婚約破棄?結構ですわ。公爵令嬢は今日も優雅に生きております

鍛高譚

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第五章 ――晩餐会へ至る道、そして新たな未来へ――

20話

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思わぬ助っ人たちとの再会

 そんなバタバタの最中、私のもとを訪ねてくる意外な人々がいた。ひとりは、市場で出会った仕立て屋のデザイナー・ファビアン。そしてもうひとりは、香辛料を扱う行商人のリヴィエール という男だ。どちらも私の計画に協力したいと申し出てくれたのだ。

「レイラお嬢様、お久しぶりです。あの後すぐに、公爵家で行う“試作品づくり”にお力添えできればと思いましてね。私たち“ベルローズ仕立て屋”は主に服飾や布製品ですが、一部の織物に地元の染料を使ってみるプロジェクトも動き始めています。晩餐会に、ほんの少しだけでもサンプルを飾れないでしょうか?」

 ファビアンはそう言って、鮮やかな模様が入った布地を私に見せてくれた。私がハーブや果物の皮、ぶどうの搾りかすなどを使った「自然染め」に興味を示していたことを覚えていて、それを形にしようと試行錯誤してくれたらしい。

「まぁ、すごくいい色……! グラデーションが優しくて、独特の深みがあるわね。これ、もし商品化できれば海外の方も興味を示すかも」

「そうでしょう? もちろんまだ試作段階ですが、どこに売り込むかが大事です。お嬢様の“展示コーナー”にちょっと飾っていただくだけでも、新しい販路が開けるかもしれないと思いまして」

 ファビアンが軽やかにウィンクしてみせる。私はその勢いに乗って「もちろん大歓迎よ!」と快諾した。すると、彼は「ありがとうございます!」と嬉しそうに声を弾ませ、私に請け負っている仕立てのドレスの進捗状況まで説明してくれた。晩餐会では、ぜひ私にも新作ドレスを着てほしいらしい。

「次はリヴィエールさんね」

 続いて応接室へ呼び入れたのは、あのとき市場で香辛料を売っていた、肌の褐色が印象的な行商人のリヴィエールだ。彼は大げさに両手を広げて、「レイラお嬢様!」と感激の調子で近づいてくる。

「先日はあまりゆっくりお話できませんでしたが、香辛料に関心を持っていただいたと聞きました。そこで私、もっと強烈なスパイスミックスをいくつか開発してみたんです。肉料理やスープに加えるだけで、一気に異国風の香りになるという代物でして……」

 そう言って、木箱を開けるとむせ返るほどの香辛料の匂いが広がる。カレーのようなスパイシーさ、あるいはハーブ系の清涼感、いくつかの袋を嗅ぎ分けるだけでも頭がクラクラしそうなほどだ。

「うっ……これ、かなり強い香りね。でも、上手く使えば面白い料理になりそう」

「ええ。そこで、お嬢様が企画している“試食コーナー”にこのスパイスを使った料理を数品、出せないかなと思いまして。王宮に招かれる各国の大使様方は、きっと異国の味にも興味を持っていただけるはず。もしうまくいけば、新しい商機が生まれるかもしれません」

 リヴィエールは目を輝かせながら話す。その期待に応えたいし、私自身も「新しい刺激的な味」を晩餐会で試してみるのは悪くないと思う。もちろん、貴族の口に合うかは未知数だし、失敗のリスクもある。けれど、私はやはり前世の感覚を思い出し、「こういうチャレンジこそ面白い」と感じずにはいられない。

「大歓迎よ、リヴィエールさん。料理長と相談して、いくつかスパイシーなメニューを考えてみましょう。ただし、辛さや刺激が強すぎると敬遠されるかもしれないから、マイルドタイプも用意できると嬉しいわね」

「ええ、承知しました! いやぁ、お嬢様は話が早い。こんなに自由で柔軟な貴族令嬢は珍しいですよ」

 そう言って笑うリヴィエールの背後から、ひょっこりとマーガレットが顔を出す。「お嬢様、ちょうど料理長が新作ソースを仕上げたそうです。スパイスとの相性を試したいそうで、今すぐお越し願えますか?」と切羽詰まった様子で呼びかけてきた。
 私は「やれやれ、相変わらず忙しいわね」と苦笑いしながら、ファビアンとリヴィエールにも「一緒に行きましょうよ。皆で味見したほうが早いし、意見交換もしやすいわ」と誘った。
 こうして“晩餐会を前にして大集結”という状態ができあがった。まるで学園祭前夜の準備のように、貴族の屋敷とは思えない賑やかさである。でも、こういう雰囲気は嫌いじゃない。前世で感じた仕事の憂鬱とは違い、今は一人ひとりがそれぞれの得意分野を活かして協力し合う感覚がある。
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