異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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86「ホントに寝てた」

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「おぉ、そうだ。ブラム様だがな、まだ寝ておられたぞ」

「え? そうなんすか? え? でもヴァンさんの呪い解けてたんじゃ」
「呪いは完全に解けています。でもガゼル様も反応がないと仰っていましたし、充分にあり得ると思っていました」
「そんなん言ってましたっけ?」


 僕から魔力を奪う必要がない程度には回復した、という事でしょう。

「とりあえず魔獣の死体を片付けて、中に入りましょう。パンチョ兄ちゃんの話も聞きたいですし」

 僕が倒したマユウの肉を少々ストックに回して、その他の魔獣と魔樹を深く掘った穴に埋めました。

「ヴァンさん、魔力大丈夫なんすか?」

 魔法の連発はともかく、魔術も二回使いましたからね、タロウの心配ももっともですね。

「大丈夫です。呪いが解ける前と比べれば、消費量はグンと減りましたし、回復量は倍以上です。まだ半分近く残っていますよ」
「もう鬼に金棒っすねー」

 
 みんなでどやどやと、パンチョ兄ちゃんが守っていた正面入り口から中に入ります。
 入り口はここしか有りません。

 各階に光を通す鉱石を使った明かり採りはありますが、出入りはここからしかできないそうです。

 入り口は大きく、中の通路も各部屋も広く天井の高い造りになっています。
 プックルも余裕で歩ける広さです。

 しばらく歩くと上階へと登る階段、この階段を迂回した奥の広間が父の居室です。
 城の中央付近ですね。

「一体なにがあったんですか?」

「いや、我にも良くは分からん。昨夜遅くにこの城に辿り着いてな。ブラム様の部屋まで行ったんだが、ガーガーと眠っておられてな。

「夜だから眠っておるのか、魔力回復の為の眠りなのか、どちらか分からんのでな、起こすのも憚られたのでこの階段に腰掛けて眠ったんだが、今朝になっても目を覚まさんのでどうしようかと思っておった所に、さっきの連中が現れたという訳よ」

 階段後ろの扉を開きました。

「さっきの連中は何が目的だったんすか?」
「さてな。この城は僕らのだから入るよ、そう言っていたがな」

 この城は今でこそ父の居城の様になっていますが、元々は昏き世界から来た神のもの、そういう意味でしょうか。

「あ! ここっすよ! 俺が自分ちでゴロゴロしてたら呼ばれたとこ!」

 部屋の中に踏み込んだタロウが騒ぎ始めました。
 恐らくここでしょうね。
 ここが、父の「結界を維持できる範囲」の一番真ん中です。

「ここで最初のアイアンクローされたんすよ。なんかずいぶん前の気がするっすね」

 中央の父愛用の棺は蓋が開かれたままになっていましたが、やはりパンチョ兄ちゃんが言う通りにイビキをかいて眠っていました。
 父です。

「ホントに寝てるっすね」
『ヴァン殿に瓜二つでござるな』
「せやろー? 俺も最初そう思ったすもん」
「やや髪色の銀が強いくらいでほぼ同じ顔だな」
『ブラム、久シブリ』

 みんな興味津々ですね。

「あれ? プックルは会ったことあるんすか?」
『有ル』
「あぁ、我とファネル様の下へ伺った時だな」
『モット、前ニモ、会ッタ気、ガスル』
「そうなのか?」
『ケド、良ク、覚エテナイ』

 ファネル様と一緒に居た頃でしょうか。いつ頃から一緒に居たのか分かりませんが。

「それにしても寝相悪いっすね」
『それはタロウ殿にそっくりでござる』
「イビキもな」
『タロウノ、イビキ、煩イ』
「なっ!? 俺イビキなんかかかんすよ!?」

 実際タロウのイビキは煩いです。
 もう慣れましたけど。

 みんな酷いっす、とブツブツ言っているタロウを放っておいて、パンチョ兄ちゃんが口を開きました。

「それでお主ら、これからどうするんだ? 起きるのを待つのか?」
「どうしましょうね。いつ起きるか分かりませんから、先にタイタニア様の下へ向かう方が現実的でしょうか」

 今は七月の中旬に入った所ですので、年内いっぱいまで残り三月みつき半、タイタニア様の所までが十五日ほど、往復するだけなら八月末には充分戻れる計算になります。

「タイタニアさんもすぐに証くれると良いんすけどね」
「それなんだがな、この世界を救う為に私たちは旅しているのだから、サクッとくれれば良いと思わんか?」

 その通りですよね。
 僕もそう思っていました。

『そういう訳にもいかないんですって』

「おぉ!? いきなりタイタニア様の声が!」
『……パンチョもいるのね?』
「はっ! ここに!」

 胸に手を当て跪くパンチョ兄ちゃん。
 騎士って感じですね。
 それにしても相変わらず色気たっぷりの艶のある声です。鱗で分かりにくいですが、ロップス殿が頬を赤らめています。

『この前は悪かったわね。いきなり追い出したりして』
「いえ、我が六十年前に訪れておれば……」
『そうね。それはそう思うわ』

 一体二人に何があったんでしょう。なんとなく聞きにくいですね。

「何があったんすか?」

 よく聞けますねタロウ。ヴァン先生びっくりですよ。

『貴方がタロウ?』
「京野太郎っす! よろしくお願っす!」
『キョーノタロウ? タロウじゃないの?』
「いや京野は苗字で――」

 お決まりのくだりですね。割愛。

『上と下があるお名前なのね、分かったわ』
「タイタニア様、ところで先程のお話ですが」
『ええ、証についてね。アンセムからはどう聞いてるの?』
「え? アンセムさん? なんか言ってたっすか?」

 少し沈黙。

 ……ちょうど半年、五カ月前ですからね。タロウでなくても忘れるかも知れませんね。

「確かアンセム様は、『共に結界を維持する相手に足る、と思える事が大事なのだそうだ』、そう仰っておられました」
「へー、そんなん言ってたっすか?」

 首を捻ってロップス殿を見るタロウ。

「私はその場には立ち会っておらん。たぶん」

 ええ、確かにロップス殿はおられませんでしたね。

『問題はソレなのよ。証を渡すだけなら会ってすぐにでも渡せるの。ただ、その証を持ってファネルと交代したら……、どうなると思う?』

 少し長めの沈黙。

「……やっぱ、世界が滅ぶ、とかっすか?」
『そうね、結果的に世界も滅ぶかも。タロウが木っ端微塵に爆発しちゃうから』

「ダメすぎーー!」
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