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30話
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皇帝の決断と、二つの訪問者
ラグナ帝国の皇帝は、この情勢を見て明確な方針を固めた。
「王国が自壊するなら放置してもよいが、我が国との条約に違反したり、国境地帯の不安定化が進むなら、積極的に動かねばならん。……早いうちに王国の状況を探っておく必要があるだろう」
それは、王国に対して一定の「管理」を及ぼすという意思表示でもあった。なにしろ、ラグナ帝国の国益を守るためには、王国の無秩序な暴走を黙って見過ごすわけにはいかない。
皇太子クラウスも父帝の方針に賛同し、早期の偵察や調停を目的とした “使節団” を派遣する計画が練られ始める。しかし、その要となる人物――つまり、ラグナ帝国の威光を示しつつ、王国の内実に通じている者が必要だ。
そう、フローラ・フォン・リヴェールが適任なのではないか――という案が、必然的に浮上した。
だが、その話が正式に固まるより先に、皇宮にふたつの 「訪問者」 が現れた。
一人目は、王国の混乱に辟易したある 有力貴族 で、密かに亡命を希望しているという。亡命といっても、本当にラグナ帝国へ忠誠を誓うのかどうかは微妙なところだが、「アルベルトには見切りをつけたので、ラグナ帝国に庇護を求めたい」という趣旨の申し出を携えてきたらしい。
もう一人は、先の特使団の一人であり、フローラを冷遇していた貴族――そして、リヴェール公爵とも関わりが深い男。こちらは 「再びフローラと直接話をしたい」 と求めてきたという。
どちらも、王国が崩壊の淵で足掻いている様子を象徴する動きだ。フローラはその報告を受けて、心がざわつくのを感じた。
「……また、わたくしに会いたい、ですか。何を今さら……」
正直なところ、会う価値があるのかすら疑問だ。だが、クラウスはフローラの胸中を慮りつつ、こう提案する。
「もしお前が嫌なら断ってもいい。だが、彼らが何を言いたいのか確かめるのも、ひとつの方法かもしれない。王国がどれほど追い込まれ、何を望んでいるのか――直接聞いたほうが、これからの動きにも役立つだろう」
フローラは少し考え込み、やがて小さく頷いた。
「そう……ですね。わたくしも、自分の気持ちを確かめたい。逃げてばかりでは、いつまでも同じ場所に留まってしまいますから」
ラグナ帝国の皇帝は、この情勢を見て明確な方針を固めた。
「王国が自壊するなら放置してもよいが、我が国との条約に違反したり、国境地帯の不安定化が進むなら、積極的に動かねばならん。……早いうちに王国の状況を探っておく必要があるだろう」
それは、王国に対して一定の「管理」を及ぼすという意思表示でもあった。なにしろ、ラグナ帝国の国益を守るためには、王国の無秩序な暴走を黙って見過ごすわけにはいかない。
皇太子クラウスも父帝の方針に賛同し、早期の偵察や調停を目的とした “使節団” を派遣する計画が練られ始める。しかし、その要となる人物――つまり、ラグナ帝国の威光を示しつつ、王国の内実に通じている者が必要だ。
そう、フローラ・フォン・リヴェールが適任なのではないか――という案が、必然的に浮上した。
だが、その話が正式に固まるより先に、皇宮にふたつの 「訪問者」 が現れた。
一人目は、王国の混乱に辟易したある 有力貴族 で、密かに亡命を希望しているという。亡命といっても、本当にラグナ帝国へ忠誠を誓うのかどうかは微妙なところだが、「アルベルトには見切りをつけたので、ラグナ帝国に庇護を求めたい」という趣旨の申し出を携えてきたらしい。
もう一人は、先の特使団の一人であり、フローラを冷遇していた貴族――そして、リヴェール公爵とも関わりが深い男。こちらは 「再びフローラと直接話をしたい」 と求めてきたという。
どちらも、王国が崩壊の淵で足掻いている様子を象徴する動きだ。フローラはその報告を受けて、心がざわつくのを感じた。
「……また、わたくしに会いたい、ですか。何を今さら……」
正直なところ、会う価値があるのかすら疑問だ。だが、クラウスはフローラの胸中を慮りつつ、こう提案する。
「もしお前が嫌なら断ってもいい。だが、彼らが何を言いたいのか確かめるのも、ひとつの方法かもしれない。王国がどれほど追い込まれ、何を望んでいるのか――直接聞いたほうが、これからの動きにも役立つだろう」
フローラは少し考え込み、やがて小さく頷いた。
「そう……ですね。わたくしも、自分の気持ちを確かめたい。逃げてばかりでは、いつまでも同じ場所に留まってしまいますから」
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