異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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93「タイタニア」

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「パンチョさんが意味深に言ってた意味が分かったっすよ」

『いや何、なぜ六十年前に来なかったかと罵られてな……、しかし六十年前に伺ったとしてもタイタニア様はあの姿……我とどうこうなったとは……、いや、これ以上は止めておこう。詮無い話だ』

 このくだりですよね。
 僕は知ってましたから理解できましたけど、知らないタロウ達には意味深ですよね。
 
「パンチョがどうかしたの?」

 タイタニア様にもパンチョ兄ちゃんの発言を説明します。

「なるほど、理解したわ。でもね、それはパンチョの早とちり。ワタシの本来の姿はこうだけど、過去にワタシが愛した者たちは様々なのよ?」

「と言うとどういう事っすか?」

「ワタシはこの世界で最古の精霊。四千年も生きてるの、精霊だけで満足できると思う?」
「中華料理みたいっすねー」

 以前にお会いした時は、三千年生きていると仰っておられましたが……。まぁ、僕らにとっては三千年も四千年も同じですよね。

「かつて人族の男を愛した事もあるし、もちろん魔族も、竜族も、なんだったらそれぞれの女の子も愛したわ。そしてその愛の証として子を成した事もあるわよ」

 少し間を取るタイタニア様。

「ワタシは、ワタシが愛した相手に合わせて姿を変えられるのよ!」

「「な、なんだってー!」」

 タロウとロップス殿が叫びました。

「「と、という事は俺(私)にも可能性が!?」」

 恐ろしくシンクロした叫びですね。止めて下さいよ、はしたないですよ。

「でも今はその話は置いといて」
「「置いとくんんす(の)か」」

 依然としてシンクロする二人は放置したタイタニア様が、僕の首から飛び立ち、ロボの目前で羽ばたきました。

「……貴女、ワタシの子孫ね」

「「「な、なんだ(です)ってー!」」」

 僕までシンクロしてしまいました。
 そう言われればあり得ない話ではありませんね。
 タイタニア様に限りませんが、精霊との子が代を重ねた結果、精霊力を操るようになり、そして恋多き精霊女王の子孫が、正にこのロボである、と。

『タ、タイタニア様が……それがしのご先祖……様……?』

「もう何百年か前、ワタシは一匹の狼に出会ったの。彼はマロウだったけど、人語を解し、漆黒の毛は美しく、誰よりも鋭い牙と、誰よりも速く走る肉体、そしてマロウの癖に紳士だった。一発で恋に落ちたわ」

『そのマロウと……?』
「ええ、自分を狼の姿に変え、彼との子を成したの。そして生まれた一匹のレイロウ、貴女と同じ白い毛の美しい狼だったわ」

 ロボを見るタイタニア様の目が慈しみに溢れています。そのマロウとの恋を思い出しているんでしょうか。

 唐突に床に頭を下げたロボ。

『ご、ご先祖様! それがしに精霊力の扱い方を教えて欲しいでござる!』

「ええ、後で教えてあげる。でも『ご先祖様』は止めてね。おばあちゃんになったみたいだわ」
『分かったでござる! お頼み申すでござるよご先祖様!』

 分かってませんね。
 タイタニア様も若干諦め顔ですが、それでも目に滲んだ慈しむ気持ちに衰えはありません。
 良かったですね、ロボ。


 中央のテーブルにタイタニア様が降り立ちました。
「じゃ、本題に移りましょう」
「本題? さっき置いといた話っすか?」
「お? おう、さっき置いといた本題な、いざ!」

 さっき置いといた話は本題じゃないでしょう。二人の青い若さが眩しい反面、鬱陶しいですね。

「置いといた話は、あ・と・で♡」

「「『あ・と・で♡』頂きましたー! ぐはぁ」」

 あまりにも鬱陶しかったので殴りました。本日二回目の手刀です。

「まずはワタシの証、それに有翼人、つまり昏き世界の者どもについて、これがワタシが認識してる本題よ」
『なんで有翼人の事も知ってるでござるか?』

「ワタシの精霊力は結界を維持しながらでも余裕があるわ。だからファネル、アンセム、ガゼル、ブラムの所はいつでも盗み聞きしてるの」

 盗み聞きとは趣味が悪いですが、話が早くて助かりますね。

「ねぇ、盗み聞きしてて面白かった話、聞く?」
「なんすかなんすか?」

「一番はね、ぷふふ……、あーダメ、ちょっと待っ、ぷふふふふ」
「なんすか、勿体つけるっすね」

 あの、また脱線してるんですが……。

「アンセムがね」
「ぬ? 父上か」

「若いお嫁さん貰ったでしょ?」
「ぬ、母上絡みか」

「夜の営みでは大人の姿なんだけどね、あのいかつくて真面目な、あのアンセムがさ、『赤ちゃん言葉』でさ……ぷふーっ! あーもうダメ、誰かに聞かせたかったー! ぶふーっ!!」

 美の極致と謳われたタイタニア様のイメージが……。

「もーダメ、ヒィ、ぶふふーっ!」
『ヴァン殿、ヨルノイトナミ、ってなんでござるか?』
「ち、父上のイメージが……」
「なるほど、さすが千三百歳……」

 笑い転げるタイタニア様、興味津々なロボ、四つん這いで涙を堪えるロップス殿、妙に感心するタロウ。

 なんなんですかこの混沌とした状況は。

『ゴ苦労、サマ』
「……ありがとうございます」

 いつも通りのプックルに癒されますね。


「……あー、笑った笑った。こんなに笑ったの久しぶりだわ」
「落ち着かれましたか?」
「ええ、ごめんなさいね。ええと、なんだっけ、さっき置いといた話だっけ?」

 ジトっとした目でタイタニア様を見つめます。無言で。

「……ごめんなさい、あんまり楽しいから調子に乗っちゃったわ」
「いえ、分かります。なかなか外出もできませんものね」

 訪れる人も少ないでしょうからね。はしゃぐ気持ちも分からなくはないです。

「ごめんね。で、さっき置いといた話なんだけど――」
「……タイタニア様?」

 眉間に皺、顳顬こめかみで血管をピクピクさせてタイタニア様を見つめ、いや、睨みつけます。

「ち、違うのよ! これは本題! ワタシの証の話に繋がるの!」

 あ、それは失礼しました。皺と血管ピクピクを消して微笑みかけます。
 ホッと安堵の表情のタイタニア様が話を進めました。

「ワタシの証を渡す、それはつまり、ワタシと愛し合う事と同義よ」
「え、それってもしや……、え? まじすか? そういう意味すか?」

 タロウがどういう意味で言っているか不明ですが……。

「そう時間がある訳じゃないし単刀直入に言うわ。タロウ、ワタシを抱きなさい」

「「マジ(っす)かー!!」

 タロウとロップス殿がまたシンクロしましたね。
 いや、僕も驚きましたが。

「ヴァン、これからワタシはタロウと引きこもるわ。そうね、三日ほど頂戴」
「分かりました」

「セイ、レイン」
「「はい!」」
「貴方達はロボに精霊力の扱いの基本を教えてあげて」
「「分かりました!」」

「じゃあタロウ、ワタシの部屋へ行くわよ」
「え、あ、はぃ、っす、え? もう?」

 タイタニア様がタロウの胸へふわりと飛び込み、タロウが受け止めたと共に光に包まれました。

「ワタシじゃ不満かしら?」

 光の中から現れたタイタニア様の姿は、我々と同じ人族の大きさ、神々しいほどの美しさです。

「……滅相もない! 望むところっす!」

 腹を括ったタロウ、タイタニア様を横抱きに抱え階段を登って行きました。男らしいですね。

『お姫様抱っこでござるか……、初めてタロウ殿がカッコ良く見えたでござるよ……』
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