない。
例えば銃で人を殺してしまったとして、いったいどこの世の中に、「殺人を犯したのは人間ではなく、彼が握っていた銃だ!」という国があると思う?
殺人者は、その銃を使った人間なのだ。
だから、兵器であって人間ではないマジシャンを使って戦争をした国に、責任が問われることになる。
それは分かる。
でも、人形には普通、疑似人格がプログラムされているが、本当は自己の人格を持っているんじゃないだろうか?
だって、クローンのシュタイナー博士には、自己人格が備わっているんだろう?
この問題はどうにも難しく、頭が混乱してきた。
俺個人の意見としては、疑似人格だろうとそうでなかろうと、自分が気に入った相手なら、ダチだと思うんだが。
その方が簡単でいいじゃないか。
「きっと、マダムが俺に言いたかった事は、博士と何か関係があるんだろうな」
溜息混じりに俺が言うと、トーマが、意味ありげな目で俺を見た。
「あっ! なんだ、その目は? 言うな! 言うなよ!? それ以上言うなっ!!」
俺が慌てて遮ると、トーマはいつものポーカーフェイスで椅子から立ち上がった。なんでもない風を装ってはいるが、きっと吹き出したかったに違いない。
記憶の中の少女がにっこりと笑う。
いたずらっぽい微笑だ。出合った頃のテレーズ・フォン・マリエール。
トーマとも同じ事件で会った。だからあいつと俺の係わりもバレまくりだ。
自分の死後、よくもここまで人を翻弄してくれるもんだと、俺はあいつに愚痴を言いたい気分になった。
第2章 終
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