異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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107「vsウギー、vsアンテオ」

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 ロボの霊力砲に吹き飛ばされたウギーさんが、両の足で踏み止まって態勢を立て直しました。

「ねぇヴァンさん、ウギーの奴なんか変じゃないっすか」
「タロウもそう思いますか」
『みんな気付くでござるよ。あんなバカみたいでなかったでござるし、何より――』
『モット、強イ』

 そうですよね。
 あのウギーさんです。

 ガゼル領でのあれこれ、明き神の力を借り暴走したタロウを止める為に協力してくれたウギーさんです。

「あの時のアンテオ様や他の魔獣と同じ、自我に制限を設けられているか、操られているかのどちらかでしょう」
「そんな感じっすよね」
『許せんでござるな』
『ウギィィィエエェェェ』


 みんな怒っていますね。
 よく分かりませんがプックルも怒っている様です。

「新たな有翼人でしょうか」
「アギーイギーウギーってくらいっすから、多分アギーかイギーじゃないっすか?」

 どういう意味でしょう?

「俺のいた世界の文字って順番があるんすよ。アから始まってア・イ・ウ・エ・オ・カ・キ……って」
「ではアギーさんが一番強い?」
「たまたまかも知んないっすけど」

 確かにアギーさんには親玉おやだまっぽさがあります。なんとなく信憑性ありますね。

「今まで戦った有翼人の中で、一番最後の文字はどなたですか?」
「ワギーっすね」

 グッと信憑性が増しました。
 あのマヘンプクを操ったワギーさんが一番下、あり得そうです。


「ギャォォォォァアアア!」

 ウギーさんが唐突に雄叫びを上げ、勢いよく魔力を噴出させ、その魔力を体に覆わせていきます。

 魔装ですか。

 ニギーさんのそれよりも洗練された魔装、漆黒の獣の姿は美しくさえあります。
 あれを纏われるとダメージを与えるのも至難の業、厄介ですね。

 物は試し、やってみましょうか。

「タロウ、少しの間ウギーさんをお願いしても良いでしょうか。ロボはタロウの援護をお願いします」
「なんか考えがあるんすね? 良いっすよ!」
『それがしも良いでござる!』

「決して無理はしないで下さいね」

 返事の代わりか、タロウが赤い魔力を迸らせ、そこから紫に、そして赤味が薄れほとんど真っ青の魔力、自分の魔力ですね、を全身に漲らせました。
「身体強化マックスっす!」


「プックルはロップス殿の援護をお願いします」
『任セロ』

 少し距離を取り、大剣を地に突き立て左手で柄を握り込みます。

 先日、タイタニア様から貰ったメモと、父から新たに教わった魔術陣を組み合わせて構築します。
 タイタニア様の所を出てから毎晩、精霊術陣をこっそり勉強しておいた甲斐がありますね。

 左手の甲に魔力を籠めた右手の指で魔術陣を描き込むと、足元の地面に魔術陣が描かれていきます。

 頭の中では何度も予習し理解していますから、時間はかかりますが失敗はしないでしょう。



 ロップス殿とアンテオ様も動き始めましたね。

 刀を抜いたロップス殿が何事か喚き散らしています。
 身体強化で聴覚を強くしてみましょう。

「こんの……分からんちんがーっ!」

 刀を構え飛び込むロップス殿が二合三合と斬りつけます。
 飛び込む際には足に魔力を、斬りつける際には刀に魔力を、相変わらず目まぐるしい魔力操作ですが、以前よりも更に滑らかになっている様です。

 頭上から振り下ろされた刀を、首を捻って躱す素振りを見せたアンテオ様が、少し慌てた様子で左腕を上げて防ぎました。
 アンテオ様の左腕から鮮血が飛び散ります。

「……ほう。以前の貧弱さは払拭できたか」
「余裕を見せておれるのもそこまでよ」

 着地と共に胴を薙ぐロップス殿の刀を飛び退すさって避けるアンテオ様。

「真・烈火十山斬れっかじゅうさんざん!」

 再び跳び上がり頭部目掛けてロップス殿の奥義。

「……愚か者が」

 右脚を引いて半身になるだけで躱したアンテオ様、そこから流れる様に繰り出した右肘がロップス殿の顔面に叩き込まれました。

「当たる技を出せ。当たらぬ技なら出すな」

 かなり厳しい一撃でしたが大丈夫でしょうか。

 プックルの近くまで吹き飛ばされたロップス殿が首を振りながら立ち上がりました。
 大丈夫そうですね。

「ぐぅぅ、効いたわ。ロボの守護がなかったら今ので致命だったかも知れん」

 あのタイミングで顔に魔力を集められるロップス殿のセンスも非凡ですけどね。

「ロボ! ロップス殿に守護を! 砕かれかけです!」
『承知でござる!』「がうがうがう!」

 ロボの薄桃色の守護の力がロップス殿の体を覆いました。

『慰撫もいっとくでござるか!?』
「まだ良い、まだまだこれからよ!」




「ギャォォォォァアア!」
「何回やっても無駄っす!」

 魔装を纏ったウギーさんの拳を、膨大な魔力を纏ったタロウの拳が弾き返し吹き飛ばしました。

「おっしゃぁ! どうじゃぁい!」

 再度タロウへと突撃するウギーさんの両拳をタロウが受け止めて押し合います。

「ギャォァアア!」
「おりゃぁぁぁ!」

 押し込んだのはタロウ。
 膝から崩れたウギーさんの足元の地面が抉れていきます。

 ……随分前に猪の魔獣マチョと戦った時を思い出しますね。案外と武闘派な戦い方なんですよね、タロウって。
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