異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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51「唐突にロボVSロップス」

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 なんと言うことでしょう。

 タロウの言う、有翼人は昏き世界の人、という言葉。
 これ以上ないほどにストンと腑に落ち、納得できてしまいました。

 僕が産まれてからは、強大な力を持ったあの昏き世界から来た神しか、この世界に降り立っていないハズです。

 ですが、ファネル様の寿命が尽きるのが近い今、結界に綻びがあってもおかしくないです。


「タロウ、正解かも知れませんね」
「え? 何がっすか?」

 貴方が言ったんじゃないですか。

「有翼人が昏き世界の者、という話ですよ」
「あ、ずっと黙ってなんか考えてると思ったら、まだそれ考えてたんすか」

 そんなに長い時間たってますか? 嘘でしょ?

「もうすぐ日が暮れるっすよ。ほら、ロップスさんも帰ってきたっす」

 前方を示すタロウの指先を目で追います。確かにロップス殿ですね。

「え、じゃぁお昼ご飯は?」
「食べてなっすよ! 呼び掛けてもヴァンさん反応なかったから!」

 それは大変失礼しました。急いで晩御飯の準備を始めますね。


 ロップス殿を交えて晩御飯です。

「この先には特になんにもないな。魔獣の気配も感じられなかったわ」
 食糧事情的には、ちらほら現れてくれる位が丁度いいんですがね。

「ロップス殿、聞いてほしい事がありまして」
「なんだ? 恋の相談か? 私に彼女はいた事ないが、相談に乗ろう」

 違いますよ。なんで急にそうなるんですか。
 タロウが握手を求めに行きます。なんなんですか貴方たち。

「違いますよ。有翼人についてですよ」
「ああ、そっちな。分かった、聞こう」

 タロウの推測に僕の考えを交えて伝えました。

「なるほどな。それはヴァン殿の考えとしては可能性が高いのか?」
「かなり高いですね」

 ふむん、と腕を組むロップス殿。

「そうなると、今後の戦いはより激しく厳しいものになるのではないか?」

 なるでしょうね。
 ファネル様の下へ向かう僕らを断固阻止すべく襲ってくるでしょう。

 ワギーさんとは戦いになりませんでしたが、ナギーさんの強さは強烈でした。
 僕とロップス殿との共闘でも、魔力をほぼ失っていた僕と、胸に穴を開けられたロップス殿とは言え、遊ばれて這いつくばらされました。
 きっとアギーさんはそれ以上に強いでしょう。

『今度はそれがしも戦うでござる!』
「俺もっす!」
『プックルモ、戦ウ』

 ロボとプックルはともかく、タロウは気持ちだけ頂きましょう。

「タロウは極力戦わない方向でお願いします」
「えー」

「ロボとプックルも、先ずは自分を守ること、その上で出来る限りタロウを守って下さい」
『……足手まといでござるか』

 ロボが肩を落としてしまいました。
 体が大きくなって、僕らを助けると息巻いてましたからね。

「ロボ、慌てなくても――」
「ロボよ! 弱ければ強くなれば良い!」

 ロップス殿の声に顔を上げるロボ。

「私が強くしてやろう!」
『頼むでござる!』
「まずはお前がどの程度戦えるか見たい。胸を貸そう」
『望むところでござる!』

 唐突に始まろうとするロップス殿VSロボ。

「待って下さい!」
『止めないで下され!』
「止めませんが、晩御飯の後にして下さい」


 そして食後、ついに始まるロップス殿VSロボ。

「タロウ、魔力を少し移す。光の魔法でしばらく照らしてくれ。それとタロウの棒を貸して欲しい」

 さらにタロウにも魔法の練習を。考えてますね、ロップス殿。

 タロウが掌から光の玉を出して、周囲を照らし出しました。なぜこんなに応用が上手なのに魔力感知がからっきしなんでしょうね。

「では、全力で来い!」
『はいでござる!』


「さぁー始まったっす、ロップスさんVSロボ、実況はタロウがお送りするっす」

 タロウが何か言い始めましたね。

「おぉっと! 先手はロボ!」

 ロボがいきなりロップス殿目掛けて突っ込みました。動きはかなり速いです。
 まずは爪による攻撃を仕掛けました。が、さすがロップス殿、巧みに棒で受け弾き飛ばします。

「ふむん。動き自体はなかなか良いぞ」

 弾き飛ばされたロボが空中で姿勢を立て直して綺麗に着地、再度挑み掛かります。

 ロップス殿から見て、右に左にと動きながら詰め寄るロボ。
 またしても爪、それを棒で受けるロップス殿、しかし、そこから牙による噛みつきにいくロボ。
 惜しかったですが、ロップス殿の方が上手うわてですね。棒で受けた爪をいなす形でロボの体勢を崩しました。そうなると牙も届きません。
 宙を噛んだ下顎を掴まれて放り投げられます。

「良いぞ! もっと来い!」

「二人とも速すぎー! 実況できねー!」

 今はタロウは放置です。

 放り投げられたロボの体から、薄っすらと桃色の魔力が滲み出ています。そのまま着地しました。

「うわぉぉん!」

 着地と共に、遠吠えに霊力を籠めた霊力砲です。

 直撃コースですが、それでもロップス殿は慌てていません。
 手に持った棒に魔力を籠め、それを逆手に持って腰を落としました。

「我が棒術の奥義、烈空蒼波斬れっくうそうはざん!」

「厨二すぎーー!」

 ちゅうに? なんでしょうか。
 名前はアレですが、ロボの遠吠えが裂かれ搔き消えました。さすがですね。


 しかし、ロボもお見事です。
 遠吠えが通用しない事を見越していたようですね。

 すでにロップス殿の頭を目掛けて飛び込んでいます。
 そして右の爪で攻撃、先ほどと同様に棒で受け止められましたが、今度は牙で噛みつかずに、口を開いて一瞬ためました。

「ちょっ! まっ――」

「はい! そこまで!」

 二人の間に体を割り込ませ、ロボの口を掴んで閉じさせます。
 さすがに接触しての霊力砲はロップス殿と言えども無傷では済みません。


 はーはーと肩で息をするロボとロップス殿。ロップス殿の方は疲れでなく焦ったせいのようですね。

「死、死ぬかと思った……」
「俺もロップスさん死ぬかと思ったっす!」
『……ロップス殿、ありがとう、ございましたでござ、る……』

 最初にロップス殿にお礼を言うロボは偉いですね。

『ヴァン殿! どうでござったか!?』
「正直言って驚きました。まさかロップス殿を追い詰めるとは思いませんでした」

 少し沈黙。

「それだけっすか?」

 え? 充分褒めているつもりですが?

「もっとこう、なんてーの? こう、『さすが僕のロボです! 可愛くて強くて、サイコーのお嫁さんです! もうペロペロしちゃう!』 これくらい言わないんすか?」

 僕のキャラでそれはちょっと言えませんね。
 キモチとしてはそれくらいですが。
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