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130「ヴァンの策、イギーの狙い」
しおりを挟むアギーさんに対して大剣と魔法に加え、さらに霧の僕からの魔法で攻撃し続けていますが、ロクにダメージを与えられた手応えはないです。
アギーさんに言われた通り決め手に欠けますが、これは想定内なので問題ありません。
イギーさんが痺れを切らして動いた件の方が問題でしたが、何故か人化したロボの活躍で事なきを得ています。
「邪魔なんだぞ小娘!」
「小娘ではござらん! それがしは人妻でござるぞ! 精霊の細工ぅ!」
プックルに乗ったロボが唱えると共に、プックルのすぐ足元から立ち昇った向こうが透けて見えるほどに薄い、薄桃色の大きな壁。
その壁がイギーさん目掛けて倒れかかります。
「クソっ!」
悪し様に罵って後ろへ跳んで躱したイギーさん、その側面に素早く移動するプックル。
「さらに精霊の細工でござる!」
ロボの右手の周囲に現れた無数の針が、腕を振るのに合わせてイギーさん目掛けて飛んでいきます。
「痛ぁ!」
飛ばした針の大半は躱されましたが、左足にいくつか刺さったようです。嫌がったイギーさんが距離を取りました。
「クソっ! 右手が塞がってるから対応し辛いんだぞ。ここはアギーを待つ方が得策か……」
ウギーさんと違って体術よりも魔術ベースのイギーさんですが、あの魔術陣を抱えたままでは新たな魔術は繰り出せないようですね。
『ロボ、良イ感ジ、強イ』
「いやいや、プックルのお陰でござる。今のそれがしはプックルほど速く動けんでござるからな」
生憎とタロウが走り抜けられる程の隙はないようですね。イギーさんは常に屋敷に背を向けタロウを牽制していますから。
流石ですね。
僕の方は……、
……よし、これで準備万端です。
『準備が整いました。アギーさんを捕らえると同時にイギーさんを』
『心得たでござる!』
『任セロ』
「どうしたヴァン? 攻撃のペースが落ちてるぞ」
そりゃ落ちもしますよ。
もう大きめの魔術一回分の魔力を残してカツカツですからね。
「そうでしょう? 実はもういっぱいいっぱいなんですよ」
霧となっていた僕の右腕を呼び戻します。
右腕の指先があるべき空間に現れた二本の指、その二本で作った丸を潜り抜けた霧が、肩から順に元通りの右腕に戻っていきます。
「その鬱陶しい霧は限界か。ならもうこの戦いも終わりにしよう。覚悟しろヴァン」
アギーさんを見詰め、フン、と鼻で笑って突撃します。
「さっきまでもまともに当たってないのに、そんな単純な攻撃じゃ当たるものも当たらない」
左手の大剣を振り下ろしますが、先程までと同様に右腕で弾かれます。
さらに間髪入れず眉間から光の矢を放ちましたが、これは左手で弾かれました。
当然、元に戻った僕の右腕を警戒するアギーさんですが、アギーさんの後方から飛来する僕が放った炎弾がドォンと背中に直撃しました。
「な、何――!」
アギーさんがチラリと背後に目を向けたその先には、霧から戻さなかった、位置情報用に残した僕の右手の小指。
四本指の拳を握り、甲に刻んだ魔術陣に魔力を籠めます。
キィィィンと鳴り響く右の拳でアギーさんの頬を殴りつけ、精魔術結界を発動させました。
「こ、これは――そうか、ウギーを捕らえたという結界……、霧の体に魔術陣を刻ませていたのか!」
ウギーさんの時とは違って、その場に留める結界に改変しています。ですから右手の甲の魔術陣は既に消え、アギーさんの足下で白く輝いています。
連れて行くタイプの結界は魔力消費が馬鹿になりませんし、連れて行く必要もありませんから。
これでしばらくはイギーさんに集中できます。
「ロボ! プックル! 行きますよ!」
『承知でござる!』
『デカシタ、ヴァン』
ロボとプックルに僕が加われば、今のイギーさんなら仕留められます!
「クソォっ! アギーが捕らえられるとは思わなかったんだぞ!」
右手に魔術陣を抱えたままのイギーさんが、左手に魔力を籠めて備えました。
「今ならば強力な魔術は使えないでしょう。今が好機――」
「あぁ! ヴァン殿!」
僕としたことが、好機なのに足をもつれさせて転びました。
小競り合いとは言え相手はあのアギーさんです。魔力消費に加え、何度かの反撃によるダメージが相当溜まっていたようです。ちょっとすぐには立ち上がれそうにありませんね。
「すぐ魔力返すっす!」
「それがしも精霊の慰撫を!」
タロウがこちらへ駆け寄り、ロボが僕に意識を割いたその一瞬。
みんながイギーさんから意識を切ったその一瞬。
その一瞬を突かれました。
「バカが! アギーを捕らえたところで結局はボクの勝ちなんだぞ!」
素早く走り寄ったイギーさんが、魔力を籠めた左手でプックルの口を強引に掴んで開かせ、右手に抱えた魔術陣を腕ごと飲み込ませました。
「……な、なんでプックルに? 俺じゃないんすか!?」
プックルの口から腕を引き抜いたイギーさんが哄笑と共に言います。
「あーはははは! ハナからボクの狙いはこの山羊なんだぞ! あーはははははバーカ!」
『メ……、メェェェェェエェエエエエ!』
「プックル! 落ち着くでござる! う、うわわわ!」
プックルの体から猛烈に噴き出す真紅の魔力が、背に乗るロボを弾き飛ばしました。
ロボが空中で体勢を立て直し着地しましたが、やはり人族の体にまだ不慣れなようで、地に足を取られて後ろへ倒れ込みました。
「おいおい、少し目を離した隙にどうなっておるのだ?」
「ロップス殿! 尻餅つかんで済んだでござる! 向こうはやっつけたんでござるな!」
「あぁ。最初に寝た奴は放ってきたがな」
ロボの背を支えたのはロップス殿。
そしてそのすぐ後ろを駆けていたパンチョ兄ちゃんが青い顔で叫びます。
「プックル! どうしたと言うのだ! 何故、何故黒い魔力を放っておるのだ!」
真紅の、真っ赤だったプックルの魔力は、今ではすっかり漆黒の魔力へと豹変していました。
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すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
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