冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚

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第3章 嫉妬する旦那様と政略結婚の崩壊

17話

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 広い廊下を歩き、エヴァンティア邸の庭へ出ると、冬枯れした木々と刈り込まれた低木が視界に広がる。確かに懐かしい場所ではあるが、今のリゼットにとってはあまり居心地のいい空間ではなくなっていた。
「ねえ、リゼット。久しぶりに会ったけど……相変わらず綺麗だな。侯爵家に嫁いだって聞いて、本当に驚いたよ。僕たちは幼い頃から知っている仲なのに、最近はほとんど話す機会もなかったし」
 アルヴィンは少し離れたところを歩きながら、やけに親しげな口調で話しかける。

「そうね……私もあなたの消息は、噂でしか知らなかったわ。貴族女性にモテて、いろんな夜会を飛び回っているって」
「ははは、それは言いすぎさ。確かにたくさんの女性とお喋りはするけど、誰か特定の相手がいるわけじゃないしね。……だけど、本当は昔から、リゼットには特別な感情を抱いていたんだよ」

 突然の告白じみた言葉に、リゼットは足を止めた。
「……アルヴィン、やめて。私はもう結婚しているのよ。そういう話は、失礼でしかないわ」
「分かってる。だけど、言わずにいられなかった。僕はずっと後悔していたんだ。もっと早く、君に想いを伝えていれば違ったかもしれないってね。……あんな冷たそうな男に渡してしまうなんて」

 聞き捨てならない言葉に、リゼットは眉をひそめる。アレクシスを侮辱するような口振りに、胸の奥がざわりとした。
「勝手なことを言わないで。アレクシス様は確かに不器用なところもあるかもしれないけれど、私のことをとても大切にしてくれている。あなたが思っているような冷酷な人じゃないわ」
「でもね、リゼット。君は本当に幸せなのかい? 政略結婚で嫁いだって聞いている。家同士の思惑で決まった結婚なら、心までは満たされないんじゃないかと思って……」

 アルヴィンの言葉には、どこか甘やかすような響きがある。まるで「今ならまだ間に合うから、俺のほうへ来ないか?」とでも言いそうな雰囲気だ。それが余計にリゼットを苛立たせた。
「失礼ね。私が幸せかどうかは私が決めることよ。あなたには関係ない」
「……そう言うと思った。でも、もう少し冷静になって考えてみてほしいんだ。君がもしアレクシスとの結婚生活に疲れたり、悲しませられたりする日が来たなら……僕のところへ来てもいいんだよ?」
 そう言い切ると、アルヴィンはにこりと微笑む。その表情は優美で、かつ自信に満ちあふれているように見えた。

 怒りというよりも呆れに近い感情がこみ上げてきたリゼットは、きっぱりと断言する。
「お断りするわ。たとえ何があっても、私はアレクシス様を裏切らない。彼に救われた部分はたくさんあるの」
 それだけ伝え、踵を返して客間へ戻ろうとする。だが、アルヴィンは一歩近づき、リゼットの腕を軽く掴んだ。
「落ち着いて。そんなに怒らないでくれ。僕はただ、君に選択肢があるってことを言いたかっただけさ」
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