白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇

鍛高譚

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第17話「叔母の結婚指南/カイルの逃げ場ゼロ」

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第17話「叔母の結婚指南/カイルの逃げ場ゼロ」


ミレイユ叔母の滞在二日目――。

朝から妙な気配が屋敷に漂っていた。
そして昼前、ついにミレイユは宣言した。

「本日、わたくし主催の“夫婦円満講座”を開催します!」

「「「夫婦円満講座!?!?」」」

カイル・リオナ・リリィ、三人の声が見事に揃った。

ミレイユは胸を張る。

「もちろん、あなたたち――
カイル様とリオナのためよ!」

カイルの表情は一瞬にして曇った。

(……絶対に嫌な予感しかしない……)

リオナはお茶を飲みながら優雅に言う。

「叔母様、私たちは円満ですわよ?」

「いいえ、全然です!」

「全然……?」

ミレイユは勢いよく立ち上がり、指を突きつけた。

「円満な夫婦とは、
手をつなぎ、
寄り添い、
時には甘え、
時には甘えられ、
“おやすみのキス”を交わすものなのです!」

カイルは盛大にむせた。

「おやすみの……き、キス……?」

「もちろんですわ!」

リリィは真っ赤になり泣きそう。

「リ、リオナ様ぁぁ……こんな話……! こ、心臓が……っ」

リオナはきょとんとしている。

「キスは……必要でしょうか?」

「必要です!!」
ミレイユは力強く断言した。

カイルはとうとう頭を抱え込む。

(……リオナの前でその単語を叫ぶな……!
俺まで変に意識してしまう……!!)

***

講座は“第一項目”から始まった。

項目1:夫婦は自然に距離が近くなるべし

ミレイユは二人に指示を出す。

「カイル様、リオナの隣に座って!」

「え……いや、それは……」

「何をためらうの!? 早く!」

カイルは観念してリオナの隣に座った。
リオナは淡々と紅茶を飲み続ける。

(……全く動じてない……どうして!?)
(こっちは心臓が爆発しそうなのに!)

「はい、もう少し近づいて!」

「こ、これ以上は……」

「これ以上です!!」

結果、
カイルとリオナの距離は手の甲が触れるほどになった。

リオナは自然体で言う。

「旦那様、いつもより近いですわね?」

「い、いけなかったか……?」

「いいえ。落ち着きます」

カイルの顔は真っ赤に染まった。

(……落ち着く……?
お、俺も落ち着かないけど落ち着くような……変な気分だ……)

人知れず、心臓が忙しく跳ねる。

リリィはとうとう床に座り込んでしまった。

「リ、リオナ様ぁぁ……尊すぎますぅぅ……」

***

項目2:褒め言葉は躊躇わずに

ミレイユは手を叩いた。

「次! リオナ、カイル様を褒めて!」

「褒める……?」

「ええ。普段思っていることでいいのよ!」

リオナはほんの数秒考え――

「旦那様は、とても頼りになりますわ」

カイルは固まった。

「りょ……頼りに……?」

「はい。
叔母様の滞在中、私を守ろうと懸命ですもの。
とても安心できますわ」

カイルの脳内で何かが爆発した。

(か、か、かわいい……なんだその破壊力は……!?)

ミレイユは満足げに頷く。

「では次! カイル様の番です!」

「え、俺も……?」

「もちろんです! リオナを褒めて!!」

カイルは顔を覆い、しばらく言葉が出なかった。
しかし覚悟を決め、真剣に言う。

「……リオナは……とても……優しい。
誰に対しても公平で……鈍いのに……いや、鈍いからこそ……
誰にも無理に期待を押しつけない。
……そんなところが、すごく……」

「すごく?」

「……好きだ」

リオナは瞬きを一度だけした。

「まあ。旦那様、私のどこが……?」

「ぜ、全部だ!!!」
カイルは叫んでしまった。

リリィは泣き崩れた。

「うわぁぁぁぁぁん尊いぃぃぃ!!」

ミレイユは笑顔で拍手する。

「はい、お二人とも素晴らしい!!
これが夫婦円満の第一歩ですわ!」

カイルは膝に手をつき、心臓を押さえた。

(……死ぬ……
恥ずかしすぎて死ぬ……)

一方のリオナは、相変わらず落ち着いた顔だ。

「旦那様、褒められるのは嬉しいですわね」

「お、おう……」

(その無自覚さ……本当に罪……!)

***

◆ 項目3:手をつなぐ練習を

ミレイユが指示した。

「最後に! 手をつなぎなさい!」

「えっ!? ま、待っ――」

リオナは素直に手を差し出した。

「旦那様、どうぞ?」

「き、急に……!」

「お二人とも若いんですから、恥ずかしがらなくても!」

カイルは震える手でリオナの手をとった。

温かい。

柔らかい。

静かに重なる指先。

その瞬間――
カイルの全身が一気に熱を帯びた。

リオナは微笑む。

「旦那様の手、温かいですわね」

「リオナの手も……」

言葉はそこまでしか出なかった。

(近い……
手をつなぐだけで……こんなに……)

叔母ミレイユは満足げに宣言する。

「はい! 今日の講座は終了!」

カイルは椅子の背にもたれかかり、天井を見た。

(……俺の命、いくつあっても足りない……!!)

リオナは穏やかに紅茶を飲む。

リリィは鼻血が出そうになりながら震えている。

こうしてミレイユ叔母の“結婚指南”初日は幕を閉じたのだった。
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