異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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131「プックル、マサンヨウ」

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 ゴゴゴゴ、と相変わらず大地の鳴動は鳴り止みません。

 想定外の事態です。
 プックルに対しての魔術の行使、そしてプックルから立ち昇るアギーさん達と同じ漆黒の魔力。

 一体これはどうすれば良いんでしょうか。


「タロウ! 僕に魔力を! 早く!」
「え? あ、あぁ! そうっすね!」

 とにかく回復が優先です。あらゆる局面への対応が必要ですから。

「させないんだぞ!」
「がはっ!」

 プックルから離れ、こちらに駆け寄ってきたイギーさんに蹴り飛ばされました。

「あぁヴァンさん! こんなろぉ!」

 イギーさんにタロウが殴り掛かりましたが、あつさりと躱され、背後から頭を掴まれてしまいました。

「お前から近付いてくれるとはな。助かるんだぞ」
「ぐぅっ、……ぎゃぁぁぁ!」

 タロウの髪を掴んだイギーさんの右手が、バチバチと音を立てて放電し、タロウの身を焦がしました。

 不味いです。
 アギーさんを捕らえた所までは理想的だったんですけど、一転して最悪の展開です。
 せめて、せめて僕の魔力をタロウから回収できていればすぐにでも動けたんですが……。

 これ以上魔力を使えば、ウギーさんに対して継続して展開している左手の甲の結界が解けかねません。回復の煙さえ出ないように必死に抑えつけている程です。

 無理して動いてもダメ、じっとしていてもダメ、このままでは……。


 グッタリしたタロウを引き摺り、イギーさんがプックルの下へと歩み寄ります。


『メェェェェェエエエ!』

 依然として漆黒の魔力を迸らせて雄叫びを上げるプックル。


「タロウを離せ! 真・烈雷剛迅斬れつらいごうじんざん!」
「アンテオを倒した技か? それは御免なんだぞ」

 イギーさんが瞬く間に新たな魔力球を作り出し、それをポトリと足元に落とした途端、イギーさんを中心とした半球状の結界が一気に広がりました。

 刀を振りかぶっていたロップス殿が、ぶぎゅぅ、と顔をひしゃげさせて弾かれます。
 結界の中にはイギーさん、タロウ、そしてプックル。

「くそぉ! またこの展開か!」

 ズザザと地を滑りながら素早く立ち上がったロップス殿が叫びます。確かにパンチョ兄ちゃんが神の影に取り憑かれた時の再現の様ですね。


「精霊の慰撫! でござる!」

 ロボの手を借りて立ち上がります。魔力枯渇はともかく、傷だけは癒えました。

「おいヴァン殿! 前の時みたいに殴れば良いのか!?」
「……いえ。以前のイロファスの街での結界は、あれはパンチョ兄ちゃんが明昏天地あかぐらきてんちの宝剣で作ったもの、すなわち魔法によるもの。これはイギーさんが作った、魔術による結界です」

「ならどうした!?」
「僕のオリジナル、精魔術結界をアギーさんも破れずにいます」

「だからなんだ!?」
「……魔術陣の仕組みがわからない限り、打つ手なしです」

「……な!?」

 驚愕の顔のロップス殿。
 僕も気持ちは同じです。

 無駄かも知れませんが、外から結界を探るしかありません。
 結界にそっと手を触れ、僅かに魔力を流します。

『おいヴァン! それ以上魔力を消費したら、左手の結界が解けてしまうよ!』

 僕の左手の中からウギーさんがそう言いますが、やるしかありません。

「探らない事には始まりません。やれるだけやってみます」

 そう返事をして改めて魔力を流した途端、ツゥ、と鼻血が出ました。


めろめろ! 無駄なんだぞ! もうそんな事したって間に合わないんだぞ!」

『メェェェェェエェエエエエ!』

 より一層大きな魔力を噴出させた後、途端に静まったプックルの魔力。

「……初めましてなんだぞ。ギーの世代の・・・・・・同胞よ」


 一回り小さくなった様にさえ見えるプックル。
 そしてその眼前に浮かぶ、新たに現れた神の影……

『プ……、プックル、マサンヨウ……、同胞、違ウ……』


 僕も、タロウも、みんなも、絶望的な顔をしていました。

 プックルは同胞じゃない、そう言ったのは、新たに現れた神の影だったからです。

「……プックル? 嘘っすよね? ま……さか、プックルが神の影なんてこと……ね?」
『タロ、ウ、プックル、神ノ影……、違、ウ……』

 イギーさんに髪を掴まれたままのタロウの問いに答えたのは、やはり神の影……。

「そんな訳あるまい! そこのイギーによるまやかし・・・・に決まっておるわ! プックルが連中の仲間な訳がない!」

 パンチョ兄ちゃんが声を荒げそう言いますが、どちらにしても状況は最悪です。
 タロウのすぐそばに神の影がいるんですから。


「ふん、信じようが信じまいが、好きにすれば良いんだぞ。ボクはやる事をやるだけなんだぞ」

『……プックル……、ハ、プックル……』
「今思い出させてやるんだぞ」

 イギーさんがプックルへと左掌を開いて向け、左目を閉じて集中し始めました。

 僅かな間そうしていると、プックルと神の影を繋ぐ黒い紐のような物が浮かび上がりました。

 目を開き、ニヤリと笑みを浮かべたイギーさんが左掌をグッと握ると共に、バツン! と音を立てて切れた紐。

 同時にプックルが、グルンと白眼をむいて倒れました。

っっさまぁぁ! プックルを殺しおったのかぁ!」

 パンチョ兄ちゃんが結界を叩きつけて叫びます。

「死んでないんだぞ。完全に同化を解いただけだ。元の、タダのマサンヨウに戻っただけだぞ」

 そういえば、タイタニア様の所でセイとレインがプックルについて言ってましたね。

 魔獣にしては破格の魔力量だと……。


『……プックル、思イ、出シタ……』


『……………………思イ、出シタク……無カッタ……』
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