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第12話 カイルの告白未遂/リオナの鈍感力、炸裂
しおりを挟む第12話 カイルの告白未遂/リオナの鈍感力、炸裂
「……リオナ、少し座ってくれ」
カイルは深刻な顔で、応接室のソファを指した。
リオナは素直に腰を下ろし、紅茶を一口飲む。
向かいに座ったカイルは、落ち着かなげに指を組んだりほどいたりを繰り返している。
(……そんなに緊張する話かしら?)
リオナは首をかしげながら、彼が話し始めるのを待った。
沈黙が数秒。
そして――。
「リオナ……お前に、話しておきたいことがある」
「ええ、どうぞ?」
カイルは息を吸い込んだ。
胸の奥から、何かを押し出すような気迫が伝わってくる。
「俺は……その……最近、どうも……」
「体調が優れないのですか?」
「違う! 絶対違う!」
即答された。
「では、お仕事の悩み?」
「いや、それでもない」
「では……旦那様、まさか食欲がないとか?」
「俺は老人か!? いや、そうじゃなくてだな!」
カイルは頭を抱えた。
(……どうして、こうも話が噛み合わない!?)
リオナの鈍感さは、ある意味で天才的だった。
***
深呼吸のあと、カイルはようやくリオナに視線を戻した。
「リオナ、俺は――お前のことを……」
そのとき。
「リオナ様ぁぁぁぁ!!」
扉が勢いよく開き、廊下からリリィが飛び込んできた。
カイル「……は?」
リオナ「どうしたの、リリィ?」
リリィは息を切らせながら手紙を差し出す。
「こ、これ……!リオナ様宛てに……変な人が領主館の前で渡してきて……!」
リオナは丁寧に封筒を受け取り、首をかしげる。
「変な人……?」
「覆面をして、黒いローブを着ていて……“リオナ様へ。近日中にお迎えにあがる”って……」
カイルが勢いよく立ち上がる。
「待て、それは危険だ!なんでリオナが狙われる!?」
「さあ……?」
リオナは本気で分からないという顔だった。
カイルは苛立ちと心配が入り混じった表情でリオナに詰め寄った。
「リオナ、お前は危機感が薄すぎる!普通、こんな不審な手紙をもらったら怯えるだろう!」
「でも……“お迎え”って書いてますし。丁寧な誘拐予告なのでは?」
「丁寧なら誘拐していいわけじゃない!!」
怒鳴りかけて、カイルは我に返る。
そして、ふっと目を伏せた。
「……本当に……心臓に悪いんだよ、お前は」
その声は、怒りよりも心配が勝っていた。
リオナはその意味を理解できず、また首をかしげた。
「旦那様、そんなに私のことをご心配なさる必要は……」
「ある! 俺には……あるんだ」
カイルはまたリオナを見つめた。
だが、もう“さっきの告白しかけた熱”は薄れてしまっていた。
彼は悔しげに奥歯を噛む。
「……続きは、また後で話す」
「え? まだ途中だったのですが?」
「いい。今は……落ち着かない」
リオナは「そうですか?」と素直に頷く。
その姿に、カイルは胸の奥をぎゅっと締めつけられたような気がした。
――どうして、こんなに鈍いんだ。
――どうして、俺の気持ちに気づかない。
けれど同時に。
その鈍さが、どこか愛しくて仕方がないと……ほんの少しだけ認めたくなる自分もいた。
(……告白は、またの機会にしよう)
と、カイルは静かに結論を下した。
こうしてまたひとつ、
カイルの“告白の機会”はリオナの鈍感力によって見事に粉砕されたのだった。
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