64 / 185
49「明き神の欠片」
しおりを挟む『うわわわわ! なんでござるかこの煙!』
どうやら深夜です。
一緒に寝ていたロボが騒いでいます。なんでしょうか。
『ヴァン殿! 全身から煙が出てるでござるぞ!』
あぁ、僕の煙ですか。
そういえば何にも説明していません。驚くのも無理ないですね。
「気にしなくても大丈夫ですよ。魔力の回復に伴って傷が癒えているんです」
『そういうものでござるか……。それがしにはそういう事はないでござるが』
「吸血鬼に特有のものですよ」
『そうでござるか』
夜明けまでまだまだありそうです。ゆっくり眠りましょう。
ロボの背を撫でながらもう一眠り、大きくなっても手触り最高です。
おはようございます。
ヴァンです。
『ヴァン殿! おはようでござる!』
良かった。
昨日と同じ大きさですね。
朝起きたらプックルみたいな大きさになってたらどうしようかと思っていました。
プックルは馬より少し大きいですが、山羊ですからね。街に連れて入っても、そう違和感ないですが、馬並みに大きい狼だとさすがに憚られます。
でもいつかはあり得るんでしょうか。
ペリエ村の西、マロウの森で出会ったマロウの長達はプックル並みの大きさでしたが。
「ロボ、先代の狼王殿はどれくらいの大きさでしたか?」
『父でござるか? そうでござるな、今のそれがしより、もう少し、一回りほど大きかったでござる』
安心しました。レイロウはそこまで大きくはならなさそうですね。
さてと、みんなは、と。
昨夜は簡単に食事を済ませて、そのまま広場で寝ました。みんなとにかく疲れていましたから。
ロップス殿は爆睡中ですね。
あれ程のダメージですからしょうがないですね。
タロウとプックルの姿が見えませんが、どこへ行ってるんでしょう。
キィーキィーとマエン達の声が近付いてきました。
『お、魔道士殿、起きたか』
数頭のマエンと共に、プックルの背に乗ったマエンの長とタロウが顔を見せました。
タロウと二人乗りですね。
「おはようございます」
『この人族は面白いな』
タロウは相変わらず獣と仲良くなるのが上手ですね。
「どうかしたんですか?」
『このタロウとかいう人族がな、魔力感知がからっきしだと言うんで見てやっとったんじゃ』
「ほう。それでどうでしたか?」
『ダメじゃ。からっきしじゃな』
ちょっと期待したじゃないですか。
「マエンのじーちゃん、そりゃないっすよ」
『本当の事じゃ』
ホントに仲良しですね。
『竜族の長が助言しても出来なかったらしいのに、ただのマエンである我にどうこう出来よう筈がないではないか』
それはそうですね。
アンセム様でさえタロウの魔力感知はお手上げでした。
「おはよう。集まって何をしてるんだ?」
ロップス殿も起きてきました。
とにかく朝食にしましょうか。
簡単に朝食の準備を済ませました。
今朝はマエンの長にもご馳走します。
『すまんな魔道士殿。人族にご馳走になるなどいつぶりだろうな』
「簡単なものですみません。お口に合うと良いんですが」
ストックしていたマトンの肉と野草を使ったスープに、粉を捏ねて入れたダンゴ汁です。
『それでさっきの続きだがな』
「タロウの魔力感知の件ですね」
『ああ。聞けば竜の因子があるそうではないか』
今のところ全然役に立ってない竜の因子ですね。
「アンセム様、竜族の長が言われるにはそうらしいです」
スープを装って長に手渡します。
『竜の因子とは何か知っておるか?』
「竜族だけが持つ因子だと伺いました」
『そうだ。それが何かを知っておるか?』
何か、ですか。
アンセム様も何も仰っておられませんでしたが……。
ロップス殿に目を向けましたが、首を捻っています。
貴方、竜の因子を持ってるんじゃないんですか。
「正直なところ、存じ上げません」
「私も知らぬ。考えた事もなかった」
『最近の若い者は知らんか。美味いなこれ』
僕けっこう年寄りですけどね。
『竜の因子とはな、明き神の欠片よ』
明き神の欠片……。
「それは一体?」
『詳しくは知らんがな、明き神とはこの世界の全てであり、この世界とは明き神の全てなんじゃ。そして竜の因子とは明き神の欠片、その欠片を持つ竜族とは明き神の子じゃ』
初めて聞きました。
これでも僕、ペリエ村で明き神の教会の管理をしてたんですが……。
「ヴァンさんって、教会の神父さんだったすよね?」
「違いますよ。僕は教会の管理をしてるだけで、神父という訳ではありません」
もろに明き神の子であるロップス殿が一番驚いた顔をしていますが。
「長はそれをどちらで?」
『ガゼルの街だ。我は魔獣の子ではない。魔獣の肉を喰らって魔獣となったクチだ。元は普通の猿だった。その頃は教会に住んでおってな、研究熱心な神父が話すのを聞いておった』
確かにガゼル領の、現在はアンゼル山脈と呼ばれる山の山頂付近に、明き神信仰の象徴があります。
「長、実はタロウはこの世界の人族ではないんです」
『ほう。ならそちらの世界の明き神の子の末裔ということかの』
なるほど。明き神がこの世界にしかいないと考える方が不自然でしょうか。
「それは分かったっす! そんで俺の魔力感知はどうなるんすか?」
『さあな』
「そりゃないっすよじーちゃん!」
『まぁ分からんがな、明き神詣りでもすれば何か分かるんじゃなかろうかとな』
んー、と考える素振りのタロウ。不意に僕の方に顔を向けました。
「ヴァンさん! 明き神詣りって道順的にはできるんすか?」
「可能です。というか、ガゼル様の家の近所ですからね」
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる
長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。
ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。
そこは魔法がすべての世界。
スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。
でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて──
「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」
そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに……
家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば──
「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」
えぇ……なんでそうなるの!?
電気と生活の知恵で異世界を変える、
元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる