当店では真実の愛は取り扱っておりません

鍛高譚

文字の大きさ
9 / 23

9話

しおりを挟む
ココアの動き

 一方その頃。
 ブレンディ公爵家に、あの“腹黒参謀”ことモカ・エスプレッソが再び訪れていた。
 ココアは自室のテーブルに書類を広げながら、モカに向けて報告している。

「ふむふむ。ブラック家、やっぱり強引にクレオ・パステルにアタックしたみたいね」
「ええ。その結果、見事に玉砕されたらしいわ。今朝、ブラック家のカフェがパステル商会に押しかけて、婚約を申し出たとか。でも、クレオさんは即断で拒否したみたい」

 モカの笑い声が漏れる。「あはは、最高ね。あのカフェが平民の娘に振られるなんて、プライドは傷つきまくりでしょうに」

「しかもただの平民じゃなくて、大商会の令嬢よ。貴族以上に権力があるといっても過言ではないわ」

 ココアは書類から視線を上げ、にやりと微笑む。
 実は彼女、すでに色々と根回しを始めているのだ。カフェがクレオに振られたことを知った時点で、「これは面白い展開だわ」と思ったし、クレオの人となりにも興味が湧いてきた。

「それで、どうするの? ココアはクレオさんに直接会ってみたいんでしょう?」

「もちろん。婚約破棄を食らった身としては、ブラック家が次にどんな手を打つかも気になるし。何より、クレオさんとは将来的にビジネスパートナーになれる可能性もあるわ」

 ココアは、モカが調べてくれた“パステル商会の事業概要”や“クレオの人物評”などの資料を読んでいる。そこには「領地開発にも積極的」「商工ギルドと協力関係を築いている」など、興味深い情報が並んでいた。
 貴族としての縛りにうんざりしていたココアにとって、商人の自由闊達な姿は、むしろ魅力的に映る。何より、貴族社会の旧態依然とした慣習を壊すには、商人との連携が効果的だ。

「まずは友好的に接触を図りたいけど、クレオさんがブラック家の件で警戒してるかもしれないのよね」

「そうね。いきなり貴族の令嬢が来たら、『今度はブレンディ公爵家まで変な打算をしてるのかしら?』とか思われるかも」

「そこは私たちの腕の見せ所でしょう? ――モカ、協力してくれる?」

 ココアがそう問うと、モカは楽しげに目を輝かせた。
「もちろん。だってこんな面白い話、途中で抜けるなんて耐えられないもの」

 二人はくすくすと笑い合う。婚約破棄のゴタゴタを単なるトラブルで終わらせず、“新しい風”に変えてやろうという算段だ。
 こうしてココアは、モカの助力を得ながら、クレオと直接会うチャンスを探し始めるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「10歳の頃の想いなど熱病と同じ」と婚約者は言いました──さようなら【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王太子フリードリヒの婚約者として、幼い頃から王妃教育を受けてきたアメリア・エレファウント公爵令嬢。 誰もが羨む未来を約束された彼女の世界は、ある日突然1人の少女の登場によって揺らぎ始める。 無邪気な笑顔で距離を(意図的に)間違える編入生ベルティーユは、男爵の庶子で平民出身。 ベルティーユに出会ってから、悪い方へ変わっていくフリードリヒ。 「ベルが可哀想だろ」「たかがダンスくらい」と話が通じない。 アメリアの積み上げてきた7年の努力と誇りが崩れていく。 そしてフリードリヒを見限り、婚約解消を口にするが話は進まず、学園の卒業パーティーで断罪されてしまう……?! ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています

【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?

ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。 世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。 ざまぁ必須、微ファンタジーです。

侯爵様に婚約破棄されたのですが、どうやら私と王太子が幼馴染だったことは知らなかったようですね?

ルイス
恋愛
オルカスト王国の伯爵令嬢であるレオーネは、侯爵閣下であるビクティムに婚約破棄を言い渡された。 信頼していたビクティムに裏切られたレオーネは悲しみに暮れる……。 しかも、破棄理由が他国の王女との婚約だから猶更だ。 だが、ビクティムは知らなかった……レオーネは自国の第一王子殿下と幼馴染の関係にあることを。 レオーネの幼馴染であるフューリ王太子殿下は、彼女の婚約破棄を知り怒りに打ち震えた。 「さて……レオーネを悲しませた罪、どのように償ってもらおうか」 ビクティム侯爵閣下はとてつもない虎の尾を踏んでしまっていたのだった……。

【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。

虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと
恋愛
21.05.23完結 ーー 「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」 差し伸べられた手をするりとかわす。 これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。 決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。 彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。 だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。 地位も名誉も権力も。 武力も知力も財力も。 全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。 月並みに好きな自分が、ただただみっともない。 けれど、それでも。 一緒にいられるならば。 婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。 それだけで良かった。 少なくとも、その時は。

『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』

鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」 幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された 公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。 その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、 彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。 目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。 だが、中身は何ひとつ変わっていない。 にもかかわらず、 かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、 「やり直したい」とすり寄ってくる。 「見かけが変わっても、中身は同じです。 それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」 静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。 やがて彼女に興味を示したのは、 隣国ノルディアの王太子エドワルド。 彼が見ていたのは、美貌ではなく―― 対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。 これは、 外見で価値を決められた令嬢が、 「選ばれる人生」をやめ、 自分の意思で未来を選び直す物語。 静かなざまぁと、 対等な関係から始まる大人の恋。 そして―― 自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。 ---

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

処理中です...