王太子妃の器ではないと言われましたが、帝国の未来そのものでした

鍛高譚

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29話

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アルベルトとカトリーナの暴走

 そうしたフローラの思いとは裏腹に、王国では不穏な動きがさらに加速していた。
 王太子アルベルトと正妃カトリーナは、ラグナ帝国との交渉に失敗したことを覆い隠そうと、 「実は我々がうまく立ち回っている」 と嘘の情報を国内に流している。
 だが実際には、すでに仮調印を結んだ条約案により、王国は帝国に莫大な関税と領土の一部移譲を迫られている。しかも、それを国民に公表すれば、瞬く間に不満が噴出し、アルベルトの地位が危うくなるのは必至だ。
 そこでアルベルトとカトリーナは、宮廷の重臣をある程度買収し、極力情報を隠蔽しようと腐心していたが、それは「さらなる国庫の浪費」「特定の貴族だけ優遇する政策」などにつながり、結果として王国の衰退をますます加速させている。
 そこに輪をかけるように、王国の各地で小規模な反乱や盗賊被害が頻発し始めた。「王太子政権では国が守れない」と見なされ、国王夫妻ももはや高齢でまともに対応できない。
 ――つまり、王国は内憂外患の極みにありながら、アルベルトたちがその現実を直視せずにいるため、破滅へと転がり落ちているのである。

 この状況に焦りを覚えた一部の大貴族や有力者は、「もはやアルベルトでは国がもたない。何とかしてラグナ帝国に取り入らなければ」との考えを強めていた。その中には、先の特使として帝国に赴いた リヴェール公爵 も含まれている。
 公爵は帰国後、娘フローラが皇太子妃候補として優遇されている事実を知るや否や、一転して「フローラに取り入ることで自分の家を救おう」と必死になっているのだが、当のフローラがラグナ帝国で何を考え、どう行動しているのか、まったく把握できていない。
 そうこうしているうちに、王国の混乱は本格的な危機へと発展。いずれ、ラグナ帝国が何らかの形で軍事介入してもおかしくない――そう噂されるまでに至っていた。
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