白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇

鍛高譚

文字の大きさ
19 / 40

第19話「本物の『お迎え』/カイル、リオナを守る」

しおりを挟む
第19話「本物の『お迎え』/カイル、リオナを守る」


覆面の“お迎え男”が屋敷の庭に現れた――。

その知らせを受けたカイルは、迷いなく駆け出した。

(……リオナを守る。
それだけは何があっても譲れない)

叔母ミレイユとリリィも心配そうに後を追う。

リオナは落ち着いた足取りでついてきた。

(……旦那様の言う“話の続き”。
いったい何を語ろうとしていたのかしら)

リオナだけが、今回の事態を“ちょっとした騒ぎ”程度に考えていた。

***

庭に出ると――
そこには、黒いフードを深くかぶった男が立っていた。

風のないはずの庭で、彼のマントだけが不気味に揺れている。

その姿は、どう見ても叔母ミレイユではない。

護衛が叫んだ。

「名を名乗れ!
なぜ我が領主夫人・リオナ様を狙う!」

覆面男はゆっくり顔を上げ——
だが、その視線はリオナだけを見据えていた。

そして朗々と告げる。

「……リオナ様。
お迎えにあがりました」

カイルが怒鳴る。

「ふざけるな!
リオナは俺の妻だ!
誰がお前なんかのところへ行かせるか!!」

覆面男は動じない。

「妻……?
ほう……そんなものは“形”にすぎません」

カイル
「形じゃない。リオナは――」

リオナ
「旦那様、落ち着いて」

カイル
「落ち着いていられない!」

リリィ
「ひぃぃ……っ、ど、どうしましょう……!」

叔母ミレイユ
「誰なの!? リオナに手を出したら許さないわよ!!」

覆面男は、静かに名乗った。

「私は――
カンデラ王国・宰相の使い。
我が王国は“リオナ様を正式にお迎えする”よう仰せつかっています」

「「えっ……!?」」

カイル・リオナ・ミレイユ・リリィ、全員が固まる。

覆面男は続けた。

「リオナ様は、我が国王が“十年前に探し続けていた人物”。
ついに居場所が判明したため、こうして参上した次第」

リオナはきょとんとした。

「十年前……?
私はただの伯爵令嬢ですわ」

「いいえ。
あなたは“伯爵家に預けられた身”にすぎない」

カイルの顔が険しくなる。

「どういう意味だ」

覆面男の声は低く、荘厳ですらあった。

「リオナ様……
あなたは――
**亡国ヴィゼリアの“最後の王女”**でいらっしゃる」

「「なっ……!!?」」

空気が震えた。

リオナは口元に手を当てる。

(……亡国……王女……?
そんな……私が……?)

覆面男は恭しく跪いた。

「王国の消滅以来、行方知れずとなっていた姫君。
我が王国はあなたを救うため、ずっと探し続けていたのです」

ミレイユは青ざめた。

「リ、リオナが……王女!?
そんな話、聞いたことないわ!」

覆面男は静かに頷く。

「伯爵夫婦に預けられたのは、
あなたを狙う勢力から守るため。
しかし、ついに痕跡をたどり……」

カイルの目が鋭く光った。

「“預けられた”……?
誰がそんなことを?」

「それは――
リオナ様の実の母君です」

リオナの呼吸が止まる。

「……母……?」

覆面男は深く頭を垂れる。

「亡国の王妃は、王女の命を守るため……
あなたを伯爵家へ託し、
その後、戦火に消えました」

リオナの胸に、わずかな痛みが走った。

(……私の母が……?
私を守って……?
でも、私は何も知らず……
ただ平凡に生きてきて……)

覆面男の声は続く。

「今こそお戻りください。
あなたには、王国を継ぐ義務があります」

その瞬間。

カイルが覆面男の前に立ちはだかった。

「――させると思うのか?」

覆面男
「なんのつもりだ?」

「リオナは俺の妻だ。
義務だから、使命だから……そんな理由で奪わせはしない」

覆面男
「しかし、彼女は“この国”の人間ではない。
あなたに決める権利は――」

カイル
「ある。夫だからな」

静かで、だが強い声。

リオナは目をみはった。

(旦那様……)

リリィは涙をこぼした。

叔母ミレイユは胸に手を当てる。

「まあ……カイル様って……!」

覆面男は沈黙した。

そしてゆっくり言う。

「なるほど。
……これは想定外です。
姫君が“ここまで深く人に慕われている”とは」

カイル
「当然だ」

覆面男は深く息を吐いた。

「では――こうしましょう。
本日のところは退きます。
ただし王国は諦めません。
“迎え”は近い。
覚悟しておいていただきたい」

そう言って覆面男は消えるように去っていった。

庭には静寂だけが残った。

***

リオナはぽつりと呟いた。

「……私、王女……だったんですのね」

カイルは静かにリオナの手を取った。

「リオナ。
俺は……“どこの国の姫だろうと関係ない”。
お前を渡すつもりはない」

その声は強く、揺らぎようがなかった。

リオナは思わず、胸に温かいものが広がるのを感じた。

(……旦那様……)

叔母ミレイユは涙をこぼし、
リリィは「うわぁぁぁぁ!」と泣き出した。

こうして――
リオナの“もうひとつの運命”が明らかになった。

だが、これはまだ序章にすぎない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

勘違い令嬢の離縁大作戦!~旦那様、愛する人(♂)とどうかお幸せに~

藤 ゆみ子
恋愛
 グラーツ公爵家に嫁いたティアは、夫のシオンとは白い結婚を貫いてきた。  それは、シオンには幼馴染で騎士団長であるクラウドという愛する人がいるから。  二人の尊い関係を眺めることが生きがいになっていたティアは、この結婚生活に満足していた。  けれど、シオンの父が亡くなり、公爵家を継いだことをきっかけに離縁することを決意する。  親に決められた好きでもない相手ではなく、愛する人と一緒になったほうがいいと。  だが、それはティアの大きな勘違いだった。  シオンは、ティアを溺愛していた。  溺愛するあまり、手を出すこともできず、距離があった。  そしてシオンもまた、勘違いをしていた。  ティアは、自分ではなくクラウドが好きなのだと。  絶対に振り向かせると決意しながらも、好きになってもらうまでは手を出さないと決めている。  紳士的に振舞おうとするあまり、ティアの勘違いを助長させていた。    そして、ティアの離縁大作戦によって、二人の関係は少しずつ変化していく。

白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活

しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。 新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。 二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。 ところが。 ◆市場に行けばついてくる ◆荷物は全部持ちたがる ◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる ◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる ……どう見ても、干渉しまくり。 「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」 「……君のことを、放っておけない」 距離はゆっくり縮まり、 優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。 そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。 “冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え―― 「二度と妻を侮辱するな」 守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、 いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。

溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~

紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。 ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。 邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。 「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」 そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。

会えば喧嘩ばかりの婚約者と腹黒王子の中身が入れ替わったら、なぜか二人からアプローチされるようになりました

黒木メイ
恋愛
伯爵令嬢ソフィアと第一王子の護衛隊長であるレオンの婚約は一年を迎えるが、会えば口喧嘩、会わなければ音信不通というすれ違いの日々。約束を破り続けるレオンと両親からの『式だけでも早く挙げろ』という圧に我慢の限界を迎えたソフィアは、ついに彼の職場である王城へと乗り込む。 激しい言い争いを始めた二人の前に現れたのは、レオンの直属の上司であり、優雅な仮面の下に腹黒な本性を隠す第一王子クリスティアーノ。 王子は二人が起こした騒動への『罰』として、王家秘伝の秘薬をレオンに服用させる。その結果――なんとレオンとクリスティアーノの中身が入れ替わってしまった!全ては王子の計画通り。 元に戻るのは八日後。その間、ソフィアはこの秘密がバレないよう、文字通り命がけで奔走することとなる。 期限付きの入れ替わり生活は、不器用な婚約者との関係をどう変えるのか? そして、この騒動を引き起こした腹黒王子の真の目的とは? ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※他サイトからの転載。

【完結済】春を迎えに~番という絆に導かれて~

廻野 久彩
恋愛
辺境の村から王都の星環教会へやってきた研修生アナベル・ウィンダーミア。 門で出会った王族直属騎士団副団長ルシアン・ヴァルセインと握手を交わした瞬間、二人の手首に金色の光が浮かび上がる。 それは"番"——神が定めた魂の半身の証。 物語の中でしか聞いたことのない奇跡的な出会いに胸を躍らせるアナベルだったが、ルシアンの口から告げられたのは冷酷な現実だった。 「俺には……すでに婚約者がいる」 その婚約者こそ、名門ルヴェリエ家の令嬢セレナ。国境の緊張が高まる中、彼女との政略結婚は王国の命運を左右する重要な政治的意味を持っていた。 番の衝動に身を焼かれながらも、決して越えてはならない一線を守ろうとするルシアン。 想い人を諦めきれずにいながら、彼の立場を理解しようと努めるアナベル。 そして、すべてを知りながらも優雅に微笑み続けるセレナ。 三人の心は複雑に絡み合い、それぞれが異なる痛みを抱えながら日々を過ごしていく。 政略と恋情、義務と本心、誠実さと衝動—— 揺れ動く想いの果てに、それぞれが下す選択とは。 番という絆に翻弄されながらも、最後に自分自身の意志で道を選び取る三人の物語。 愛とは選ぶこと。 幸せとは、選んだ道を自分の足で歩くこと。 番の絆を軸に描かれる、大人のファンタジーロマンス。 全20話完結。 **【キーワード】** 番・運命の相手・政略結婚・三角関係・騎士・王都・ファンタジー・恋愛・完結済み・ハッピーエンド

円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』

みこと。
恋愛
「あなたと子を作るつもりはない」 皇帝シュテファンに嫁いだエリザは、初夜に夫から宣言されて首をかしげる。 (これは"愛することのない"の亜種?) 前世を思い出したばかりの彼女は、ここが小説『冷酷皇帝の最愛妃』の中だと気づき、冷静に状況を分析していた。 エリザの役どころは、公爵家が皇帝に押し付けた花嫁で、彼の恋路の邪魔をするモブ皇妃。小説のシュテファンは、最終的には運命の恋人アンネと結ばれる。 それは確かに、子どもが出来たら困るだろう。 速やかな"円満離婚"を前提にシュテファンと契約を結んだエリザだったが、とあるキッカケで彼の子を身ごもることになってしまい──? シュテファンとの契約違反におののき、思わず逃走したエリザに「やっと見つけた」と追いすがる夫。 どうやら彼はエリザ一筋だったらしく。あれ? あなたの恋人アンネはどうしたの? ※小説家になろう様でも掲載しています ※表紙イラスト:あさぎかな先生にコラージュアートをいただきました ※毎朝7時に更新していく予定です

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

白狼王の贄姫のはずが黒狼王子の番となって愛されることになりました

鳥花風星
恋愛
白狼王の生贄としてささげられた人間族の第二王女ライラは、白狼王から「生贄はいらない、第三王子のものになれ」と言われる。 第三王子レリウスは、手はボロボロでやせ細ったライラを見て王女ではなく偽物だと疑うが、ライラは正真正銘第二王女で、側妃の娘ということで正妃とその子供たちから酷い扱いを受けていたのだった。真相を知ったレリウスはライラを自分の屋敷に住まわせる。 いつも笑顔を絶やさず周囲の人間と馴染もうと努力するライラをレリウスもいつの間にか大切に思うようになるが、ライラが番かもしれないと分かるとなぜか黙り込んでしまう。 自分が人間だからレリウスは嫌なのだろうと思ったライラは、身を引く決心をして……。 両片思いからのハッピーエンドです。

処理中です...