白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇

鍛高譚

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第18話「叔母の最終兵器/カイル、ついに覚悟を決める」

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第18話「叔母の最終兵器/カイル、ついに覚悟を決める」


ミレイユ叔母の“夫婦円満講座”が始まって三日目の朝。

屋敷の空気はもう、誰が見てもわかるほど不穏だった。

カイルは廊下に立つだけで、胃がきりきり痛む。

(……今日こそは何も起きないでいてくれ……頼む……)

しかし、その願いはすぐに打ち砕かれることになる。

***

その日の昼前――。

リオナが応接室で刺繍をしていると、
扉が開いてミレイユが勝ち誇った顔で飛び込んできた。

「リオナ! カイル様! ついに“これ”を持ってきましたわ!」

「え……?」

カイルは不吉な予感に背筋が震えた。

「叔母上……“これ”とは……?」

ミレイユはズバァーン!とテーブルに広げる。

そこには――

《新婚の心得書》
(叔母ミレイユによる全30項目 実践版)

カイル
「げほぉっ!?!?
なんだその地獄の書物は!!!」

リオナ
「まあ……すごい分厚さですわね」

リリィ
「ひっ……ひぃぃ……っ!!!」

ミレイユは得意満面で言った。

「本家で代々受け継がれている“幸せになるための家訓”なのよ!」

カイルは頭を抱えた。

(……本家……なんて恐ろしいものを代々受け継いでいるんだ……)

***

ミレイユは本を開き、朗々と読み上げる。

「第一項目!
夫婦は一日一回、手をつなぐこと!」

カイル
(三日前からもうやらされてる!!)

「第二項目!
お互いを毎日五回褒めること!」

カイル
(五回!?!? 心臓がいくつあっても足りん!!)

「第三項目!
“寝る前には必ず同じ部屋で過ごす”こと!」

カイル
「む、むりむりむりむり!!!!」

リオナ
「旦那様、声が大きいですわ」

「お、俺は紳士でいたいんだ!!!」
「紳士というより、ただの照れ屋さんでは?」

「違う!!」
「可愛い……」

(↑リリィが心の声を漏らした)

***

それでも、最も恐ろしいのは次の項目だった。

ミレイユがページをめくり――
目を輝かせて読み上げた。

「第二十四項目!
《想いを伝える勇気が、二人の絆を育てる》
つまり――夫は妻に、必ず気持ちを言葉で伝えること!」

空気がぴたりと止まる。

カイルの心臓は一瞬で跳ね上がった。

(お、想いを……伝える……だと……?
……そんな……
リオナに……今……??)

ミレイユは勢いよく指をさす。

「カイル様! 今日あなたが語る番です!!」

カイル
「か、語るって何を……?」

「決まっているでしょう! 愛の言葉よ!!」

リオナ
「愛……?」

リリィ
「ひぃぃぃ!!(震)」

カイルはリオナを見た。

リオナは相変わらず、静かで落ち着いた表情のまま。

(……俺が……
こんな気持ちを持っていることも気づかず……
距離を置かれていると思って……
それでも笑ってくれる……
そんなリオナに……)

カイルは、ふっと息を吸い込んだ。

ミレイユもリリィも固唾を飲んで見守っている。

そして――

「俺は……」

言いかけた瞬間。

バタンッ!

扉が乱暴に開いた。

「旦那様ぁぁぁぁ!!!」
護衛が飛び込んできた。

「な、なんだ!? 今いいところなんだが!?」
(↑カイルが珍しく逆ギレ)

「庭に……!!
“お迎え”の覆面男が再び現れました!!」

「えっ」
「えっ」
「ええええ!?」

リリィが絶叫する。

「叔母様じゃなかったんですかぁぁぁ!!?」

ミレイユも青ざめた。

「わ、わたくしではありません!!」

カイルは立ち上がり、剣を掴もうとして――
その手が止まった。

彼の瞳は、まっすぐリオナをとらえている。

「……リオナ」

「はい?」

「話の続きは、絶対にあとで言う。
聞いてもらう」

「もちろん、聞きますわ。
旦那様のお気持ちですもの」

その“何気ない返事”に、カイルの胸が熱くなる。

(……俺はもう……覚悟を決めるしかない……)

ミレイユは感動して涙を流した。

「カイル様ぁぁ……なんて男らしい……!」

リリィは鼻血寸前。

こうしてカイルは――
“本物の敵”と対峙するため、庭へ向かった。
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