白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇

鍛高譚

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第19話「本物の『お迎え』/カイル、リオナを守る」

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第19話「本物の『お迎え』/カイル、リオナを守る」


覆面の“お迎え男”が屋敷の庭に現れた――。

その知らせを受けたカイルは、迷いなく駆け出した。

(……リオナを守る。
それだけは何があっても譲れない)

叔母ミレイユとリリィも心配そうに後を追う。

リオナは落ち着いた足取りでついてきた。

(……旦那様の言う“話の続き”。
いったい何を語ろうとしていたのかしら)

リオナだけが、今回の事態を“ちょっとした騒ぎ”程度に考えていた。

***

庭に出ると――
そこには、黒いフードを深くかぶった男が立っていた。

風のないはずの庭で、彼のマントだけが不気味に揺れている。

その姿は、どう見ても叔母ミレイユではない。

護衛が叫んだ。

「名を名乗れ!
なぜ我が領主夫人・リオナ様を狙う!」

覆面男はゆっくり顔を上げ——
だが、その視線はリオナだけを見据えていた。

そして朗々と告げる。

「……リオナ様。
お迎えにあがりました」

カイルが怒鳴る。

「ふざけるな!
リオナは俺の妻だ!
誰がお前なんかのところへ行かせるか!!」

覆面男は動じない。

「妻……?
ほう……そんなものは“形”にすぎません」

カイル
「形じゃない。リオナは――」

リオナ
「旦那様、落ち着いて」

カイル
「落ち着いていられない!」

リリィ
「ひぃぃ……っ、ど、どうしましょう……!」

叔母ミレイユ
「誰なの!? リオナに手を出したら許さないわよ!!」

覆面男は、静かに名乗った。

「私は――
カンデラ王国・宰相の使い。
我が王国は“リオナ様を正式にお迎えする”よう仰せつかっています」

「「えっ……!?」」

カイル・リオナ・ミレイユ・リリィ、全員が固まる。

覆面男は続けた。

「リオナ様は、我が国王が“十年前に探し続けていた人物”。
ついに居場所が判明したため、こうして参上した次第」

リオナはきょとんとした。

「十年前……?
私はただの伯爵令嬢ですわ」

「いいえ。
あなたは“伯爵家に預けられた身”にすぎない」

カイルの顔が険しくなる。

「どういう意味だ」

覆面男の声は低く、荘厳ですらあった。

「リオナ様……
あなたは――
**亡国ヴィゼリアの“最後の王女”**でいらっしゃる」

「「なっ……!!?」」

空気が震えた。

リオナは口元に手を当てる。

(……亡国……王女……?
そんな……私が……?)

覆面男は恭しく跪いた。

「王国の消滅以来、行方知れずとなっていた姫君。
我が王国はあなたを救うため、ずっと探し続けていたのです」

ミレイユは青ざめた。

「リ、リオナが……王女!?
そんな話、聞いたことないわ!」

覆面男は静かに頷く。

「伯爵夫婦に預けられたのは、
あなたを狙う勢力から守るため。
しかし、ついに痕跡をたどり……」

カイルの目が鋭く光った。

「“預けられた”……?
誰がそんなことを?」

「それは――
リオナ様の実の母君です」

リオナの呼吸が止まる。

「……母……?」

覆面男は深く頭を垂れる。

「亡国の王妃は、王女の命を守るため……
あなたを伯爵家へ託し、
その後、戦火に消えました」

リオナの胸に、わずかな痛みが走った。

(……私の母が……?
私を守って……?
でも、私は何も知らず……
ただ平凡に生きてきて……)

覆面男の声は続く。

「今こそお戻りください。
あなたには、王国を継ぐ義務があります」

その瞬間。

カイルが覆面男の前に立ちはだかった。

「――させると思うのか?」

覆面男
「なんのつもりだ?」

「リオナは俺の妻だ。
義務だから、使命だから……そんな理由で奪わせはしない」

覆面男
「しかし、彼女は“この国”の人間ではない。
あなたに決める権利は――」

カイル
「ある。夫だからな」

静かで、だが強い声。

リオナは目をみはった。

(旦那様……)

リリィは涙をこぼした。

叔母ミレイユは胸に手を当てる。

「まあ……カイル様って……!」

覆面男は沈黙した。

そしてゆっくり言う。

「なるほど。
……これは想定外です。
姫君が“ここまで深く人に慕われている”とは」

カイル
「当然だ」

覆面男は深く息を吐いた。

「では――こうしましょう。
本日のところは退きます。
ただし王国は諦めません。
“迎え”は近い。
覚悟しておいていただきたい」

そう言って覆面男は消えるように去っていった。

庭には静寂だけが残った。

***

リオナはぽつりと呟いた。

「……私、王女……だったんですのね」

カイルは静かにリオナの手を取った。

「リオナ。
俺は……“どこの国の姫だろうと関係ない”。
お前を渡すつもりはない」

その声は強く、揺らぎようがなかった。

リオナは思わず、胸に温かいものが広がるのを感じた。

(……旦那様……)

叔母ミレイユは涙をこぼし、
リリィは「うわぁぁぁぁ!」と泣き出した。

こうして――
リオナの“もうひとつの運命”が明らかになった。

だが、これはまだ序章にすぎない。
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