白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇

鍛高譚

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第16話「叔母、恐るべき監視網/リオナ、鈍感のまま日常満喫」

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第16話「叔母、恐るべき監視網/リオナ、鈍感のまま日常満喫」

ミレイユ叔母の“数日間の滞在”が始まり、屋敷の空気は一変した。

――というより、緊張感で張り詰めていた。

特にカイルの胃は、もはや悲鳴を上げていた。

***

朝、リオナが廊下を歩くと――

「リオナ! おはよう!」
「リオナ、朝ごはんは食べた? 量は足りた?」
「寝不足じゃないわよね?」

三連発で叔母ミレイユが飛び出してきた。

リリィはその後ろでハラハラしている。

「お、叔母様……リオナ様を驚かせないでください……!」

「驚かせてなんかないわよ。
リオナは幼い頃から朝弱い子だったから、つい心配で……」

リオナは落ち着いた表情で微笑んだ。

「叔母様、私はもう子どもではありませんわ」

「そうね……でも心配なのよ!」

「ではお茶をご一緒にいかがでしょう?」

「まぁ、優しい子……!」

ミレイユは嬉しそうだ。

――だが、その後ろでカイルが複雑な表情で立っていた。

「……リオナ。
昨日は“俺が過保護すぎる”と言ったよな?」

「ええ、言いましたわね」

「今は叔母上のほうが過保護だと思うんだが」

「そうですか? 愛情深くて良いことでは?」

カイルは言葉を失った。

(……ほんとに鈍い……
いや、それがリオナらしいんだが……)

***

昼下がり。

リオナは趣味の焼き菓子作りを楽しんでいた。

カイルが手伝おうとキッチンに入ると――

「カイル様はダメです!」

ミレイユに全力で止められた。

「なぜ俺が!?」

「リオナが作るお菓子は、リオナの手で仕上げるべきなのです!
混ぜるのを手伝ったら味が変わるでしょう!?」

「そんな理屈……聞いたことない!!」

リリィが慌ててフォローする。

「カイル様、危ないので下がっててください……!」

「危ないってなんだ!? 俺は料理だって一応できる!!」

「リオナ様の繊細なお菓子作りには……向かないと思います……!」

「向かないって誰が――」

リオナは、粛々と生地を混ぜながら言った。

「旦那様、叔母様の言うとおりですわ」

「……リオナまで!?」

「焼き菓子は私の楽しみですので。
旦那様は……そうですね……見ていてください」

「……見ているだけ……?」

「はい。旦那様が見ていてくださると、なんとなく落ち着きますもの」

カイルは一瞬固まり――
そのあと、耳まで赤くなった。

(……落ち着く……?
それは……どういう意味だ……?)

「カイル様、顔が真っ赤ですけど!?
大丈夫ですか!?」
リリィが飛びついてくる。

「り、リリィ……大丈夫だ……放っておいてくれ……」

「放っておけません!!」

叔母ミレイユはにこにこしている。

「まあまあ、若いって良いわねぇ……!」

カイルはもう限界だった。

***

夕食時。

ミレイユは突然、ノートを広げた。

「はい、今日の“リオナ観察日記”を書きます!」

「「「観察日記!?」」」

リオナ・カイル・リリィの声がぴったり重なった。

ミレイユは真剣だ。

「リオナがどれだけ幸せか、毎日記録して本家に送るのです!」

「送らないでください叔母様!!」
カイルが本気で止めに入った。

「なぜ? 家族は心配しているのよ?」

「いや、そうだとしても……その……」

(送られたら、俺が何を言われるかわからない!!)

「リオナは今日もカイル様の隣に座って嬉しそうでした、と……」

「書かないでぇぇぇ!!」
カイルの叫びが夕食の席に響く。

リオナは首をかしげる。

「叔母様、私はそんなに嬉しそうでしたか?」

「ええ、とても!」

「そうですの?」

カイルは俯いて耳を赤くする。

(……気づかない……
どうしてこんなに気づかないんだ……
俺が隣に座るだけで嬉しそうにしてくれるとか……
反則だろ……)

叔母ミレイユは満足げだ。

「とにかく、しばらく滞在しますのでよろしく!」

「……よろしくない……」
カイルの小さな抵抗は完全に無視された。

こうして、叔母の“恐るべき監視網”が本格的に始まったのだった。
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