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第2章 ――ぶどう園を見下ろす丘で――
9話
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帰路――これからの展望と、吹き始める新しい風
ぶどう園の視察を終えた私は、再び馬車に乗り込んで屋敷へと戻る道を進んでいた。ポーランドとの会話や、農民たちの姿は、私の中に大きな刺激を与えてくれた。前世では考えもしなかった「農業経営」や「新規事業」の可能性――そんなキーワードが頭を巡る。
(ジュースやジャム、ぶどうの皮から作る染料なんてのもアリかもしれない。あとは、ぶどう園を観光地として活用するのも面白そう。ワイナリー見学ツアーとか、収穫祭とか……)
そんな妄想を広げているうちに、馬車は幹線道路へと合流し、領都へ向かう道を走り始める。道沿いには行き交う人や馬車が増えてきて、活気ある声が聞こえてくる。露店が軒を連ねるエリアでは、果物やパン、雑貨を売る商人が「いらっしゃい」と呼び込みをしており、庶民たちがそれに応えるように足を止めていた。
「こうして見ると、本当に賑やかな領地だわ」
私は窓を少し開けて外の空気を感じながら呟く。前世の都会の喧噪とはまったく違うが、人々が生き生きと働き、暮らしている様子は見ていて気持ちがいい。道端では笑顔を浮かべる子どもや、仲睦まじい夫婦が歩いている。貴族と平民の身分差があるにせよ、決して彼らが不幸というわけではなさそうだ。
(この領地を、もっと良くできたらいいな)
そう思った矢先、ふと脳裏をかすめるのは「元婚約者」である王太子の顔だ。きっと今ごろ、婚約破棄のことを周囲から責められているかもしれない。王家としてアーデルハイド家とのつながりを断つことがどれだけ不利なのか、考えれば分かることだろう。だが、私はもう関与する気はない。王太子がどんな苦境に陥ろうと、自業自得だと思っている。それに、私自身が「見返してやる!」と復讐心に燃えることもない。そんなエネルギーがあったら、こうして領地を豊かにすることに注ぎたい。
(……まあ、そっちがどう動こうと、私の貴族令嬢ライフは止まらないからね)
そう心の中で呟いた瞬間、くすっと笑みがこぼれた。馬車の揺れも気にならないほど、心が軽い。まさか人生でこんなに自由を感じられる時が来るとは、前世では思ってもいなかった。自分の居場所があり、やりたいことがあり、それを応援してくれる人々がいる――それだけで、生きる意味が大いに満たされる気がする。
屋敷の門が見えてきたころ、私は明日以降の予定を頭の中で組み立て始めた。もう一度ぶどう園に行くのは少し先でもいいとして、次はどんな視察をするか。そういえば、領地にはほかにも畑や牧場があるらしいし、商業地区を詳しく見るのも面白そうだ。商人たちが何を求め、何を不足しているのか調べれば、新しいビジネスチャンスが転がっているかもしれない。
(本当に、ワクワクが止まらないわ。これが、婚約破棄で得た自由……最高じゃない!)
馬車が止まり、御者がドアを開けてくれる。私は階段を一歩ずつ降りて、屋敷の玄関へと向かう。朝出かけたときとはまったく違う心持ちで、この空間に帰ってきた。
玄関先にはマーガレットをはじめとする侍女や使用人が待機しており、私が降り立つと一斉に頭を下げる。
「お帰りなさいませ、お嬢様。いかがでしたか? ぶどう園の視察は……」
マーガレットが探るように聞いてくるのに対し、私は満面の笑みで答えた。
「最高だったわ。みんな熱心だし、ぶどうも生き生きしていて。お土産に摘みたてのぶどうもいただいちゃった。あとでみんなで味わいましょうよ」
「そ、それは楽しみですね……。お嬢様がそんなに生き生きとされたお顔をなさっているのを見るのは、私もうれしいです」
マーガレットはほっとしたように微笑む。ほかの侍女たちも、なんだか安心したように顔を見合わせている。きっと婚約破棄で落ち込んでいるのでは、と思っていたのだろう。私が元気いっぱいなのを確認して、彼女たちも一安心、といったところか。
「そうそう、今日はね、ジュースの話とか、いろいろと新しい試みを考えてみたの。詳しいことは後で話すわ。ああ、それから……そうだわ、せっかくだから近いうちに屋敷で小さな試飲会を開くのも面白そうね」
「試飲会、ですか?」
「そう。ワインだけじゃなく、子どもやお酒を飲めない人向けにもジュースを用意してね。公爵家の関係者を何人か呼んで、実際に味を見てもらえたら、意見も聞けるし、アイデアも膨らむと思わない?」
私の提案に、マーガレットは目を輝かせた。彼女も、この公爵家の一員として何かできることがあればやりたいのだろう。
屋敷の中へと足を踏み入れながら、私は次々とアイデアが湧いてくるのを感じた。前世の私なら、会社の指示やノルマに追われて、こんなふうに自主的に何かを企画することなどなかった。だけど、今は違う。私はこのアーデルハイド領において、(多少は)自由な裁量を持って動ける立場にある。そして幸いにも、協力してくれる仲間がいる。
「今日はこのくらいにするけど、明日はまた別のところに行ってみようかしら。……ねえ、マーガレット、明日の予定ってどうなってる?」
「明日は、午前中は空いていますね。午後からは公爵様が来客をお迎えになるご予定がありますが、お嬢様に直接関わるかどうかは未定です」
「なるほど。じゃあ、午前中にちょっと市場を覗いてみたいわ。領都には大きな市場があったわよね?」
「はい。毎週、定期的に開かれる市があって、多くの商人や近隣の村人が集まります。行ってみる価値はあるかもしれません」
「決まりね。楽しみだわ」
私は晴れやかな気分で廊下を進む。広々とした屋敷の内部は静かで、絵画や花瓶が美しく飾られているが、私の心は次の行動への期待でいっぱいだった。
婚約破棄で空いた穴を嘆くどころか、私は前を向いて進んでいる。この世界で、貴族令嬢レイラとしてできることがたくさんあるはず。前世にはなかったゆとりと希望を胸に、私はここから新しい一歩を踏み出すのだ。
(復讐? そんなこと、する気もないわ。だって――楽しいことがこんなにあるんだもの)
そんな思いがはっきりと胸にあった。
未練がましい元婚約者がどう動こうと、私の知ったことではない。見返しなど考えなくても、私は私の人生をのびのびと歩んでいくだけ。アーデルハイド領の人々とともに、素晴らしいワインと新たな可能性を育んでいこう。
そう、ぶどう園を見下ろす丘で感じた風を忘れはしない。優しく、けれど力強く背中を押してくれるあの風は、私に「自由と豊かさ」をもたらしてくれる兆しのように思えた。
これが、婚約破棄を経た私の、第二の人生の本当の始まり――そう感じながら、私は軽やかに笑みを浮かべる。
ぶどう園の視察を終えた私は、再び馬車に乗り込んで屋敷へと戻る道を進んでいた。ポーランドとの会話や、農民たちの姿は、私の中に大きな刺激を与えてくれた。前世では考えもしなかった「農業経営」や「新規事業」の可能性――そんなキーワードが頭を巡る。
(ジュースやジャム、ぶどうの皮から作る染料なんてのもアリかもしれない。あとは、ぶどう園を観光地として活用するのも面白そう。ワイナリー見学ツアーとか、収穫祭とか……)
そんな妄想を広げているうちに、馬車は幹線道路へと合流し、領都へ向かう道を走り始める。道沿いには行き交う人や馬車が増えてきて、活気ある声が聞こえてくる。露店が軒を連ねるエリアでは、果物やパン、雑貨を売る商人が「いらっしゃい」と呼び込みをしており、庶民たちがそれに応えるように足を止めていた。
「こうして見ると、本当に賑やかな領地だわ」
私は窓を少し開けて外の空気を感じながら呟く。前世の都会の喧噪とはまったく違うが、人々が生き生きと働き、暮らしている様子は見ていて気持ちがいい。道端では笑顔を浮かべる子どもや、仲睦まじい夫婦が歩いている。貴族と平民の身分差があるにせよ、決して彼らが不幸というわけではなさそうだ。
(この領地を、もっと良くできたらいいな)
そう思った矢先、ふと脳裏をかすめるのは「元婚約者」である王太子の顔だ。きっと今ごろ、婚約破棄のことを周囲から責められているかもしれない。王家としてアーデルハイド家とのつながりを断つことがどれだけ不利なのか、考えれば分かることだろう。だが、私はもう関与する気はない。王太子がどんな苦境に陥ろうと、自業自得だと思っている。それに、私自身が「見返してやる!」と復讐心に燃えることもない。そんなエネルギーがあったら、こうして領地を豊かにすることに注ぎたい。
(……まあ、そっちがどう動こうと、私の貴族令嬢ライフは止まらないからね)
そう心の中で呟いた瞬間、くすっと笑みがこぼれた。馬車の揺れも気にならないほど、心が軽い。まさか人生でこんなに自由を感じられる時が来るとは、前世では思ってもいなかった。自分の居場所があり、やりたいことがあり、それを応援してくれる人々がいる――それだけで、生きる意味が大いに満たされる気がする。
屋敷の門が見えてきたころ、私は明日以降の予定を頭の中で組み立て始めた。もう一度ぶどう園に行くのは少し先でもいいとして、次はどんな視察をするか。そういえば、領地にはほかにも畑や牧場があるらしいし、商業地区を詳しく見るのも面白そうだ。商人たちが何を求め、何を不足しているのか調べれば、新しいビジネスチャンスが転がっているかもしれない。
(本当に、ワクワクが止まらないわ。これが、婚約破棄で得た自由……最高じゃない!)
馬車が止まり、御者がドアを開けてくれる。私は階段を一歩ずつ降りて、屋敷の玄関へと向かう。朝出かけたときとはまったく違う心持ちで、この空間に帰ってきた。
玄関先にはマーガレットをはじめとする侍女や使用人が待機しており、私が降り立つと一斉に頭を下げる。
「お帰りなさいませ、お嬢様。いかがでしたか? ぶどう園の視察は……」
マーガレットが探るように聞いてくるのに対し、私は満面の笑みで答えた。
「最高だったわ。みんな熱心だし、ぶどうも生き生きしていて。お土産に摘みたてのぶどうもいただいちゃった。あとでみんなで味わいましょうよ」
「そ、それは楽しみですね……。お嬢様がそんなに生き生きとされたお顔をなさっているのを見るのは、私もうれしいです」
マーガレットはほっとしたように微笑む。ほかの侍女たちも、なんだか安心したように顔を見合わせている。きっと婚約破棄で落ち込んでいるのでは、と思っていたのだろう。私が元気いっぱいなのを確認して、彼女たちも一安心、といったところか。
「そうそう、今日はね、ジュースの話とか、いろいろと新しい試みを考えてみたの。詳しいことは後で話すわ。ああ、それから……そうだわ、せっかくだから近いうちに屋敷で小さな試飲会を開くのも面白そうね」
「試飲会、ですか?」
「そう。ワインだけじゃなく、子どもやお酒を飲めない人向けにもジュースを用意してね。公爵家の関係者を何人か呼んで、実際に味を見てもらえたら、意見も聞けるし、アイデアも膨らむと思わない?」
私の提案に、マーガレットは目を輝かせた。彼女も、この公爵家の一員として何かできることがあればやりたいのだろう。
屋敷の中へと足を踏み入れながら、私は次々とアイデアが湧いてくるのを感じた。前世の私なら、会社の指示やノルマに追われて、こんなふうに自主的に何かを企画することなどなかった。だけど、今は違う。私はこのアーデルハイド領において、(多少は)自由な裁量を持って動ける立場にある。そして幸いにも、協力してくれる仲間がいる。
「今日はこのくらいにするけど、明日はまた別のところに行ってみようかしら。……ねえ、マーガレット、明日の予定ってどうなってる?」
「明日は、午前中は空いていますね。午後からは公爵様が来客をお迎えになるご予定がありますが、お嬢様に直接関わるかどうかは未定です」
「なるほど。じゃあ、午前中にちょっと市場を覗いてみたいわ。領都には大きな市場があったわよね?」
「はい。毎週、定期的に開かれる市があって、多くの商人や近隣の村人が集まります。行ってみる価値はあるかもしれません」
「決まりね。楽しみだわ」
私は晴れやかな気分で廊下を進む。広々とした屋敷の内部は静かで、絵画や花瓶が美しく飾られているが、私の心は次の行動への期待でいっぱいだった。
婚約破棄で空いた穴を嘆くどころか、私は前を向いて進んでいる。この世界で、貴族令嬢レイラとしてできることがたくさんあるはず。前世にはなかったゆとりと希望を胸に、私はここから新しい一歩を踏み出すのだ。
(復讐? そんなこと、する気もないわ。だって――楽しいことがこんなにあるんだもの)
そんな思いがはっきりと胸にあった。
未練がましい元婚約者がどう動こうと、私の知ったことではない。見返しなど考えなくても、私は私の人生をのびのびと歩んでいくだけ。アーデルハイド領の人々とともに、素晴らしいワインと新たな可能性を育んでいこう。
そう、ぶどう園を見下ろす丘で感じた風を忘れはしない。優しく、けれど力強く背中を押してくれるあの風は、私に「自由と豊かさ」をもたらしてくれる兆しのように思えた。
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