白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇

鍛高譚

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第11話 カイルの誤解/リオナへの苛立ち

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第11話 カイルの誤解/リオナへの苛立ち

カイルが勢いよく部屋を出ていったあと、静まり返った応接間にはリオナとリリィだけが残された。

「……あの、リオナ様。だ、大丈夫ですか?」

「大丈夫って、なにが?」

リオナはまったく気づいていない顔で紅茶を口にした。

さっきのカイルの態度――
怒気を含んだ声、鋭い視線、耐えきれず出ていった背中。

普通なら「怒っている」と分かる。

だが、リオナには分からなかった。

(だって……私、なにかしましたっけ?)

むしろリオナのほうが不思議でいっぱいだった。

「……カイル様、すごく怒ってましたよ?」

「怒る理由がありませんわ。だって“私は干渉しない”って、ちゃんとお約束したはずですもの。私は勝手にお出かけしたわけでもなく……今日はリリィとお茶しただけですし。」

「それです! それが原因です!」

「……え?」

リリィは、言いづらそうに目を伏せ、それでも勇気を振り絞って告げた。

「カイル様……誤解してるんだと思います」

「誤解?」

「リオナ様が、わたしと……“仲良くしすぎている”って……」

「仲良くするのは悪いことなのかしら?」

「ふつうは……婚約者がヤキモチを焼く可能性があります……」

「ヤキモチ? なんで?」

リオナは本気で分かっていない。

――だって、これは白い結婚であり、お互い干渉しない“合理的な関係”のはず。

カイルの気持ちなんて、気にしてはいけないものだと思っていた。

(そもそも、カイル様には好きな人がいる。それを私が尊重しているだけ……なのに)

そう考えると、怒られる意味がますます分からない。

そのとき。

ドンッ!

廊下の扉が強く開かれ、カイルが再び戻って来た。

顔はまだ怒っているのに、どこか焦ったような、複雑な色の混じった表情。

「……少し話がしたい。リオナ」

「ええ、どうぞ」

リオナが席を立つと、カイルはぐっと唇を結び、しばらく言葉を探していた。

「……お前、どうして……リリィと、あんなに距離が近いんだ?」

「どうしてと聞かれましても……仲良くなっただけですわ。旦那様、私は干渉していません。ご自身の恋を邪魔するような真似は、決して――」

「そういうことじゃない!」

カイルの声が少しだけ震えた。

「俺は……お前が突然いなくなったと思って、心配したんだ!」

「……心配?」

「リリィと二人で出かけたと聞いて……!」

(……あ)

リオナはようやく、カイルが怒っている“方向性”を理解した。

「旦那様、私は勝手に出歩いたわけではありませんわ。リリィを“借りる”と申し上げてから出かけましたもの。」

「いや、そうじゃなくて……!」

カイルは頭を抱えた。

「どうして……そんなに俺を信用しないんだ?」

「え?」

「俺を“干渉しない婚約者”って決めつけて……。
……最初にそう決めたのは俺だが……お前が本当に距離を置くから……苛立つんだよ」

その声は、怒りよりも苦しさが滲んでいた。

リオナは胸がちくりと痛む。

(干渉されないほうが気楽だと思っていたけれど……)

カイルは違うのだ。

「……ごめん、リオナ。もう少し……俺の話を聞いてくれないか?」

「……ええ。聞きますわ」

その返事に、カイルはほっとしたように息をついた。

リオナは胸の奥が少し熱いのを感じながら――
自分が“何か見落としていた”のだと気づきはじめていた。

しかし、このすれ違いがもたらす余波は、まだ序章にすぎない。
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