5 / 12
5
しおりを挟む「あら、どうしたのリリス?」
「お母様…少しお話ししたいことが」
広い執務室の中で帳簿と睨めっこをしていた母に声をかける
私と同じ銀髪に黒い瞳を持つ母は侯爵夫人として美しく着飾っており実年齢よりも若く見える美魔女であった
「貴女が用があるなんて珍しいわね」
「確認したいことがありましたから」
母が使っている大きな机の前に並べられたソファに腰を下ろし母に視線を向ける
少し休憩しましょう。と母付きの侍女に声をかけ私の目の前のソファへと母が座り直す
「成婚式のこと?」
「いいえ。ロベリアのことです」
「…あの子がまた何かしたの?」
ニコニコとしていた母だったがロベリアの名前を出した途端、眉間に皺が寄る
ロベリアの話は母にとってタブーでもあった為、今までは避けてきた内容だったがあの光景を見てしまった私としてはそんなことはどうでもよくなっていた
「お母様がロベリアとエルムが別邸に移ることを許可したと聞きました」
「あぁ。そのこと。もう1年も前の話よ」
今更それがどうしたの?と首を傾げる母の姿に私はどうしようも無い憤りを感じた
「では、あの2人が婚姻前に男女の仲になっていることは?」
「それも確認済みよ。エルム本人から聞いたわ。」
その言葉を聞いた私は言葉に詰まった
なぜ、母はそれを知りながらも平然としているのか、と
「私も聞いた時は驚いたわ。でも、2人は婚約者だし、それにエルムが言ったのよ「男女の仲になったことに目を瞑ってくだされば、ロベリアを完璧な淑女にします」とね」
「エルムがそんなことを…?」
「ええ。最初は半信半疑だったけれど…実際にロベリアは社交の場に出しても問題ないレベルにまできているわ」
母の言う通り今のロベリアは次期小侯爵夫人として紹介しても差し支えないほどおとなしくなっていた
だが、どこか腑に落ちない私は母に問いかける
「お母様はその内容をしっているのですか?あんなに我儘…いえ、我が強かったロベリアがまるで借りてきた猫のように大人しいなんておかしいですもの」
「貴女が心配する理由もわかるわ。でも私としては大人しく問題を起こさねば良いと思うほどにはロベリアに関しては許してきてるつもりよ」
ロベリアに対して全く関心を持っていなかった母が彼女を認めてきているという事実に私は言葉を失った
心のどこかで母はきっと一生父とロベリアのことを許さないのではないかと思っていたからだった
「あの2人に、直接何があったか聞いてみたらどう?」
「そ、そうですわね。お時間をいただいてありがとうございます」
これ以上私からは言うことはない、と言外に伝える母の執務室を退室した
モヤモヤとした心の中はまるで梅雨時期に入った空模様のように重く、ねっとりと染み付いてきた
とぼとぼと廊下を歩く
(「私は、無意識にロベリアのことを見下していたのかもしれないわ」)
父の私生児。我儘で自己中なマナーのなっていない義妹
それが私の中でのロベリアだった
「井の中の蛙、ね」
人はそう簡単には変わらない
人間心理学の教師が言っていた言葉だ
だが、本人自体に変わりたいと言う動機があれば?
そしてそれを手助けする人物がいたのであれば、簡単に人は変われるのかもしれない
(「それでも、婚前交渉はよくないわ。そこだけは義姉として教えなければ」)
「シスル。ロベリアのところに行くわ」
自室に向かって歩いていたが、踵を返し、別邸に向かって歩き出した
53
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】領主になったので女を殴って何が悪いってやつには出て行ってもらいます
富士とまと
ファンタジー
男尊女子が激しい国で、嫌がらせで辺境の村の領主魔法爵エリザ。虐げられる女性のために立ち上がり、村を発展させ改革し、独立しちゃおうかな。
たとえば勇者パーティを追放された少年が宿屋の未亡人達に恋するような物語
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
リクエスト作品です。
今回は他作品もありますので亀更新になるかも知れません。
※ つい調子にのって4作同時に書き始めてしまいました。
スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~
白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」
マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。
そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。
だが、この世には例外というものがある。
ストロング家の次女であるアールマティだ。
実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。
そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】
戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。
「仰せのままに」
父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。
「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」
脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。
アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃
ストロング領は大飢饉となっていた。
農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。
主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。
短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。
向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。
幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。
最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです!
勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。
だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!?
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる