白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇

鍛高譚

文字の大きさ
15 / 40

第15話「叔母ミレイユの暴走/カイル、胃痛の予兆」

しおりを挟む
第15話「叔母ミレイユの暴走/カイル、胃痛の予兆」

ミレイユ叔母が屋敷を訪れてから一時間――
カイルの胃はすでに限界に近かった。

その原因はただひとつ。

叔母ミレイユの暴走である。

「リオナ、食事はきちんと取ってる?
睡眠は? 旦那様に粗末に扱われてない?
ひどいこと言われてない?
泣いてない?
倒れてない?
痩せてない?
太ってない?
肌荒れしてない?
髪はつやつやしてる?」

質問の矢継ぎ早に、リオナはゆっくり紅茶を飲んで返した。

「叔母様、私は健康ですわ。
旦那様に粗末に扱われたこともありません」

「ほんとうに?
リオナは昔から我慢する子だったから……!」

「いえ、今は全く我慢してませんわ」

「まあ……! 幸せなのね!」

ミレイユはハンカチで涙をぬぐった。

その横で、カイルが小さく呻く。

(……なぜ俺が悪者になっている……?)

***

さらに暴走は続く。

ミレイユは突然、カイルに向き直った。

「カイル様!」

「……はい」

「リオナのことを本当に大切にしていますの?」

「もちろんです」

即答したが――

「嘘ではございませんわね!?」

「嘘ではない!」

「証拠は?」

カイルは固まった。

「証拠……?」

「愛情は言葉でなく行動で示すものですわ!」

(いや、白い結婚のはずなんだが!?)
(お互い干渉しない契約だったんだが!?)

しかし、リオナは隣で紅茶を飲むだけで、フォローする気はないらしい。

リリィは震えながら、そっと耳打ちする。

「カイル様……頑張ってください……!」

「励ますな……さらに胃が痛くなる……」

ミレイユは止まらない。

「例えば!!
リオナが困っていたら助ける?
悲しんでいたら慰める?
傷つけられたら守る?
誘拐されそうになったら命懸けで追う?」

カイルはひとつ息を吐き、真剣な声で答えた。

「当然だ。
リオナを傷つける者がいれば、俺は――」

「うふふ。
そこまで言えるなら合格ですわ!」

急に満足げにうなずいた。

(いや、今の質問……全部叔母上の誤解が前提だったのだが……)

(しかも誘拐犯は叔母上だったのだが……)

しかし、ミレイユは気にしていない。

むしろ――
娘を嫁に出した母親のように、ホッとした表情だ。

***

だが、そこで終わらないのがミレイユ叔母。

「ところで、カイル様」

「……まだ何かあるんですか」

「リオナと手をつないだことは?」

「……え?」

「お姫様抱っこは?」

「なっ……!」

「おそろいのアクセサリーは?」

「いや、その……」

「寝る前に“おやすみ”のキスは?」

「待ってください叔母上!!!」

カイルは真っ赤になった。

(……全部していない……
いや、してはいけないと思っていた……
だって白い結婚だし……
干渉しないと言ったのは俺だし……)

ミレイユは腕を組んでふんと見下ろした。

「そんなの、夫婦の常識ですわよ?」

「いや……その……リオナと俺は……」

と、カイルが言いかけた時。

リオナがぽつりと一言。

「旦那様。もし必要であれば、手をつなぎますわよ?」

カイルは顔を覆った。

(必要とかじゃない……!!
いや、嬉しいけど……!!
なんでそんな淡々と……!!)

リリィは涙をボロボロこぼしながら叫んだ。

「リオナ様ぁぁぁぁ!
そんな尊いことをあっさり言わないでぇぇぇ!!」

ミレイユはうんうんと頷いた。

「やはりあなた、鈍感ですわね」

「鈍感……?」

「この子は昔からこうなのですの。
好意を向けられても、ぜんぜん気づかない鈍感娘で……
でも、それも含めて可愛いのよ!」

リオナは頬に手を当て、きょとんとした。

「叔母様、私は鈍くありませんわ。
ただ……旦那様のお気持ちを邪魔しないようにしているだけで――」

カイルは、動きが止まった。

(……気持ちを、邪魔しない……?
つまり、俺に“好きな人がいる”と思って……
だから距離を置いていた……?)

(……何それ……
俺は……最初から――)

胸の奥に、言葉にならない熱が広がった。

だが、それを言葉にできないまま、
ミレイユが突然手を叩いた。

「決めましたわ!
しばらくここに滞在します!」

「「え?」」

リオナとカイルが同時に固まった。

ミレイユは満面の笑み。

「リオナの幸せを見届けるまで、帰りませんわ!」

カイルは悟った。

(……これは本当に……胃が死ぬ……)

こうして――
リオナの叔母ミレイユの“幸福監視生活”が始まる。

カイルの平穏は、しばらく戻らない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

白狼王の贄姫のはずが黒狼王子の番となって愛されることになりました

鳥花風星
恋愛
白狼王の生贄としてささげられた人間族の第二王女ライラは、白狼王から「生贄はいらない、第三王子のものになれ」と言われる。 第三王子レリウスは、手はボロボロでやせ細ったライラを見て王女ではなく偽物だと疑うが、ライラは正真正銘第二王女で、側妃の娘ということで正妃とその子供たちから酷い扱いを受けていたのだった。真相を知ったレリウスはライラを自分の屋敷に住まわせる。 いつも笑顔を絶やさず周囲の人間と馴染もうと努力するライラをレリウスもいつの間にか大切に思うようになるが、ライラが番かもしれないと分かるとなぜか黙り込んでしまう。 自分が人間だからレリウスは嫌なのだろうと思ったライラは、身を引く決心をして……。 両片思いからのハッピーエンドです。

溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~

紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。 ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。 邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。 「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」 そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。

白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活

しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。 新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。 二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。 ところが。 ◆市場に行けばついてくる ◆荷物は全部持ちたがる ◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる ◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる ……どう見ても、干渉しまくり。 「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」 「……君のことを、放っておけない」 距離はゆっくり縮まり、 優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。 そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。 “冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え―― 「二度と妻を侮辱するな」 守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、 いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。

会えば喧嘩ばかりの婚約者と腹黒王子の中身が入れ替わったら、なぜか二人からアプローチされるようになりました

黒木メイ
恋愛
伯爵令嬢ソフィアと第一王子の護衛隊長であるレオンの婚約は一年を迎えるが、会えば口喧嘩、会わなければ音信不通というすれ違いの日々。約束を破り続けるレオンと両親からの『式だけでも早く挙げろ』という圧に我慢の限界を迎えたソフィアは、ついに彼の職場である王城へと乗り込む。 激しい言い争いを始めた二人の前に現れたのは、レオンの直属の上司であり、優雅な仮面の下に腹黒な本性を隠す第一王子クリスティアーノ。 王子は二人が起こした騒動への『罰』として、王家秘伝の秘薬をレオンに服用させる。その結果――なんとレオンとクリスティアーノの中身が入れ替わってしまった!全ては王子の計画通り。 元に戻るのは八日後。その間、ソフィアはこの秘密がバレないよう、文字通り命がけで奔走することとなる。 期限付きの入れ替わり生活は、不器用な婚約者との関係をどう変えるのか? そして、この騒動を引き起こした腹黒王子の真の目的とは? ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※他サイトからの転載。

『君だから、恋を知った 』――冷徹殿下×天然令嬢のじれ甘ロマンス――

だって、これも愛なの。
恋愛
冷徹と呼ばれる殿下と、おっとり天然な令嬢。 恋をまだ知らない彼女は、ただ彼を「優しい人」と信じていた。 けれど殿下は――彼女が気になって、心配で、嫉妬して、もだもだが止まらない。 すれ違い、戸惑い、やがて気づく初めての恋心。 星空の下で結ばれる両想いから、正式な婚約、そして新婚の日常へ。 じれじれの甘やかしを、小さな出来事とともに。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

悪役を演じて婚約破棄したのに、なぜか溺愛モードの王子がついてきた!

ちゃっぴー
恋愛
公爵令嬢ミュールは、重度のシスコンである。「天使のように可愛い妹のリナこそが、王妃になるべき!」その一心で、ミュールは自ら「嫉妬に狂った悪役令嬢」を演じ、婚約者であるキース王太子に嫌われる作戦に出た。 計画は成功し、衆人環視の中で婚約破棄を言い渡されるミュール。「処罰として、王都から追放する!」との言葉に、これで妹が幸せになれるとガッツポーズをした……はずだったのだが? 連れて行かれた「追放先」は、王都から馬車でたった30分の、王家所有の超豪華別荘!? しかも、「君がいないと仕事が手につかない」と、元婚約者のキース殿下が毎日通ってくるどころか、事実上の同棲生活がスタートしてしまう。

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

処理中です...