異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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106「ファネル領へ」

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「では父さん、行ってきます」

「おお、行って来い。オマエらなら大丈夫、ドーンと行ってバーンとやれ」

 なんなんですかそれ。
 それじゃ全然意味がわかりませんよ。

「恐らく九月の末まではファネルの寿命も保つと思うが、もう少し死期が早まる可能性もある。さらに明き神の魔力が抜けるのもまずい。少しでも早く辿り着いてくれ」

 父の言葉にみんなで頷き、城を離れ北へ向かい歩き出しました。



「ファネルさんちまでどんくらいっすか?」
「僕らが普通に歩いて行けば二十日ほどですね」

『じゃあこの前みたいに走って行って十日ぐらいで向かうござるか?』
「そうしたいのはやまやまなんですが……」

 今月は残り四日、九月は奇数月ですから二十七日、九月末まで三十一日ありますが、どの程度ファネル様の寿命がつのか不安です。

「アギー達の襲撃が気になっているのだな?」

「ええ。出来るだけ急ぎたい気持ちと、出来るだけ警戒しながら進みたい気持ち、半々です」

 あんまり急ぎ過ぎて襲撃に対応できないのも、警戒し過ぎて間に合わないのも、どっちでもいけません。



 で、結局タロウの案『小走り』が採用されました。現在僕らはゆっくり目に走っています。

「すまんなプックル。このペースなら十分走れるんだが……」
「余裕。気ニスルナ。魔力ト体力、温存シロ」

 ロップス殿はプックルの上、そして五人全員にロボの『守護』をかけて貰っています。
 主にアギーさん達がよく使う魔術の矢対策です。あの矢は油断していると全く反応できませんからね。


 特にこれと言った問題もなく進み、明日のお昼頃にはミウ村、という地点で今夜は野営です。

「警戒し過ぎている、という事はないか?」
「……今日の様子だとそうですね。何も起こりませんでしたから」

 もしかして、このまま何事もなくフォネル様の所まで行けたりして…………。





 そんな事を思っていた頃が僕にもありました。


 現在、北にミウ村が遠望できる小さな丘の上ですが、やはりその考えは甘かったようです。

 ミウ村をこちら側に出てすぐの所、そこに佇む一人の男性と一人の少年。
 どうやら僕らに気がついているようで、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきます。

「あれって……、やっぱアンテオさんっすよね?」
『もう一人はイギー……、でなくてウギーでござるな』

 アンテオ様とウギー、不思議なペアですね。
 イギーさんはどうしたんでしょう。

「とにかく好機だ。ここで叔父上を叩く。そして目を覚まさせよう」
「ロップス殿、落ち着いて下さいね。戦わないに越した事ないんですから」

 二人がこちらに向かってくるのを少し待ちます。

「ロップス殿、戦いになる様でしたらアンテオ様をお願いします。僕はウギーさんを。三人はそれぞれ機を伺いつつ援護を」

 どうやら話し合いという雰囲気ではないようですね。
 ウギーさんが魔力を全身に纏い、既に臨戦態勢と言った感じです。

 丘の上で二人と対峙します。
 僕の前にウギーさん、左のロップス殿の前にアンテオ様、タロウたちは僕ら後ろで少し離れさせました。

 相変わらずロップス殿がえぐったアンテオ様の右目は閉じられたままですね。
 竜族の魔力であれば回復していてもおかしくありませんが。

「お久しぶりです、ウギーさ――」
「ギャォォォォァァアア!」

 ウギーさんが拳を振り上げ、僕に突っ込んで来ました。

「土の大壁!」

 眼前で立ち上がった壁を、ウギーさんが振り上げていた拳で殴り砕きますが、そこに僕はいません。

 上です。

 防ぐのが目的ではなく、視界を一瞬奪うのが目的でした。
 ウギーさんの頭上へと目掛け、落下しながら大剣を振り下ろしました。

 交差させた両腕で大剣を受け止めたウギーさん、その両腕から刃と骨が上げる不快な音が響きました。

「うへぇ嫌な音……、痛そうっす!」

 ウギーさんの胸を蹴って後方へ飛ばし、元いた場所へ降り立ちました。

 タロウの言う通り痛いと思うんですけどね、ウギーさんはちっとも痛がっていません。
 ギャァァォォと雄叫びを上げ、元気良く僕に再度突進してきます。

「炎の弾幕!」

 僕の体の周囲に十数個の炎弾を作り、一気にウギーさんへと放ちます。
 ウギーさんは両の拳で一つ二つ、五つ六つと弾き飛ばしましたが、十を超えた辺りで被弾、五、六発は直撃し爆煙に包まれました。

 ウギーさんが弾いた炎弾がいくつか、何事か会話していたアンテオ様とロップス殿の方に飛んでいきましたが、アンテオ様は指で上空へ弾き、ロップス殿は剣を抜き打ち真っ二つ。

 二人とも落ち着いていますね。


 晴れた爆煙の中から立ち尽くすウギーさんが現れます。
 見るからに無傷ですね。
 まぁウギーさんならそうでしょうね。

 ぼんやりと僕の方を見つめていたかと思うと、しきりに視線を彷徨わせ周囲を伺い始めました。

 ロップス殿に目を留めアンテオ様を一瞥いちべつ、次にタロウに目を留め首を振り、そしてその次にロボを見つめ、不意に地を蹴ってロボへと突進を始めました。

「ロボ!」
「うわぉぉぉぉん!」

 ちゃんと集中していましたね。
 近付かれる前に霊力砲で押し返しました。


 それにしても、どうも様子がおかしいですね。
 ウギーさんらしくありません。

 雰囲気もそうですが、強さもそうです。
 全然歯応えがありません。
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