異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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87「そんな事はどうでもいい」

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 思っていたよりも酷いリスクでした。

 そうですか。
 タロウが木っ端微塵ですか……。

『ちょっと見てみたいかも、って思ったそれがしは不謹慎でござるな。すまんでござる』
「いや、私も思った。すまん」
『チョットダケ』
「すまぬ」
「すみません、僕もちょっとだけ」


「全員やないかーぃ!」

『ワタシもちょっと思ったわ』
「……タイタニアさんまで……、もう良いっす」
『ごめんね。でもそうならない為にもね、早くこっち来てくれないかしら?』

 タロウに爆発してもらう訳にはいきませんからね。

「分かりました。念のためみんなの魔力の回復を待って、明朝にはそちらへ向け出発いたします」
『うん、それで良いわ。ヴァン、待ってるから早く来てね♡』

 結界通話が切れたようですね。

「ガゼル様の所でも思ったが、便利な物だな」
「今のはなんだ? タイタニア様とはこの間タイタニア領でお会いしたばかりだが……」
「五英雄様たちは結界を通して会話が可能だそうです」

 なるほどアレがそうか、とパンチョ兄ちゃんが呟きます。存在自体は知っておられた様ですね。


「ねぇ、ヴァンさん」
「どうしました?」
「俺も爆発したくないすから早い出発は良いんすけど、お腹空いたっす」

 あ、もうそんな時間ですか?
 今朝早く野営地を出て、ついさっきまで二ギーさんたちとの戦い。 

 そうですね。
 もうお昼を大きく過ぎていますね。

「すみません、気付きませんでした。昼食にしましょうか」

 みんなでワイワイ言いながら食堂へ移動します。
 部屋に入ってきた時の扉から出て、階段を登り、その正面が食堂、そのさらに奥が厨房です。

「あ、さっきヴァンさんが戦ってたのってここじゃないっすか?」
「え? あ、そうですね。建物南の二階テラス、ここですね」

 壁にめこまれた明かり採り用の光を通す鉱石が床から天井へ立ち上がり、向こうのテラスの様子が良く分かります。

「これ……ガラスじゃないんすよね?」
 コンコンと指の背で叩くタロウ。

「ええ、鉱石、分かりやすく言えば、岩ですね」
「はめ殺しってんですかね、ここから出入りはできないんすね」
「扉の様に開いたりはしませんから。魔法を使えば別ですけどね。見せましょうか?」

 土の魔法の応用で岩を操作して、透明な岩を少し変形させ、一部を開きました。

「こんな感じですね」
「ブラム父ちゃんも、昏き世界から来た神もこうやって出入りしてたんすか?」
「父はそうですが、昏き世界から来た神の出入りは分かりませんね」
「そりゃそうっすね。ヴァンさんその頃十歳くらいすもんね」


 食堂奥の厨房を覗いてみましたが、やはり備蓄の食料などはありませんね。
 ここで暮らす父はあまり食事の必要がありませんから当然ですね。

「プックル、荷物を降ろしましょう。いつもありがとうございます」
『余裕。プックル、チカラ持チ』

 厨房も食堂もあるのにロクな調理器具はありません。それでも屋根も壁もありますから、少しだけ手の込んだ物を作りましょう。
 分厚く切ったマユウの肉を焼き、山菜のスープを作り、パンは発酵に時間が掛かるので発酵なしの似非えせパンを焼きました。

 みんなでテーブルを囲んでの食事です。


「いや有難い。ボルビックを出てからロクな物を食べておらんかったからな」

「ボルビックですか。やっぱり西からこちらに来たんですか?」
「うむ。ちょっと道を間違えてな。ペリエ村からうっかり北西に進んでしまったのだ」

 ちょっと意味が分かりません。
 ペリエ村から真北からやや東に進むだけじゃないですか。

「どう間違えたらそうなるんです?」
「いや、まぁ、色々あったんだ。マロウとマエンのいさかいを納めたりと、色々な」
「まぁそれはきっと理由があったんだろうと思いますが、パンチョ兄ちゃんはツイてたんですね」

 首を捻るパンチョ兄ちゃん。

「ツイていたとは?」
「え? 船の調達が上手くいったんじゃないんですか?」

 少し沈黙。

「いや、船は無かった。だから泳いで渡った。無かったんだから当然だな」

 …………アホなんですか?

 あ、僕とした事が。
 心は正直ですね。本音が顔を出していました。

「それって、どれくらいの距離泳いだんすか?」
「小島で休憩したのも入れて、およそひと月だな」

「アホ過ぎー!」

 タロウが代弁してくれました。

「パンチョ兄ちゃん! 潮に流されて結界を突き抜ける可能性があったんですから、タロウの言葉は言い過ぎではありませんよ!」

 ふふふふ、とパンチョ兄ちゃんは口の端を上げて含み笑いしました。
 ちょっとイラっとしますね。

「それがなヴァンよ。五英雄様たちの結界はな、海や川の中ではぶち当たっても向こうに抜けんのだ」

「……本当ですか?」
「本当だ。だからな、我は結界伝いに海を北上したので危険もないし、疲労も最低限で済んだ訳だ。どうだ、知らんかっただろう」

 悔しいですが知りませんでした。だってそんなこと誰も試したことないでしょう。それこそ命がけで試す事じゃないですからね。

 やってる事は正直言ってアホかなと思いますが、無事でなによりでした。

「それ、元々知ってたんすか?」
「いや、今回初めて知った」
「……アホっすね」

 激しく同意です。
 ウンウンと皆同様に頷いていますね。

「まあ、そんな過ぎた事はどうでもいい」
「いや、どうでもいいって事――」
「そんな事より! あの翼を持つ者どもはなんなのだ!?」
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