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50「有翼人の人たちって」
しおりを挟むロップス殿の治療も終えて、明日の朝には僕の魔力も全快、ようやく旅に戻れますね。
この三日程はのんびりさせて頂きました。
のんびりしつつも、ロボの霊力トレーニングと、タロウの魔力感知トレーニング、ロップス殿は剣を振りながら新しい技の名前を考えて過ごしました。
この先も有翼人との戦いが予想されます。僕は既に成長期も過ぎ、大幅なレベルアップは見込めませんから、三人に頑張ってもらうしかありませんね。
『明日は出発するか?』
「はい。長やマエンの皆さんには大変良くして頂きました。ありがとうございます」
『またいつでも来るが良い。お主らなら歓迎しよう』
おはようございます。
ヴァンです。
「皆さん、出発しましょうか」
「おす!」
『承知でござる!』
『メェェェ』
「おう!」
先日は、マエンの森から三日の所まで行きました。そこまではロップス殿もご一緒します。
『ヴァン殿、みんなも、先日は本当にすまんでござる』
ロボがみんなに謝りました。
「何を言うか。助け合うのは当然だ」
「そうっす! 俺も助けて貰ってばっかっす!」
『謝ル、イラナイ』
みんな優しいですね。
「ロボ、今度はロボが助けてくれるでしょう?」
『勿論でござる!』
「ならいいじゃないですか。もう謝るのは無しですよ」
『承知でござる! みんな大好きでござる!』
ブルブルと体を震わせて、うわぉん! と一鳴き上げたロボ。
声の力強さが今までとは違います。頼もしいですね。
森を抜けて、ナギーさんと戦った付近までやって来ました。
「あの時のヴァン殿は凄かったな。クソがぁ! とか言って怖いぐらいだったわ」
「へぇぇ、ヴァンさんが、クソがぁ! っすか。聞きたかったっすね」
『ヴァン、クソガァ』
辞めて下さいよ。いっぱいいっぱいだったんでしょうがないじゃないですか。
「そういえば腐ったマエンの死体ないっすね」
「マエン達が埋葬してくれたそうです。世話になりっぱなしですね」
本当は魔獣の死体を放置するのはマナー違反ですからね。
単発的に現れる魔獣を倒して肉を回収しながら、森から三日の地点まで来れました。
ここからは岩場の多い山岳地、五日ほどでゲロルの町、さらに十日ほどでシュタイナー村です。
今夜はここ、ロボが熱を出した所、荒野の真ん中で野営です。
明朝やや東寄りに北へ進めば、ほどなくで傾斜が増していき、その後は山登りですね。
「そうっすか、この正面の山の上にガゼルさんと明き神がいてるんすか。近くで見るとけっこうデカい山っすね」
「そうです。高さも広さも、この世界で最大の山、アンゼル山脈です」
山頂付近に明き神の象徴があり、こちらから見ると山頂の右手、東側にガゼル様の家があります。
山頂の南側を回って東へ抜ければガゼルの街、街の最東端にガゼル様の家があり、街から西へ急斜面を登れば山頂に向かう形になりますね。
「明き神の象徴ってなんなんすか?」
「見てからのお楽しみ、と言いたい所ですが、活火山です」
「へぇ、火山! 近くで見た事ないっす!」
「私もないな」
『それがしもないでござる!』
『覚エテナイ』
「なかなか壮観ですよ。近付くと本当に熱いですが」
「楽しみっす!」
夕食は、森を出てから手に入れた鶏の魔獣・マウコッケイの肉をしっかりと炊いた鶏鍋にします。
「これも旨いっす! この世界でヴァンさんのご飯が一番旨いっす!」
お肌にも魔力回復にも良さそうなお鍋になりました。
「ではヴァン殿、私はまた先行する」
「はい。お願い致します。気をつけて下さいね」
ロップス殿が先行します。
「ロボ、霊力循環のトレーニングはしばらくお休みです。じきに山登りですからね、足元が疎かにならない様に注意しましょう」
『承知でござる!』
ロボは体が大きくなってからのトレーニングで、遠吠えに霊力を籠めた霊力砲を使える様になりました。まだ風や火などの魔法元素を混ぜて使うのは出来ませんが、大した進歩です。
すぐにやって見せたタロウの方がおかしいんであって、ウチのロボは出来る子です。
「タロウ、貴方は魔力感知のトレーニングは続けて下さいね。プックルから落ちなければ良いんですから」
「了解っす! ロボに負けてられんすから!」
所々に木々が固まって生えていますが、周囲はすっかり岩だらけです。
少し道も登り傾斜になってきました。
「ところでヴァンさん」
「なんですか?」
歩きながら話します。
「有翼人の人たちって魔術を使うんすよね?」
「どうもそうらしいですね。ワギーさんは魔術でマヘンプクを操っていたと言っていましたし、アギーさんとナギーさんは魔術の矢を放っていました」
んー、と首を捻るタロウ。
「魔術ってなんなんすか?」
「いつだったかちょっとだけ説明したんですけどね」
「そっすか?」
「魔法とは、魔力を使ってこの明き世界の理に干渉する手段です。それに対して魔術とは、昏き世界の理に干渉する手段ですね」
んー、と再び首を捻るタロウ。
「それが良く分からんのすよ。昏き世界って言うけど、それってこの星の外、宇宙の事じゃないんすか?」
ホシ? ウチュウ? なんの事でしょう。こちらにはない言葉のようですね。
首を捻っているとタロウが補足してくれました。
「俺がいた世界の話っすけどね、地球っていう星があって、そこの日本っていう国に住んでたんすけどね。その地球って、宇宙っていう真っ暗でめっちゃ広いとこに、浮かんでる、っていうんかな、ポツンとあるんすよ。で、その宇宙には地球みたいな星がいくつもあるんす」
なんと、世界の外とはそんな事になっているんですか。
「という事はですよ。この世界とはタロウのいたチキュウと同じウチュウの中にあるホシであると?」
「まぁそれは分かんないっすけど。違う宇宙かも知んないし」
ウチュウもいくつもあるんですか……。
「いやまぁそれは別に良いんす。魔術ってヴァンさんもブラムとーちゃんもアンセムさんも使えますやん? なんで使えるんすか?」
「七十年前の昏き世界から来た神との戦いの話はしましたよね」
「聞いたっす」
「あれよりもっと前、結界が無かった頃は昏き世界の者ともごく稀にですが交流があったそうで、昏き世界の技術である魔術も教えて貰った人がいるらしいんです。僕が産まれるもっと前ですが」
んーー、とより一層首を捻るタロウ。
「有翼人の人たちって、宇宙人……じゃなくて、昏き世界の人じゃないんすか?」
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