白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇

鍛高譚

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第25話 リオナへの陰湿な罠/遠ざかる距離

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第25話 リオナへの陰湿な罠/遠ざかる距離

カイルが皆の前で“リオナを守る”と宣言した翌日。

学院の空気は大きく変わった──
はずだった。

……しかし。

(あれ……なんか……昨日より、雰囲気が冷たくなってる……?)

リオナが校舎に入ると、周囲の囁きが再び増していた。

「カイル様に守られて調子に乗ってるんじゃない?」
「庶民のくせに、あんな宣言をされるなんて……」
「ミレイナ様の方がふさわしいのに!」

昨日の“怒涛の宣言”によって注目が集まった結果、
今度は嫉妬した女子たちが陰でひっそりと動き出していたのだ。


---

 机に仕掛けられた罠

席に向かったリオナは足を止めた。

「あれ……?」

机の中に、色とりどりの紙がぎっしり詰まっている。

(な、なにこれ……?)

そっと取り出すと──
そこには悪意に満ちた落書き。

《身の程知らず》
《貴族狙いの庶民》
《カイル様の荷物》
《消えて》

リオナの指先が震える。

(こんな……こんなひどいこと……)

さらに、誰かが机にこぼしたらしいインクが乾いて、
リオナの席だけが黒く汚れていた。

「……っ」

胸が痛い。
昨日の勇気をくれたカイルの言葉を思い出そうとしても、
現実の冷たさの方がずっと強かった。

そこへ、教室の入口で声がした。

「リオナ、どうしたんだ?」

カイルだ。

リオナは慌てて机の中の紙を抱え込み、後ろに隠した。

「な、なんでもないよ! ちょっと、机が汚れてただけで……!」

「いや、そのインクは“ちょっと”じゃないだろ……誰が……」

カイルが眉をひそめ、机に触れようとした瞬間──

「カイル様、今日は私と一緒に講義を受けていただけます?」

ミレイナが教室に入ってきた。

完璧な笑みを浮かべているが、その瞳には刺すような敵意が宿っている。

「あなたが、庶民のことで時間を取られるなんて耐えられませんわ。
さあ、行きましょう?」

カイルはミレイナを一瞥した。

「ミレイナ、僕はリオナと話を──」

「カイルくん!」

リオナが思わず遮った。

(だめだ……カイルくんが私のために動けば動くほど……
噂はもっと酷くなる……)

「ほんとに大丈夫だよ!
インクも……自分でなんとかするし……!」

「リオナ……」

「ほら、ミレイナさんが待ってる。
だから、行って。授業、遅れちゃうし……」

リオナは笑顔を作った。
ひどく、痛々しい笑顔だった。

カイルは迷いに満ちた目で彼女を見つめる。

(……カイルくん、ごめん……
私が弱いから、こんなことになって……)

しばらく沈黙が続いた後──
カイルは小さく息を吐いた。

「……わかった。
でも、放課後に必ず話す」

「うん。わかった」

ミレイナは勝ち誇ったように笑い、扇子を開いた。

「さあ、カイル様」

二人が教室から出ていく。

その瞬間──

リオナはこっそりと机の紙束を抱えたまま、膝の上で手を握りしめた。

(こんなの……いつまで続くんだろう……)


---

 図書室での落とし穴

昼休み。
人目を避けるように図書室へ向かったリオナは、
少しでも落ち着こうと、静かな席を探していた。

しかし──

リオナが椅子に座った瞬間、
背もたれに貼られた紙が目に入った。

《“カイル様に近づくな”》

更に──
机の下には、誰かが置いていった小さな袋。

リオナが不安そうに開けると、
中には「泥の詰まった小瓶」と「無記名の手紙」。

震える手で手紙を開く。

《身の程を知りなさい
次はもっとひどい目に遭うわよ》

リオナの背筋が凍りついた。

(こんな……
これはもう……ただの嫌がらせじゃないよ……)

図書室にいた他の生徒たちは、
あえて見ないふりをして距離を取った。

誰も助けようとしない。

(私、学院にいていいのかな……)

目元が熱くなり、リオナは慌てて涙をこらえた。


---

 放課後、リオナは姿を消す

授業がすべて終わった頃。

カイルは約束どおりリオナを探していた。

「……リオナ?
裏庭じゃない……教室にもいない……」

焦りが生まれる。

(まさか、また何か……)

その時、同級生の一人が気まずそうに声をかけてきた。

「あ、あの……カイル様。
リオナさん……今日、もう帰りました」

「帰った……?」

「昼休みあたりから……ずっと様子が変で。
……泣いてるみたいだったから……」

カイルの胸がざわつく。

(リオナ……!)

拳を握りしめた。

(もう我慢させない。
今日、リオナがどんな目に遭ったか……全部突き止める)

その瞳には静かな怒りが宿っていた。

しかし、カイルが知らないところで──
リオナはすでに、学院の裏門の前で立ち尽くしていた。

(私……このまま、ここにいていいの……?
カイルくんまで巻き込んじゃう……)

夕陽の下、リオナの影だけが細長く伸びる。

その背後には、ひとりの影がゆっくりと近づいていた。

ミレイナではない。
彼女よりもっと、陰湿で計算高い存在──

学院の“闇”が、リオナへ迫り始めていた。

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