異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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92「美の極致」

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 以前に訪れた時よりも、切り株の側面から伸びる新芽が増えていますね。

 父の城と比較しておよそ三階ほどの高さで真っ直ぐに切られた幹。
 こんな状態でも生命活動を維持できるのも、内部にタイタニア様はじめ多くの精霊が住むからなんでしょうね。

「驚いた? 高さは人族の五人分!」
「一回りするのに人族で百歩だわ!」

「「こんな大きな切り株見たことないでしょ!」」

 二人が自信たっぷりに言うのも頷ける大きさです。

「俺がいた世界でもデカい木あったっすけど、さすがにこんなん見たことないっすねー」
『窓とか扉がついてるでござるが、この切り株は平気なんでござるか?』

 セイとレインの顔が輝きました。
 どうやら振って欲しい話題だったようですね。

「良いとこ気づいたよレイロウちゃん!」
「目の付け所がさすがレイロウちゃん!」

『それがしにはロボという名がござる』

「ごめんよロボちゃん!」
「ごめんねロボちゃん!」

 セイとレインがノリノリです。話が終わるまでは腰を折らない方が良さそうですね。

「「七十年前に精霊女王タイタニア様がこの地に降り立った時」」

「この切り株はすでに死にかけだったの」
「この木の『精』が尽きかけだったのさ」

「しかしここにタイタニア様が辿り着いた」
「だから、切り株は最後の『精』を使って」

「自分を空洞にして部屋として」
「窓となる穴を自分で開け」
「扉となる穴を自分で開けたのさ」

 手と手を取り合った二人がクルクルと踊りながら、歌うように交互に説明していきます。

「最後の『精』を使った切り株は死ぬ」
「死ぬはずだったの」
「でも死ななかった」

 レインの手を掴んだセイが飛び上がり、体を回してレインを頭上へ放り投げ、放り投げられたレインは体を独楽こまのように回転、先に地に降りたセイがそれを受け止めて静止。

「「タイタニア様の精霊力を浴びたおかげさ!」」


「「「『『オォ~~!』』」」」

 拍手喝采です。
 タロウが「ぶらぼー!」と叫びました。
 なんとなく伝わりますが、なんでしょうねソレ。

 というか、なんなんでしょうね、このくだり


『タイタニア様の精霊力には癒しの力があるという事でござるか?』

「うーん、癒しっていうのとは違うかな」
「言葉にするとしたら……強化?」
「それもちょっと違うんじゃない?」
「違うわよね」

 うーん、と首を捻るセイとレイン。

「タイタニア様に聞けば良いよ」
「それが一番早いわね」

 早々と諦めたセイとレイン。
 まぁそうですよね、本人に聞くのが一番早いですよね。

「タイタニア様を紹介するね」
「こちらへどうぞ」

 扉を開いたセイとレインに導かれ、切り株の正面扉の中へいざなわれました。
 一階は広いホールの様で中央に大きなテーブルといくつかの椅子、三十年前と同じですね。

「タイタニア様は三階のご自分のお部屋」
「お一人でおられますのでお呼びしますね」

「一人で何やってんすか?」

「タイタニア様はムッツリスケベだか――」
「セイのバカ! 言葉を選びなさいよ!」
「あ、いや、ごめん!」
「タイタニア様は淫乱だから――」
「レインのバカ! もっと酷くなってるよ!」

「ムッツリスケベに淫乱って一体ナニを!? 美の極致がそれで良いんすか!?」

 ちょっとあんまりですね。
 早目に止めておきましょうか。

「セイ、レイン、悪戯いたずらもそれくらいにしておかないと、タイタニア様に言い付けますよ」

 ペロリと二人揃って舌を出したセイとレイン。

「え? じゃあタイタニア様はムッツリスケベでも淫乱でもないんすね?」

 ムッツリスケベは内面の事なんで分かりませんが、淫乱ということはないと思いますよ。たぶん。

『ヴァン殿、ムッツリスケベとかインランって何でござるか? それがし知らんでござる』

 参りましたね。

「こ、今度教えてあげますよ。今はタイタニア様へのご挨拶を先にしましょう」

 タロウ、そのニヤニヤ笑いをただちに辞めなさい。殴りますよ。


「セイ! レイン! 上がって来なさい!」

 上階から響いた声に、セイとレインがビクッと背を伸ばしました。
 艶のあるこの声、タイタニア様ですね。

「「……行ってきます。ここでお待ち下さい……」」

 肩を落として背を丸めた小さな精霊が二人、さながら死刑執行の様に階段を登っていきました。

「怒られてんすかね?」
「だろうな。身内といえども淫乱呼ばわりされればな、しょうがないだろう」
『ロップス殿はインランって何か知ってるでござるな』
「十二歳の私に聞くなよ。最年長のヴァン殿に今度教えてもらうのが良いぞ」

 参りましたね。性教育は受け持っていないんですよ。

「二人が戻ってきたっすよ」

 頭のてっぺん辺りを両手で抑えた涙目の二人がフラフラと飛んで戻りました。

「「タイタニア様がお見えになります。皆さま、粗相のないようお願い致します」」

 階段を使わずに、ご自分の美しい羽を優雅に羽ばたかせたタイタニア様が降りてこられました。


 翡翠色の瞳も、目も鼻も口も、瞳と同色の腰まで伸びた翡翠色の髪も、スラリと伸びた手足も、全てがこれ以上ないほど均整のとれたお姿でありながら、無機質な印象を与えない柔らかな雰囲気、やはりタイタニア様がこの世界の美の極致、相変わらずお美しいです。


「待ってたわヴァン! 相変わらず美形ね!」
「わ、ちょ、ちょっと待って下さいよ!」

 僕の胸に飛び込むタイタニア様。
 同時にロボが眉間に皺を寄せました。視線が痛いですね。

 首にタイタニア様をぶら下げたままでみんなの方に向き直りました。

「こちらがタイタニア様です」
「どうぞよろしくね」

 タロウとロップス殿が見惚れていますね。分かります、その気持ち。

「た、確かに美しい……。咲き誇る様な華やかさに憂いを帯びたたおやかさ、これは流石の母でも……」
「べっぴん過ぎー……いや、でも、アレ?」

 僕の首からぶら下がるタイタニア様をじっと凝視するタロウとロップス殿。

「「小さ過ぎーー!!」」

 小さいですよね。
 セイやレインの半分くらい、僕の掌を目一杯広げた程の背の高さですからね。
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